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「“チャラチャラしやがって”とヤジを飛ばされグサっとくることも」「成人式でお酒を飲んだら3日間具合が悪く(笑)」ガールズケイリン人気を牽引する20歳の河内桜雪【2023スポーツ(女性編) 1位】

集英社オンライン / 2023年12月23日 12時1分

2023年度(1月~12月)に反響の大きかったスポーツ記事ベスト5をお届けする。女性編第1位は、ガールズケイリンで活躍する河内桜雪選手の記事だった(初公開日:2023年6月14日)。身長155.5cm体重55kg背筋100kg太もも59cmレッグプレスは300kg超え。11歳からガールズケイリンひと筋! 底知れぬパワーとキュートなルックスで、俄然注目を集める河内桜雪選手に大接近。その魅力を徹底解剖した。

2023年度(1月~12月)に反響の大きかった記事をジャンル別でお届けする。今回は「スポーツ記事(女性編)ベスト5」で、1位に輝いた人気急上昇中のガールズケイリン界で活躍する河内桜雪選手の記事です。(初公開日:2023年6月14日。記事は公開日の状況。ご注意ください)

2022年に誕生から10周年を迎えたガールズケイリン。選手数が2000人を超える男子の競輪と比べると、登録選手数が200人程度でレース数も少なく、まだまだ若いスポーツであることは否めないが、2023年から初となるG1レースが創設されたりと、これまでにない盛り上がりを見せている。

特に若い世代からの人気を牽引するのが、強く美しい選手たち。TV番組『ジャンクスポーツ』(フジテレビ系)に度々出演するなど、ガールズケイリン人気の立役者でもある、河内桜雪選手に話を聞いた。

父親も競輪選手を目指していた

――河内選手が、ガールズケイリンの選手になると決めたのが小学生のときと聞いているのですが、間違いありませんか?

はい。小6のとき地元・前橋で開催されたガールズケイリンコレクションを観たんですが、熱気と大歓声の中コースを走るガールズの選手たちが、とにかくもうめちゃくちゃカッコよくて。

――ガールズケイリンは落車による怪我など、危険な一面を伴う競技ですがご両親は反対しなかった?

親戚に競輪選手がいましたし、父が一時期競輪選手を目指していたこともあって、反対はされませんでしたね。翌日ローラーという練習器具が用意されていたのにはちょっと驚きましたが(笑)。

――元々競輪とはご縁があったんですね。

もっと小さい頃から、競輪場には家族で行っていましたね。罵声が飛ぶと、「なんで!? みんな、こんなに頑張っているのに」とか、「そこまで言わなくてもいいじゃない」とか、プンプンしながらレースを見ていたのを覚えています(笑)。

――選手になる宣言を聞いて、お父さんは喜んだでしょうね。

…だと思うんですけど。父はそういう感情を顔に出さない人なんです。自転車に関しても、一度も乗れと言われたことはないし、むしろ好きなことをやれという感じで。

――やめようと思ったことは?

ないです。練習がキツすぎて、「もうやだ」と思ったことは何度もありましたが、自転車を嫌いになったことは一度もないです。自分から自転車を取ったら何も残らないので、“絶対にやめられない”と思っています。

走った距離は1ヶ月で3600km

――自転車競技の強豪校として全国に名を馳せる、前橋工業高校で自転車競技部に在籍されていました。

部員は私以外全員男子。それはまぁしょうがないんですけど、練習メニューが同じというのは、正直きついというか…全然楽しくなかったです(笑)。


――河内さんがそこまでいう練習メニューというのを教えてもらえますか。

学校に朝6時集合なので、4時40分に目覚ましをセットして、5時20分に家を出て自転車で学校まで行って、そこから朝練で60km走ります。

――60kmって坂もある一般道ですよね?

群馬県の赤城神社をご存知ですか? 標高1300mのところにあるんですが、そこまで自転車で駆け上がって、下りは60kmくらいのスピードで降りてくるんです。

――それだけスピードが出ると怖そうです。

怖くはないんですけど、必死についていかないと風を真正面から浴びることになるので、それが結構しんどくて。意地でも男子について行っていました。

朝練のあとは、死んだように授業を受けて(笑)。放課後は前橋競輪場まで自転車で行って、7時過ぎまで練習をして、そこからまた自転車で家に帰ってご飯を食べて、お風呂に入りソッコー寝るという毎日でした。

――それが平日ですよね。とすると土日は?

土日は、200km乗った後に前橋競輪場で練習です。

――平日が朝練と放課後で1日100km。土日が200mkということは、1週間で900km。月にすると…3600km!? 北海道から沖縄までいける距離ですよ。

3年の夏まではそのメニューで、夏以降はガールズケイリンの試験に向けて短距離の練習に切り替えて。当時は必死でしたけど、今思うともう笑っちゃうしかないですよね。

――夏も冬も変わらず毎日?

はい。ほぼ同じメニューです。お腹が空いたらおにぎりを食べながら自転車に乗って、ウェアやレーサーパンツで隠れている部分は白いのに、肌が露出しているところは真っ黒焦げに日焼けして。そのコントラストがすごかったです(笑)。


高校時代の日焼けあと(本人提供写真)

日本一自転車に乗った女子高生

――そしていよいよ、国家試験である競輪選手資格検定を取得するために必要な日本競輪選手養成所の試験です。合格する自信はあった?

タイムは出ていたので、実技はわりと自信がありましたが、問題は筆記…頭の方で(笑)。いつだったか忘れましたが、夜中の3時ごろ、両親が変な物音がするので見にきたら、私が夢遊病者のように固定ローラーに乗っていたという事件(?)があって。

普段の練習でそれくらい追い込まれていたので、勉強は…合格できたときは、ホッとしました。

――夢遊病!?

翌朝親に言われても、なんのことだかわからなくて。意識のないまま起き出して、ローラーに乗っていたみたいです。それくらい毎日がきつかったですから。当時は、日本一自転車に乗っている女子高校生だったと思います。

――養成所は5月入学で、卒業が翌年の3月。約10ヶ月ですが、今振り返ってどうでしたか。

思い出したくないというか…。記憶から消し去りました(苦笑)。

――それほど、大変だった?


技能的には、高校で作った土台の上に質を高める授業で、ガールズケイリン選手としての基礎を叩き込んでいただいたという、養成所には感謝の気持ちしかないんですが…。

外出はNG、ケータイに触れるのは日曜日の2時間だけ。自転車と勉強と食べることと寝る以外の時間がまるでない生活は、ほぼ地獄でした。

――10ヶ月間、一度も外に出ていないんですか。

はい、卒業して外に出たときはちょっとした浦島太郎状態で。セブンイレブンのレジが変わっていることを知らずに、店員さんにお金を手渡ししたら、「こちらに入れてください」と最新式のレジを案内されて。自分の知らない世界が当然のこととして広がっていたのに驚きました(笑)。

気持ちではなく体が怖がって

――本デビューは地元・前橋。メディアも大注目の中でのスタートになりました。

競輪学校卒業後にTwitterを始めると、どういうわけか新聞や雑誌の方からたくさん取材のオファーをいただいて。それまでは普通に走るだけだと思っていたので、最初は少し戸惑いもありました。えっ!? 私でいいの? みたいな(笑)。

――速くてかわいい。そういう注目のされ方は嫌ですか?


「チャラチャラしやがって」とか、「いい気になってるんじゃない」とか、ヤジを飛ばされることもあります。その度に、グサッとくるんですけど、でも、私がメディアに出ることでひとりでも多くの人にガールズケイリンを知ってもらいたいという気持ちがあるので、それはしょうがないのかなと思っています。

――そんな中、デビュー2ヶ月目に新人一番乗りとなる初勝利を挙げました。

先頭を取って、強い選手が来たらその選手に飛び付く――。その練習だけを繰り返しやってきて、その通りの展開に持ち込めたので、「よしっ!」という気持ちはありました。

――この勝利も含めて、ここまで6勝を挙げています。

6勝…あぁ、そうなんですね。

――えっ!? まさかとは思いますが、覚えていないとか?

すみません。何勝したというのは覚えていません。競輪では、点数…レースごとに得られるポイントが決まっていて、直近4ヶ月の競走得点の平均値を平均競争得点というんですが、私はその数字の方が気になります。

――常に必死なのですね。最後に昨年12月31日で20歳。お酒は飲まれるんですか?

成人式の日に友達と一緒に飲んだんですけど、はしゃぎすぎて、3日間具合が悪くなってしまって(笑)。それ以来、飲んでいません。


取材・文/工藤晋 写真/石田壮一

ガールズケイリン他の選手のインタビューはこちらから
▶︎塩田日海選手のインタビュー

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