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〈囲碁・女流棋聖戦挑戦者決定戦〉上野愛咲美・梨紗姉妹が決勝で激突「妹は勢いがあるし、おもしろい手合いになる」「姉はNHK方式では最強」。お互いの手の内は「だいたいわかってる」

集英社オンライン / 2023年12月13日 11時1分

姉妹そろってアジア大会囲碁女子団体の代表に選ばれるなど、現在、棋界で注目を集める上野愛咲美(あさみ)女流立葵杯・女流名人(22)と上野梨紗二段(17)。この姉妹が12月14日、仲邑菫(なかむら・すみれ)女流棋聖への挑戦権をかけて本戦トーナメント決勝でぶつかり合う。仲よし姉妹に対戦前の心境をうかがった。

「会社員に向いてないからプロを目指そうと」(梨紗)

――女流棋聖本戦トーナメントのお話を聞く前に、おふたりが碁を始めたときのことをうかがいます。愛咲美さんはお祖父さんの勧めで4歳でルールを覚え、5歳から囲碁教室に通い始めたそうですね。

上野愛咲美(以下、愛咲美) 最初はあまり自分の意志や感情もなくやっていましたね。



上野梨紗(以下、梨紗) 母が姉を囲碁教室に連れて行っていたので、どうせならと私もやるようになりました。

愛咲美 ただ、連れていかれるときは泣いていることもあったよね。

梨紗 囲碁が好きじゃなかったから……。好きになったのはプロになってからだったと思います。

上野愛咲美女流立葵杯・女流名人(写真左)と上野梨紗二段(写真右)

――好きじゃないのによく続けられましたね。

梨紗 楽しいこともあるといえばあるのですが、日本棋院の院生(プロを目指す子どもたちの研修会)のときは悔しさがいつもあって。ただ、強くなってからはけっこう楽しくなりました。

それでAIも出てきて、「あ、ここに打てばよかったのか」というのが明確になって、「奥深いな」と感じるようになりました。それに、学校の勉強は好きでしたが、あまり会社員は向いてなさそうだったから、それならプロを目指さそうと。

愛咲美 梨紗は会社員に向いてないとは思わないけれどね。

梨紗 いや、私も十分ポンコツだからね。なんかやらかしそう。

愛咲美 私よりかは全然大丈夫でしょう。

梨紗 まぁ、それはそうだけど(笑)。

ルーティンは
「ランニング」(梨紗)
「アロマをかいで『お~いお茶』を飲む」(愛咲美)

――今回の取材場所の天豊道場(東京都新宿)は修業時代から通っていたということで、思い出などはありますか?

愛咲美 道場は安心感がすごい。道場に通っていると、足音でどの先生が来たかわかるようになりますよ。

梨紗 師匠(藤澤一就八段。藤沢里菜女流本因坊の父で、上野姉妹はともに師事している)の足音はわかりやすい。

ふたりが幼少期から通う天豊道場

愛咲美 たまに知らない先生の足音がすると、「誰だ⁉」「××じゃない?」って言い合ったりまします。

それと、みんな言いますが、ご飯が“神”です。本当に栄養バッチリ。カニの味噌汁とかチャーハン、ハヤシライスとか。味噌汁は関(航太郞九段)くんとおかわりの争奪戦をしていました。

――毎日、何時間くらい勉強していましたか?

梨紗 小中学生のころは学校が終わって4時から8時までは道場で勉強してましたが、家では全然でしたね。

愛咲美 道場に「プロを目指すなら1日最低6時間勉強(通常10時間)」とあちこちに貼ってありますが、小学生のころは何もやってなくて、「6時間てすごいなぁ」って他人ごとだった。でも、今となったらさすがにそれぐらいはやらないと……って感じです。

道場内に貼られる「1日最低6時間勉強」の文字


――対局前のルーティンについて、愛咲美さんが縄跳びを777回跳ぶのは有名な話ですが、梨紗さんは何かルーティンはありますか?


梨紗
ランニングですね。近所を10分ぐらいグルグル走ってます。この前計ったら、1キロ4分39秒でした。

愛咲美 私は縄跳び以外だと、アロマをかいで「お~いお茶」を飲んで。ツボ押しアイテムを使ったりします。

――おふたりに棋風の違いはありますか?

梨紗 それぞれ“戦う棋風”だとは思いますけど、私は相手が戦ってきたら受けて立つ感じで、姉は自分から戦いにいきます。

愛咲美 ずっと戦うことを狙ってます。タイミングが来たら行くって感じですね。

「負けた布石をまたやったのにはびっくりした」(愛咲美)

――梨紗二段は今年11月、本因坊戦の挑戦者となり、タイトル奪取ならずもあと一歩でした。その感想をお聞かせください。

梨紗 開幕から3局は地方対局だったのですが(第1局は岩手県花巻市、第2局は鳥取県湯梨浜町、第3局は香川県坂出市)、泊まる部屋がめちゃくちゃ広くて豪華、ごはんもすごくおいしくて。ふだんと違う環境での対局でちょっと緊張はしましたが、プレッシャーもなく楽しく手合いができました。

内容は第1局と第3局に勝って、ちょっとびっくりしちゃって。反省点は、勝った黒(先)番はけっこううまくいきましたが、白番のときがもう少しかな。上出来だとは思うけど作戦面で甘かったところもあるから、白番でもうちょっとがんばりたいですね。

「(姉妹で)囲碁の話はたまにしますよ。『誰々、強くない?』とか『こんな手あったんだ』とか」(愛咲美)

――愛咲美さん、お姉さんから見て妹さんの戦いぶりをどう見ましたか?

愛咲美 よくがんばっていたと思います。私からはアドバイスをあまりしていません。ただ、女流本因坊戦は9時対局開始と朝が早い。(第4、5局は東京・市ヶ谷で開催で)私たちは同じ部屋だから私が遅く帰ってゴソゴソすると、その音で梨紗が起きちゃうかもしれない。だから対局前日は私も夜は早めに帰ることにしました(笑)。

梨紗 私が頼んだんですよ。「朝9時開始だから早く帰ってきて」って。

愛咲美 第5局で妹が白番をひいて、負けた布石をまたやったのにはさすがにびっくりしました。

梨紗 いいじゃん。私としては負けたからといって、その布石をボツにしちゃうのは納得いかない。反省点は布石よりも勉強時間のほうが問題だったんじゃないかと思うので、そこがお姉ちゃんの見解とはちょっと違うかな。

直接対決は
「負けてもいいかな」(愛咲美)
「無心で打ちます」(梨紗)

――そして12月14日、女流棋聖戦の挑戦者決定戦でおふたりが直接対戦。率直な心境を教えてください。

梨紗 特に何にも感じていません。ただ姉はNHK方式(1手30秒の早碁)に関しては最強だと思うので、楽しみではあります。

愛咲美 私は基本的に姉妹対決をしたくないんですよ。でも注目していただけるし、しょうがないかなって感じです。妹は(藤沢)里菜先生にも勝って、勢いがついていそうなので、おもしろい手合いになるのではないかなと。

――姉妹であまり碁を打たないそうですね。

愛咲美 打ちませんし、研究もほぼしません。

梨紗 私は打ってもいいのですが。

愛咲美 妹はいつもこのスタンス。私は勝っても何も得られないし、負けたら最悪の気分なんで、打つメリットがない(笑)。だから公式戦以外打ちたくないです。

対局当日は「朝ご飯一緒に食べることになるとは思うけど、対局は午後3時からなので、お昼はさすがに別々で食べると思う」(愛咲美)

――今回で公式戦2度目の姉妹対決ですね。前回(2022年の第34期女流名人戦挑戦リーグ)は愛咲美さんが勝利しましたが、対局後、家の中でのおふたりの雰囲気はどうでしたか?

愛咲美 いつもと変わらず「無」ですね。けっこう普通だったよね?

梨紗 うん。まあでも、しゃべりたくはなかったかな。ふだんでも、次に当たる相手とご飯をすることもよくありますし。相手を意識するより、自分がどうするかですから、相手はあまり関係ないです。

――愛咲美さんは妹に負けるわけにはいかない、とプレッシャーを感じたりは? 過去のインタビューでは「絶対に負けない」と発言されることもありましたが。


愛咲美 いや、でも、里菜先生に勝って決勝にきたし強くなったみたいなので、負けても「まあいいかな」って感じですね。

――お互い手の内はわかっている?

愛咲美 だいたいわかってると思います。

梨紗 でも意外と知らない部分があるかもしれないし、ちょっとわからないですね。

愛咲美 どうなんだろうね。盤を挟んで対峙したら、何も考えないかな。「自分と似たような顔の人がいるな~」とか、そんな感じです(笑)。

梨紗 無心ですね。女流棋聖戦を打つ対局場に芝野虎丸先生の「無心」と書かれたサイン色紙が飾ってあるんです。今回もその文字を見つめて瞑想して、無心で打ちます。

――12月14日、どんな碁が見られるかが楽しみです。

取材・文/内藤由起子
集英社オンライン編集部ニュース班

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