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読書好きのヤクザの親分が獄中で読む本とは…刑務所の中のヤクザの日常のリアル

集英社オンライン / 2023年12月18日 18時1分

ここ数年暴力団員数の減少は下げ止まり、増減なく横ばいになっている。ヤクザ取材歴25年以上、暴力団組員、幹部、組長に取材を重ね、業界にパイプと人脈を持つ尾島正洋氏が現代ヤクザのリアルに迫った。新刊『俺たちはどう生きるか 現代ヤクザのカネ、女、辞め時』(講談社)より一部抜粋してお届けする。

刑務所でのヤクザの日常

●服役経験がある指定暴力団古参幹部
トラブルになっていた組織の連中とケンカになり、傷害事件などで数回にわたって刑務所に入った。通算すると10年以上は服役の経験がある。警察に逮捕されると留置所暮らしとなる。検察が起訴して捜査がほぼ終了すると拘置所に送られる。ここではまず全裸になってケツの穴まで調べられる。裁判所に出廷して刑が確定すると刑務所だ。


写真はイメージです

ヤクザだから特別ということはあまりないが、刑務所内ではやはりヤクザということで受刑者の間ではそれなりの扱いをされる。

刑務所内では、朝は午前7時前に起床し朝食を取り8時から刑務作業となる。10時から15分ほど休憩があり12時から昼食。午後1時から再び作業で、午前と同様に休憩をはさみ5時に終了し夕食。その後は毎日ではないが風呂や自由時間などがある。午後9時には消灯となり就寝となるのが基本的な生活パターンだ。

刑務作業には作業報奨金が支払われることになっているが、月に3000円程度だった。自分は金属加工の仕事をやってナベなどを作っていた。簡単な作業だが、真面目にお勤めしていた。しかし、夜はさすがに9時には寝られないから困った。

自分の場合は事件を起こして逮捕され、一審判決で実刑が出た後に控訴しなかった。量刑が納得できるかどうかは別として、これを受け入れる。裁判所にも検察庁にもこれ以上は迷惑をかけない。裁判所で言われたとおりに服役する。

服役もヤクザとしての仕事の一環

●別の指定暴力団幹部
一審で結論が出たら従う。控訴はしない。
ヤクザになって社会に迷惑をかけるかもしれない存在だから、警察に逮捕されて裁判所で結論が出たらそれに従う。控訴していつまでもぐずぐずしているより潔く服役するのがお勤めだ。それが渡世人というもの。ヤクザはムショ暮らしと背中合わせ。服役もヤクザとしての仕事の一環のようなものだ。

刑が確定した受刑者を刑務所に割り振るにあたって、犯罪傾向の進度が進んでいない者は「A級」、進んでいる者は「B級」と区分けされる。暴力団構成員は当然のようにB級に分類される。さらに、刑期が10年以上は通称でロングと呼ばれ、長期受刑者が多い刑務所に収容される。

B級を主に収容している刑務所は東京の府中や大阪、神戸、広島、福岡など大都市にある。恐喝事件で逮捕されて有罪判決が確定した六代目山口組の髙山清司若頭が服役していたのも府中刑務所だった。

写真はイメージです

2019年10月に出所した際には、六代目山口組と神戸山口組が分裂し対立抗争の真っ最中の時期だったこともあり、新聞やテレビで大きなニュースとして報道された。B級を収容している刑務所では、受刑者の半分以上が暴力団関係者ということもあるという。

暴力団の対立抗争事件などが起きている場合は、対立する組織の組員同士が刑務所内で鉢合わせすれば、その場でケンカになりかねない。こうした事故が起きないよう刑務所で事前調査が行われる。

刑務所内の部屋は12畳の雑居房に6人が基本だが、受刑者が多くなると7~8人が詰め込まれる。

読書好きの親分が獄中で読む本とは

●前出の指定暴力団古参幹部
部屋の中では、古くからいる先輩格から、入ってきたばかりの新入りまでさまざまだ。部屋の中で布団を敷いて寝る際には、一番奥はボス格。奥から順番に先輩から後輩へとなり、入り口に近いところは新入りといった序列になる。

刑務所では基本的に病気治療は無料だ。歯の治療はすべて無料でやってもらった。

だが、病気は禁物だ。刑務所の中で病気になったら危ない。医者は常駐ではなく巡回なので具合が少々悪くても医者が来るのを待たなければならない。同じ部屋で「具合が悪い」と言い出した者がいた。朝、起きると熱があったようだ。その後、運ばれていったが、帰ってこなかった。後に死んだと聞いた。

刑務所の自由時間では読書が最高の娯楽と話す暴力団幹部もいる。

読書を好む幹部の間では歴史もの、特に戦国武将を描いた作品が人気だ。なかでも、戦国時代最強とされた組織を編成した武田信玄の関連作品が好まれる傾向があるという。

写真はイメージです

●指定暴力団幹部
戦国武将ものが好まれるのは自らの組織をさらに強固にするためだろう。合戦で勝った、負けたという面白さもあるが、組織論という読み方をすれば役に立つ。消灯時間が過ぎても寝床で本を抱えて、常夜灯を頼りに読んでいた。刑務官に見つかれば怒られることになるが……。

写真はイメージです

●関西地方に拠点がある別の指定暴力団幹部
刑務所の中ではよく読書を楽しんだ。就寝時間となっても隠れて読んでいた。長年の付き合いのある知人たちがいくらでも本を差し入れてくれた。組織としての差し入れも多かった。

自分の場合は『三国志』が好きだ。

蜀の国の劉備、関羽、張飛の三人が、乱れた世の平定を志して義兄弟の契りを交わし、生死をともにすることを誓い合った、「桃園の誓い」の名場面が特に好きだ。ヤクザになって親分と交わす親子盃や、兄弟分となる際の兄弟盃など、組織の中で血縁関係を結ぶ我々のマインドとぴったりとくる。

差し入れは組織の面倒見の良さを知らしめる意味合いもあるようだ。なかには服役中に簿記の勉強に取り組んで、出所後に資格を取得した暴力団幹部もいるという。

文/尾島正洋

『俺たちはどう生きるか 現代ヤクザのカネ、女、辞め時』(講談社)

尾島正洋

2023年12月12日

900円

208ページ

ISBN:

978-4-06-534460-6

「それでもヤクザになりたいという若い入門希望者は少なからずいる。警察から目を付けられるから、最近はあえて盃を与えず組員と同じ扱いにしているんだ」
警察の徹底した締め付けによって、車を買うことも、ゴルフをすることも、自分名義のスマホを持つことさえ許されない現代ヤクザ。
それでも覚醒剤、闇カジノ、風俗店など「シノギ」の道が途絶えることはない。
現実に、ここ数年暴力団員数の減少は止まり、増減なく横ばいになっている。
ヤクザ取材歴25年以上、暴力団組員、幹部、組長に取材を重ね、業界にパイプと人脈を持つ筆者が聞き出した肉声と本音。
暴力団組員は、実はその多くが国民健康保険に加入し、抗争でケガをしたときも、保険証を提示して治療を受けている。
また、ストーカーになった元組長、気に入った女性をホストクラブに連れていく理由、組長の妻と愛人の生態など、現代ヤクザのリアルに迫る。
誰もが知りたい以下の疑問に答える必読の一冊。

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