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【2023漫画記事 1位】なぜ37歳の才女は汚物まみれのゴミ山で暮らすようになったのか。「合法的に人を殺せる商売が医者だから、ハイスペックな資格を取れ」歪んだ価値観で育てられた子供たち【漫画あり】

集英社オンライン / 2023年12月24日 11時0分

【2023漫画記事 6位】他人の「ハゲ」「薄毛」を指摘しづらい風潮は「いい世の中になった」のか「昔のほうがよかった」のか。1つだけ間違いなく言えることとは?【漫画】〉から続く

2023年度(1月~12月)に反響の大きかった漫画記事ベスト10をお届けする。第1位は、漫画『「子供を殺してください」という親たち』の原作者、押川剛氏のインタビュー記事(初公開日:2023年3月2日)。日本で初めて説得による精神障害者の移送サービスを行う「トキワ精神保健事務所」を始めた押川剛氏。その押川氏が原作を手がけ、社会の闇をリアルに描いた漫画『「子供を殺してください」という親たち』(新潮社)が問題作となっている。衝撃のノンフィクションコミックの製作背景を聞いた。

2023年度(1月~12月)に反響の大きかった記事をジャンル別でお届けする。今回は「漫画記事ベスト10」第1位、漫画『「子供を殺してください」という親たち』の原作者・押川剛氏に、社会の闇をリアルに描いた制作背景を聞いたインタビュー記事だ。(初公開日:2023年3月2日。記事は公開日の状況。ご注意ください)

#1 【漫画あり】毎日全裸でバットを振り、飼い猫まで殺した男と向き合う.

飯能親子3人一家殺害事件のような事件が起きそうな地域は…

――場所や名前などの配慮はしておられますが、本作はすべて実話をもとにした“オールリアル”とのことです。特に、押川さんの印象に残っている事例はありますか。

4巻に出てくる黒澤美佐子(仮名)のケースはすごかったですね。長年の引きこもりで、ドアを開けたら部屋一面にティッシュのゴミが山積みになっていて。

移送のときに救急隊、消防隊、役所、警察も立ち会ったんですが「これはもう押川さんのやる分野じゃない」っていうんですよ。汚物がマンションの下階の壁にまで染み出している状況で、役所の衛生課が出てきましたから。

しかも、そのことを依頼者である親がすべて隠していたんです。ウジもわいているし、臭いもひどい。それを、私たちに片付けろと言っていたんです。

――最後にその父親から「訴える」と言われていましたね。

あれも事実です。地方のちょっとした名家だったんですが、「大ごとにしやがって」と殴られたあげく、その父親の教え子だという弁護士にも脅されて。まあ、それも漫画の通りにはね返しましたが、費用も半金しか支払われなかったし、まさに「最悪のケース」でした。

――社会情勢や時代によって依頼の傾向に変化はあるのでしょうか。

私がこの仕事を始めた30年ほど前に比べたら、精神疾患に限らず、病気や障害に対する社会の理解が進んでいて、当事者が声を上げられる土壌もできてきています。

ただし、先ほど(#1インタビュー)も言ったように、声を上げられる当事者というのは、私からすれば病識がある「優秀」な患者さんです。病状が重い、病識がない、依存症やパーソナリティ障害のように、治療に時間のかかる対応困難な方については状況が変わっていないどころか、私宅監置が行われていた昔にかえっていると思います。

精神保健福祉法が改正され、厚労省は「入院医療中心から地域生活中心へ」と舵を切りました。実態は、地域に責任を負わせることで「事件待ち」の状況にして、自分たちとは関係ないということにしてしまったんですね。

病院も匙を投げる対応困難な患者さんを、地域で受け入れられるはずがなく、当事者や家族は孤立しています。事件化も顕著で、昨年1月にも神奈川県・川崎市麻生区の自宅で、30代の長男を監禁して死亡させたとして両親と妹が逮捕される事件がありました。報道では、長男は精神疾患の疑いがあり、全裸で外出して警察に保護されたこともありましたが、医療にはつながっていませんでした。

先日、埼玉県・飯能市で起きた親子3人殺害事件もまさにそうで、これからああいう事件が多発する可能性のある地域はわかっているんです。関東では圧倒的に埼玉と神奈川です。というのも、それらの自治体は、対応困難な精神疾患の方を医療につなぐことをほぼ放棄していて、もう診られる医者や医療従事者がいないんです。

新興宗教に洗脳された家庭への介入は…

――東京と千葉はなぜ大丈夫なんですか。

東京は多摩エリア、例えば青梅や八王子にある病院で、患者さんを受け入れてきた歴史があります。千葉にも精神病質の人たちを研究する病院があるので、経験を持っているんです。ですから、これからは住む場所もしっかり考えなければいけなくなってくると思いますね。

――つまり、事件が起きてから初めて対応するような状況になっていると。

そうなっていますね。当事者家族や近隣住民が被害を受ける場合もありますが、一番不幸なのはやはり当事者である患者さんですよ。

ほかの病気に例えるなら、重度の肺炎の方の治療は拒否して、初期の風邪の患者さんだけを診ればいい、と言っているようなものです。コロナ禍では重症化した方が医療にかかれずパニックになりましたが、精神科医療ではそれと同じことがずいぶん前から起きているのです。

――近年は新興宗教の問題が話題になることも多いですが、精神疾患と結びついたケースも少なくないように思います。

その問題には昔から直面していますね。ただ、一番多いのは当事者の親御さんが信者というケースで、どんなに酷い状況でも教義に沿って進めていくので、そのせいで医療につながれなくなったり、つながったとしても病院から親御さんが退院させてしまったりすることもあります。そういったご家庭は、やはりものの見事に宗教団体からお金もとられています。

――そうしたケースには、どう対応するんですか。

新興宗教に洗脳されてしまっている人たちは、「押川にだまされるな」という状態になっているので、基本的にはコミュニケーションが成立しないですね。我々が出ていかなくても簡単に医療とつながる状態なのに、つながっていないという場合は、往々にして新興宗教が絡んでいるケースが多かったように思います。

助けられた例でいえば、当事者が親と決別して、宗教からも離れられる環境を作ったことで、回復したケースがありました。実は、新興宗教側が私をスカウトしにきたことがあるんですよ。日本最大級のところも含めて4つくらいきましたけれど、当然すべて断りました。幹部候補でどうだとか、みんなお金の話ばかりしてきましたね。

「合法的に人を殺せる商売が医者だから、ハイスペックな資格を取れ」

――本作は読むほどに「家族の話」であると感じました。問題のある家族に見られる傾向や共通点はあるのでしょうか。

子供が生まれて大人になる過程では、問題があって当たり前です。だからこそ、その問題に対してどう向き合うかが大事で、シンプルにいえば、子供がのっぴきならない状況に陥ったときに、「何をおいてもお前が大事だ!」と親が言えるかどうかです。

現実には、子供の命よりもお金や体裁、自分の人生が大事という親がごまんといます。私からすると、そういう親の“やばい価値観”は子供にも引き継がれます。親のことを言うと、この国では怒られてしまいますが、もうほとんどが親の影響ですよ。大人になって承認欲求が強い人は、例えば子供のときに親からぜんぜん話を聞いてもらっていなかったりします。

だから、問題のある家族に見られる傾向と共通点としては、子供にマイナスの接し方をしていること。ちゃんとコミュニケーションをとってプラスを与えられる親御さんが育てた子供は、やはり社会でもプラスを与えていると思います。

ただし、こと金儲けとなると、人にプラスを与えられる人ほど、騙されたり搾取されたりと損をしていることが多いんですよね。

――たしかに漫画で取り上げられているケースは、裕福なご家庭が多いように思いました。

傍目には何不自由ない生活をしているのに、子供がおかしくなる家庭では、一線を越えた育て方をしています。実際に、「お金のために合法的に人を殺せる商売が医者だから、ハイスペックな資格を取れ」と子供に言っていた親もいました。そんなことをパッと教えられる親なんてそうそういないでしょう? 

そして、うちに依頼してくるのは、そのハイスペックな資格がとれなかったパターンです。

もともとの親のやばい価値観が、精神的な病気と手をつないで爆発してしまうんですね。でも、裏をかえせば親がそれをやっていいと言っているわけですからね。たまたま、彼が医者になれなかったという話なだけで。

「家族のあるべき姿」で守りたいたった1つのこと

――では、押川さんの思う「家族のあるべき姿」とはどのようなものだと思いますか?

やはり、本当のことを子供に伝えているかどうか、それに尽きると思います。金儲けが得意な人たちの生き様って相当えぐいですよ。でも、そんな自分の人生を、子供には「一生懸命勉強してきたから、そのポジションが取れたんだ」ときれいごとを言っている。

そうした親ほど、自分のやましさを子供に見抜かれないよう、ガチガチの枠にはめて育てる。親が干渉しすぎて、恋人ができたことを親に言えない人たちもいます。私からするとそんなのおかしいと思うんですが、そういう家族は多いですね。だから、最終的には「お前は病気だよ」ということも家族間で言えなくなり、事件にまで発展してしまうこともあります。

最近は、中間層の家庭でも同様のことが起きていて、親が真実の姿を見せていないばかりに、子供は理想と現実の乖離に苦しみ、引きこもらざるをえなくなる。それは、とても不幸なことだと思います。

4巻【史上最悪のクリスマス】黒澤美佐子のケース

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#1 【漫画あり】毎日全裸でバットを振り、飼い猫まで殺した男と向き合う.
#3 【漫画あり】全身根性焼き、舌も自分で噛み切った兄のために弟は…

取材・文/森野広明

『「子供を殺してください」という親たち』4巻(新潮社)

原作:押川剛 漫画:鈴木マサカズ
【漫画あり】なぜ37歳の才女は汚物まみれのゴミ山で暮らすようになったのか。「合法的に人を殺せる商売が医者だから、ハイスペックな資格を取れ」歪んだ価値観で育てられた子供たち_9
2018年12月7日
638円
192ページ
ISBN:978-4107721402
押川剛氏率いる(株)トキワ精神保健事務所は、病識のない統合失調症やアルコールや薬物の依存症、精神疾患の疑いのある長期ひきこもりなど、精神科医療とのつながりを必要としながら、適切な対応がとられていない対象者を説得し医療につなげることを主な業務にしている。今回は、薬物中毒者キヨさんの続編、依頼にならなかったエピソード、そして、「事務所史上最悪のクリスマス」のエピソードが明らかになる!!!

「子供を殺してください」という親たち - 原作:押川剛 漫画:鈴木マサカズ / #59:【ケース20】「いい子」の仮面の犯罪者②| くらげバンチ (kuragebunch.com)

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