ツイスト・ブームを頂点にカヴァー・ポップスが人気のピークを迎えた1961年から1963年。
東京オリンピックを間近に控えた日本では、意外にも社会の趨勢とは逆に、復古調で時代がかった流行歌が人気を集めていた。
流しの演歌師として東京の浅草で苦労を重ねた、こまどり姉妹。61年の夏、三味線を手にして着物姿でデビューし、『ソーラン渡り鳥』が最初のヒットとなってスターの座についた。
その年の暮れから62年にかけては、浪曲師から転向した村田英雄が歌う『王将』が大ヒット。レコード産業が始まって以来最高の、100万枚を超える売上げを記録する。
そこに扇を片手に男装の袴姿というファッションで畠山みどりが登場して、『恋は神代の昔から』のヒットを出すと、続いて浪花節調の根性路線による『出世街道』で人気が沸騰したのだった。
急速に衰退していくカヴァー・ポップスに代わって、若者たちの間には「青春歌謡」というジャンルが台頭してくる。
そして若さと夢を礼賛する歌詞と日本的なメロディーが、都会的すぎるポップスについていけなかった若者たちに強く支持された。