2023年度(1月~12月)に反響の大きかった記事をジャンル別でお届けする。今回は「政治記事ベスト10」第4位、和歌山1区の議席を日本維新の会にとられた形の、二階俊博元幹事長が率いる和歌山県連についての記事だ。(初公開日:2023年4月27日。記事は公開日の状況。ご注意ください)
〈和歌山だけひとり負けでどうする? 二階元幹事長〉揺らぐ王国、派閥退会者が相次ぐなか、あの不倫路チュー議員もひっそり…「それでも二階先生はいつかやり返す」【2023政治記事 4位】
集英社オンライン / 2023年12月26日 8時1分
2023年度(1月~12月)に反響の大きかった政治記事ベスト10をお届けする。第4位は、和歌山1区の議席を日本維新の会にとられた形の、二階俊博元幹事長が率いる和歌山県連についての記事だった(初公開日:2023年4月27日)。4月の国政5補欠選挙を「4勝1敗」で乗り切った自民党だが、唯一の黒星が「二階王国」と呼ばれる和歌山での選挙だった。所属議員の派閥退会が相次ぐなど、二階元幹事長の影響力低下は必至だ。(サムネイル・トップ画像:和歌山で応援演説をする岸田首相 写真/共同通信社)
4月23日に行われた国政5補欠選挙で、自民党は山口2・4区、千葉5区、参院大分選挙区の計4選挙区で勝利した。
永田町では早期解散の憶測も強まる中、自民内で「ひとり負け」状態なのが、和歌山1区の議席を日本維新の会にとられた形の、二階俊博元幹事長が率いる和歌山県連だ。「二階王国」の選挙とあって、所属議員や秘書が総出で応援に駆けつけていた二階派にも、落胆が広がっている。
候補者選考から波乱
「不倫路チュー」元議員の擁立に「タマが悪かった」
これまで和歌山1区で5期連続当選を誇ってきた岸本周平氏が知事に転出したことに伴う補選で、自民はこれまで岸本氏に4連敗してきた門博文氏を擁立した。
「候補者を決める際に自民党が実施した調査では、知名度の高い鶴保庸介氏なら余裕で勝てそうで、当初は鶴保氏を擁立する調整が進められていました。でも二階氏の選挙区からの衆院転出を狙う世耕弘成氏にとっては、鶴保氏が先に衆院に鞍替えすることが面白くなかったんでしょう。
二階氏にとっても、二階派に所属していた門氏が当選すれば、派閥にとってプラスです。結局、和歌山県連は、岸本氏の支援をとりつけたことで、門氏でも勝負できるとみて、門氏の擁立を決めました」(二階派関係者)
だが、門氏を「勝てない相手ではない」と考えた維新が、和歌山市議を務めていた林佑美氏を擁立すると、雲行きが怪しくなる。
前出の二階派関係者が語る。
「門氏はもともと選挙に弱かったのに、2015年、女性衆院議員との『不倫路チュー』も撮られてしまい、今もスキャンダルの影響が強く残っています。今回、維新の候補が女性だったことも、門氏にとって戦いづらかったはずです」
そして告示日以降は、各社の情勢調査で門氏の苦戦が伝えられることに。その途端、世耕氏は手のひらを返すように「タマが悪かったんだよ」と周囲にこぼし始めるなど、和歌山県連と、派閥総出で選挙の応援をしていた二階派をとりまく雰囲気は重苦しくなっていった。
最終日には、1週間前に爆発物を投げられた岸田文雄首相や、二階氏と親しい小池百合子都知事も応援に入ったが、「停滞した和歌山に新しい風を」と訴える林氏には及ばなかった。
「一匹、いなくなったな」
所属議員がポロポロと二階派を退会
「王国」の県都をとられた二階氏の足元は、永田町でもゆらぎつつある。
「安倍・菅政権で二階氏が幹事長を務めていたときの二階派には、続々と入会者がいました。それが、ここ最近では、二階氏の力の陰りを象徴するように、ポロポロと退会者が続いているのです」(全国紙政治部記者)
二階氏の幹事長時代には、陳情団を連れて頻繁に二階氏に面会していた片山さつき元地方創生相は、岸田政権が誕生し、二階氏が幹事長職を退いた直後の2021年末、「このまま二階派にいても、先がない」と、二階派を退会する意向を早々に伝達。
その後も衛藤晟一元少子化相、泉田裕彦衆院議員が相次いで派閥を去った。
さらに今回の補選期間中、ある女性議員がひっそりと退会届を出したことも注目を集めた。
「門氏の『路チュー』相手だった中川郁子氏です。中川氏は故・中川昭一元財務相の元妻で、当時は独身でしたが、門氏は既婚者。
中川氏は『門先生が当選して、二階派に戻ってきたら、私は二階派にいられない』と周辺に話していたといい、門氏の当選を見越して退会届を提出した形です。
門氏が当選していたら、中川氏とプラスマイナスゼロでしたが、門氏が落選したことで、派閥内には『補選が終わるまで情勢を見極めればよかったのに』とぼやく声もあります」(同)
以前、ある議員が退会したときには、「一匹、いなくなったな」とつぶやいた二階氏。
「議員を動物のように『匹』と言うところが、いかにも二階氏らしいですが、かつて幹事長派閥として人数を増やしていた時代は終わりました。今は非主流派の党内第5派閥として、苦しい時期が続いています」(同)
「生徒会やってんじゃないんだよ」 首相への恨みは今も
二階氏の周囲でも今後、大きな転換点がやってきそうだ。
二階氏の側近、林幹雄・自民党財務委員長の長男で、千葉県議を4期務めてきた幹人氏が4月の県議選に出馬せず、国政選挙をめざす意向を表明した。このことで、林幹雄氏が次期衆院選に出ず、幹人氏に継がせるのではないか、とささやかれている。
林氏は二階氏が幹事長だったころに幹事長代理を務め、現在も二階氏の側近中の側近として知られる。
全国紙政治部記者は、林氏が引退した後の二階氏をこう心配する。
「林氏は、二階氏が国会内で道に迷ってしまったときも案内してあげたり、二階氏が、菅義偉元首相、森山裕選挙対策委員長といった重鎮と会食をするときも同席したりと、ぴったりと寄り添ってきました。
口数が少なく『おう、そうか』くらいしか言葉を発しないことも多い二階氏の『通訳』とも言われており、林氏がいなくなったら、二階氏はどうなるのでしょうか……」
それでも、二階派議員は「二階先生は、こんなところじゃ終わらない。俺はいつまででもついていく」と話す。
そもそも、二階氏が「非主流派」に置かれたきっかけは、岸田首相が2021年の自民党総裁選に出馬するときに、5年にわたって幹事長を務めていた二階氏を念頭に、総裁以外の党役員任期を「1期1年、連続3期まで」とする公約を掲げたことだった。
二階氏は、岸田首相の政権運営を「政治はみんなでやるもんだろう。自分が目立てばいいわけじゃない。総理は生徒会長じゃない。生徒会やってんじゃないんだよ」と吐き捨てる。
永田町、和歌山の双方で二階氏の威光に陰りが見えるなかでも、二階氏周辺は鼻息が荒い。
「二階先生は、いつか必ずやり返す。自分が幹事長だったときに、岸田総理に刺された恨みは、決して忘れていない」(同・二階派議員)
取材・文/集英社オンラインニュース班
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