気候変動を主題にした『人新世の「資本論」』を上梓してからというもの、環境問題や過剰な「開発」をめぐって、さまざまな相談をもちかけられるようになった。大阪市の街路樹伐採、千葉の里山のメガソーラー建設、新宿御苑への放射性物質を含む汚染土持ち込み計画、そして神宮外苑再開発……。
ネットで情報を拡散したり、勉強会で話をしたりすることは簡単にできるが、それで十分なのか。当事者たちの深刻な訴えを前に、自分に何ができるかを自問する。
毎日新聞の連載の取材で、都営霞ヶ丘アパートに住んでいた菊池浩一さんに話をうかがったときもそうだった。2021年の東京五輪を前に、新国立競技場の建設と神宮外苑エリアの「整備」という名目で、菊池さんたちが長年暮らしてきた都営住宅は解体された。