みなさんのスマートフォンにも、飲食店やスーパーマーケット、美容院やチケットサービスのものなど、ふだんはたいして使用しないアプリがいくつも入っているのではないだろうか。
よく使うアプリはホーム画面の1ページ目に置いておきたいため、1ページ目は陣取り合戦が勃発する。ただ、インストール済のアプリが増えすぎたあまり、横にスライドさせた2ページ目、3ページ目あたりに置いてあるアプリは、すべてを把握していない人のほうが多そうだ。
仁義なきスマホ“ホーム画面の陣取り合戦” 楽天アプリは40種以上…企業とユーザーが落ちた「アプリがあれば安心」の落とし穴
集英社オンライン / 2023年12月12日 8時1分
なんでもかんでもアプリにしすぎ…? ブラウザでじゅうぶん済んで頻繁にログインしなそうなサービスまでアプリ化され、“ホーム画面の陣取り合戦”だと話題になっている。なぜ、猫も杓子もアプリ化されるのかを、ハイテク産業でコンサルティングをしていたクロネコキューブ代表取締役・岡田充弘氏に聞いた。
アプリはなぜこんなにも増殖した?
「アプリ市場白書 2022」(フラー調べ)によると、1ユーザーあたりの月間平均利用アプリ数は41個にも上るのだというが、クロネコキューブの岡田充弘氏は、さまざまなサービスがアプリ化され増え続けている理由について、企業側もユーザー側も“アプリがあれば大丈夫”という安心感が大きいのだと語る。
「スマホはいまや顧客の一番近くにあり、顧客の財布に粘着気味に寄り添う存在です。そのため、ユーザーが即座に気持ちよく利用できるよう、アプリ化の動きやデバイスの最適化が進んでいると感じています。
実際、アプリのほうがブラウザよりも処理速度が早く、さっと手に取って感覚的に使用しやすいというユーザー側のメリットはあるでしょう。
また、アプリ化が進む根底には、企業側がアプリ化すればなんとなく事業がうまくいくのではないかという期待を抱き、ユーザー側もアプリがあれば大丈夫という気持ちがあり、双方がアプリに対する漠然とした安心感を抱いているというのも大きいのではないでしょうか」(岡田氏、以下同)
「ほかのアプリのパスワードを記録するためのアプリ」いれてませんか?
岡田氏によると「ほかにも、アプリに誘導するシステムの一つとして、インストール時にパスワードをいちいち入力せずともアプリ自体が記憶してくれたり、Face IDで認証が簡単にできてしまったりという利便性も、アプリ化が進む要因」とのことだ。
しかし、最近ではセキュリティの問題でワンタイムパスワードを要するなど、ユーザー側のアクションが必要な2段階認証式のアプリも増えている。
即座に利用できる快適さを求めてアプリをインストールしたはずなのに、認証は2段階必要になっているというねじれた構造があるといえよう。
「今や“ほかのアプリのパスワードを記録するためのアプリ”や、“パスワードを自動生成してくれるアプリ”なんてものも出てきている時代です。
そういった意味があるのかないのかわからないようなアプリまでインストールしてしまったり、あまり使わなそうなアプリでも、いらなくなったらあとで削除すればいいかととりあえず一旦インストールしてしまったりすることもあるでしょう。
その積み重ねで、後から見返すと、「なぜこんなものまでインストールしたんだ?」と思うくらい、ろくに使わないアプリでホーム画面の2ページ目、3ページ目まであふれ返ってしまうという状態になってしまうのではないでしょうか」
小さなお得感を好む日本人の国民性
楽天経済圏を擁する楽天グループには多種多様なサービスがあるが、なんと楽天グループだけで40個以上のアプリがあるのだという。
なかでも楽天の銀行関連のアプリだけでも、用途が細分化されているため7個ほどあるそうだが、金融系のアプリはセキュリティ面での注意が必要なんだとか。
「金融系アプリはアップデートの更新頻度が高く、パスコードやパスワードが必要になる局面が多くあります。ですからパスワードをほかのアプリと使いまわしていたり、前述したような他の管理アプリにパスワードを保存していたりしていると、セキュリティ上の問題が起きたときやスマホを紛失したときのリスクが大きくなってしまうもの。
ですから金融系やクレジットカードに紐づいたアプリは、すぐに追随できる程度の数に留めておくほうがいいでしょう」
ところで、一昔前までいろいろなお店ごとにポイントカードがあったが、これは世界的には珍しく、日本特有の現象だったそうだ。
そしてキャッシュレス決済が進んだ現在、ポイントカードを持ち歩く人が減ったこともあり、さまざまなお店や企業が従来のポイントカード代わりにポイントアプリを作っているという状況もあるらしい。
「確かにポイントカードに代わってポイントアプリが広く普及しているのは、小さなお得感を好む日本人の国民性の表れとも言えるでしょう。ポイントカードを持っていても損はないという感覚と同じで、とりあえずポイントアプリを入れておこうという思考の人は多そうです。
インストールすれば最初に100~1000ポイントをプレゼントするというポイントアプリも多いので、日本人の国民性的に広まりやすいのでしょう。
つまり、ユーザー側が欲しているという需要ありきではなく、背景には企業側が信頼度や認知度を高め、顧客を囲い込んでプッシュ広告によって売り上げ増加させたいといった思惑もあり、アプリ市場はどんどん拡大していっているのです」
取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio) 写真/shutterstock
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