2023年度(1月~12月)に反響の大きかった記事をジャンル別でお届けする。今回は「記事ベスト10」第8位の、人気アニメのキャラクターと結婚した女性のインタビュー記事だ。(初公開日:2023年4月26日。記事は公開日の状況。ご注意ください)
2次元キャラと“結婚”した20代女性が明かすセクシュアリティ「3次元の男性ともお付き合いしましたが、キスはできなくて…」「恋愛感情を向けられたくない」【2023記事 8位】
集英社オンライン / 2023年12月29日 8時1分
2023年度(1月~12月)に反響の大きかった記事ベスト10をお届けする。第8位は、2次元キャラと結婚した女性のインタビュー記事だった(初公開日:2023年4月26日)。2次元キャラクターと“結婚”する人々がいる。バーチャルシンガー・初音ミクと挙式をした近藤顕彦さんは「近年は男性だけでなく、女性も増えている」と話す。そこで今回、『NARUTO-ナルト-』の我愛羅(ガアラ)、『名探偵コナン』の安室透などのキャラクターに恋をし、結婚式を行った神奈川県内に住む20代女性の憂那さんにインタビュー。自身のセクシュアリティについて明かしてくれた。
幼い頃から2次元キャラに恋愛感情
――憂那さんは2次元キャラクターに本気で恋をする「夢女子」だと自身でおっしゃっています。「夢女子」だといつ自覚しましたか?
憂那(以下、同) 小学校の高学年ですかね。親が漫画を買ってくれない人で、2歳年下の弟が友達からもらってきた『NARUTO-ナルト-』が、人生で初めてちゃんと読んだ漫画でした。
読んでいるうちにキャラクターの我愛羅(ガアラ)や、うちはイタチを好きになって。それで当時から夢小説にもハマっていました。
――夢小説とは?
登場人物の名前を自分の名前に変換して読むことができる小説です。作品のキャラクターや世界観を使った二次創作が多くて、大半は恋愛がテーマ。当時、ガラケーで夢中で読んでいました。
――夢小説でお気に入りのキャラとの疑似恋愛を楽しんでいた、と。
そうなんです。だから漫画のキャラを好きになるのは当たり前のことだと感じていました。夢小説はたくさんあったので、そういう人がいっぱいいるものだと思っていました。
でも漫画やゲームを気軽に買ってくれる家庭ではなかったので、2次元キャラに本格的にのめり込んでいったのは高校に入ったくらいから。
デビューがだいぶ遅かったので、その反動で今、グッズを買いまくっているのかもしれません(笑)。
――どんなキャラに恋愛感情を抱いているんですか?
惚れっぽいところがあって、どんどん好きなキャラクターが増えてしまっています。
我愛羅やイタチさん、『鬼滅の刃』の煉獄(杏寿郎)さん、『ONE PIECE』のエースさん、『名探偵コナン』の安室透……本来はひとりのキャラだけを愛するべきだと思っているのですが。
――タイプがあるんですか?
ちょっと影があって、誕生日を祝われてなさそうな人が好きなんです(笑)。我愛羅やイタチさんがそうですね。そういうキャラを見ると、ほぼ間違いなく恋に落ちてしまう。
最近、ハマっているのは『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』に登場するペパー。すごくいい子なのですが、かわいそうな境遇で、救いになりたいと思ってしまいます。
両思いを望まないセクシュアリティ
――3次元の人間との恋愛もするんですか?
はい。3次元でもいろんな人を好きになりました。でも、私は「リスロマンティック」というセクシュアリティなんです。
自分が相手を好きになるのはいいんですが、相手から恋愛感情を向けられたくない。両思いになりたくないんです。
だから手の届かない2次元キャラクターが好きなんだと思いますし、3次元でもこれまで好きになったのは既婚者や芸能人、好きなキャラの声優とか、“可能性”がほとんどない方々です。
――好きになるのはいいけど、相手には好きになってほしくない、と。
そうです。男性に対して「好きです」というところまではいくんですけど、「付き合ってください」とは絶対にならない。
――これまで3次元の男性と付き合ったことは?
実は20歳のときに一回だけ。優しくて本当にいい人でした。
私は男性と付き合いたいと思ったことはありませんでしたが、両親は私に結婚してほしいだろうし、年齢的にそろそろ結婚を考えなければならないのかな……と感じていたので、当時気になっていた人とお付き合いしました。
適当に付き合ったわけじゃなかったので、この人とだったらもしかしたら結婚できるかも……という気持ちもありました。高校の同級生で、漫画とか同じような趣味を持っていました。
一緒にワンピースのイベントへ行って、グッズを買ってくれたり。その男性のことは確かに好きだったんですが、最終的には2次元を選んでしまったんです。
――差し支えなければ、破局の原因を教えていただけませんか?
付き合っているときも2次元の好きな子は別にいて、グッズを買ったり、イベントに行ったりしていました。
でも3次元の方とのお付き合いが始まると、2次元の世界に100%没頭するわけにはいかないじゃないですか。
時間もお金も3次元のほうに持っていかれるのがだんだんとストレスに感じちゃって。自分からお別れを告げました。
幼い頃のトラウマ
――選択を迫られて2次元を取ったということですね。
結局、イタチさんを裏切れなかったです。あと、もともと男の人が得意じゃないんです。友達なら全然平気ですが、恋愛対象として見てくる人が苦手で。
小学生のときに同級生の男子にストーカーみたいな感じで追いかけ回されたことがあって。その子はリーダー格で、周りの男子も巻き込んでちょっかいを出してきたのですが、それがすごく嫌だった。
それ以来、男の人に手を出されたり、ベタベタされたりするのがダメになってしまったんです。
――それが破局の原因のひとつになりましたか?
はい。お付き合いをしていた男性には、最初に男性が苦手であることを打ち明けていて、「ハグまではいいよ」「それより先はたぶんできない」と宣言していました。
向こうは当初、「それでもいいよ」と言ってくれたのですが、付き合って半年くらい経ったときに一度、キスをしようとしてきました。
半年も経ったからいいだろうと相手は思ったかもしれませんが、私はダメだったんです。それで一気に冷めたのが破局の決定打でした。
別にけんかをしたわけじゃないですし、付き合っておいてキスもできないなんて悪いことをしたなという気持ちはあるのですが、最終的に選んだのはイタチさんでした。
――うちはイタチの他にも好きなキャラがどんどん増えていくとのはどういう心情なのですか?
2次元キャラと恋している私は、3次元の私ではなく、2次元のアバターのような存在なんです。
自分を2次元にした状態で相手と一緒にいるというイメージ。「乙女ゲーム」のようなもので、好きな相手の数だけ自分がいるという考えです。
――好きなキャラが3次元に存在してほしいと等身大フィギュアを所有する方もいますが、憂那さんは自分が2次元に存在しているというイメージなんですか?
私の場合は、むしろ3次元に存在してほしくない。人間に近くなるのはどちらかといえば嫌なんです。キャラが印刷された2次元のパネルや小さなぬいぐるみとか、そういうのが好きです。
結婚が前提の社会に疑問
――2次元キャラとの恋愛について、家族に話していますか?
イタチさんのことはけっこう話していますが、両親からは「イタチさんを好きな人を探して、一緒に趣味を楽しめばいいんじゃない」とか、ちょっと的外れな答えが返ってきます。
家族の中では弟が唯一、「そういうことじゃないんだよ」と両親の言葉を否定してくれる。たぶんわかってくれているんだと思います。
――両親から結婚の話題は上がりますか?
直接的に「結婚しろ」とは言わないですが、結婚することを前提に話してくるんです。私が「結婚する気はないから」と言っても「どうせいつか結婚するんだから……」みたいな会話を何度もされます。
でも、彼氏のひとりもいない状態がずっと続いているので、最近、母はついに諦めた感じです。
――自分でも3次元の結婚は諦めているんですか?
できるものならしたいですが、無理なんだろうなというのが私の中の結論です。両思いになりたくないというのは、正直、一般の方にとっては意味不明じゃないですか。
いっそのこと2次元だけが好きで3次元は好きにならない、というほうがまだわかりやすいですよね。
――憂那さんは好きなキャラクターとフォトウェディングを行っています。
本当に結婚してドレスを着るのが一番いいんですけど、できそうにないので、写真だけでも撮っておきたいなという気持ちがありました。
純粋にウェディングドレスや白無垢への憧れもありました。1回目はウェディングドレスで、2回目は和装でやりました。
2回ともスタジオのスタッフの方々は2次元キャラとの結婚をすごく歓迎してくれました。何より好きなキャラと結婚できた実感を得られて、達成感がありましたね。
――2次元キャラとの結婚を世の中に理解してもらいたい気持ちはありますか?
あんまりないです。それよりも、(3次元で)結婚しなきゃダメだという風潮を一刻も早く何とかしてほしいです。
私が実家を出た理由はそれでした。出たいと思っていたわけではなかったのですが、親が結婚することを前提で話してくるので、ちょっと耐えられなくなって。
今は女性の友達とルームシェアをして暮らしています。その子も結婚する気がないので、一緒に住んでくれています。
「家族くらいは理解してくれたら」
――「リスロマンティック」を理解してほしい気持ちは?
その言葉自体が一般的じゃないですよね。当事者の私ですら、その言葉を最近知ったというレベルなので、世間に認知されるまでには相当時間がかかると思います。
いわゆる「LGBTQ+」の最後のほうですよね。プラスの部分です。一般には理解しづらいだろうし、私自身は他の人にわかってほしいとは思っていません。
できれば家族くらいは理解してほしいですが、それも難しいのかなと感じています。
――例えば、うちはイタチとは肉体的にも結ばれたいとか、そういう欲求や妄想をすることはありますか?
イタチさんとだったらそうなってもいいと思うこともあります。でも、結局それはイタチさんがこの世に存在しないから、そう思えるんでしょうね。
――では今、幸せな時間は?
給料の大部分をキャラクターのグッズやイベントに使っています。好意を寄せられるよりも、尽くしたり貢いだりするほうが幸せを感じます。
ぬいぐるみと一緒にお出かけする時間や、好きなキャラクターのグッズに囲まれたベッドで寝る時間が幸せです。
取材・文/川原田 剛
撮影/田中 亘
写真提供/憂那
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