「死や。終わったよ、俺ら」金属バットが生命の危険を感じた南大阪の成人式での営業…舞台に出たらすでにヤンキーがヘリに座っていて一言「巻きで頼むわ～」

〈【新春・金属バット連載】「とにかくかまして、クリックさえさせりゃあええんすもんね」熟考した結果でた、とんでもない連載タイトルとは〉から続く

1月8日、成人の日。日本全国で多くの成人式が行われ、今年も派手な袴を着て傍若無人にふるまう新成人の姿が報道されている。型やぶりなスタイルで人気のお笑い芸人、金属バットもかつて行った成人式の余興で、元気な若者にカラまれた過去があるという。

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【過去記事】M-1からTHE SECONDまで金属バットのインタビューはこちらから

お笑いサークル出身編集者、全員スベってる

――今年のM-1、史上最多の約8500組がエントリーされたと。数多いる芸人さんの中で頭角を表すのは本当に大変そうですね……。

友保隼平（以下、友保）　ムズいすね、ほんまに。ちょっとね、仕上がりすぎましたね、漫才。世の中、今もう若い子でも始めたてでも、ものすごうまくて、おもんないけど上手いのとかおるもんな。

小林圭輔（以下、小林）　うん。

友保　上手いのはおもしろく見えてくるしな。

――それはみなさん、いろいろなものを見て勉強されているからなんでしょうか。

友保　YouTubeとかね。俺らんときなかったもんね。

小林　あと高卒が少ない気がする。

友保　みんなそや、大学いっとんねん。アホはやめよんのよ。

――大学生お笑いサークル出身の人もすごく多いですね。

友保　今ね、流行ってますねえ。令和ロマン、真空ジェシカ、（真空ジェシカは）レジェンド同士のコンビらしいですからね。なかったもんなお笑いサークルなんか。あってもバカにしてたよなあ。

小林　お笑いサークルね（笑）。

友保　おまえらほんまにおもろいんかって（笑）。大学行ったら勉強せえ。勉めなはれ。

――お笑いサークル出身で、芸人ではなく編集者になった系編集者、一番厄介なんですよ。

友保　それ見出しにしましょう。「お笑いサークル出身編集者全員スベってる」。

――金属バットが言ったみたいな感じになりますね。

友保　勘弁してくださいよ。言ってそうやねん（笑）。いや、なんか、こいつら大学お笑いやってたいうて、「どんなもんやねん」思て見たらちゃんとおもしろいですもんね。なんやねん。ちゃんと見たことないことやってるし。俺どうしたらええねん。高卒やねん。おっちゃんらの仕事奪うな、おまえら。頭悪いんやから、わしらは。

小林　なんぼでも就職先あるやろ。

友保　おっちゃんら、どこもないから来てんねん。

「日清どん兵衛」CMのギャランティは

――そんな金属バットのお二人に「日清どん兵衛」のCMの仕事がきました。去年、大変話題になりました金属バットのきつねダンス。実は連載開始の記念に、日清食品のCM担当者さんにコメントをいただいたんですよ。

Q.「どん兵衛どろぼう反省ダンス」CM になぜ金属バットを起⽤したんですか。

「どん兵衛」に愛はあるが、“どんぎつね”になってきつねダンスを踊らなさそうなタレントさんを探す中で、⾦属バットさんほど適任はいないと考えて起⽤に⾄りました。

Q.⾦属バットのどこに魅⼒を感じていますか。

アウトローと⾔われているお⼆⼈ですが、「どん兵衛」に対しては“ど真ん中”の愛を貫いてくれているところに魅⼒を感じています。

小林　何人もの大人がチェックしてそうな文章。「ここ言い方変えろ」とか（笑）。

友保　「どん兵衛」に対しては“ど真ん中”の愛を貫いてくれている……この点々（“”）『特攻の拓』でしか見いひんですけどね（笑）。

小林　（担当者さんに）北海道で初めてお会いしましたよ。

友保　俺ら帰るときに来はって、ちょろっとしゃべって。「ああよかったです。一緒に仕事でけて」言うてくれはって。なんかえらい言ってくれはって、でもマジで（どん兵衛）持って帰っただけなんすけどね。常軌を逸するくらい持って帰ったんで、背負子作って箱ごと持って帰りましたわ。

――初CMですよね。

友保　初です。最初で最後。

――以前インタビューした時、へんな大阪のラブホのCMやりたいとか言ってたのに。

友保　へんなじゃないです。タワーズホテル。もしもしピエロ。へんじゃない。それから南海部品。

――これからこういうCMオファーがあれば前向きにやっていこうという心持ちでしょうか。

友保　CMで食っていきます、俺たち。この令和の荒波。とんでもない金です。ほんまアフリカの奥地やったら、一生遊んでくらせます。とんでもない額をいただきました。

小林　……オファーはないですよ……。

友保　あるわけない。全然年賀状のやつ、けえへんもんな。いろんな吉本芸人出てんのに。あれ、知ってます？　見取り図・盛山がやってたCM、年賀状送ってたじゃないですか。顔を見てください！　あいつ年賀状なんか送ったことないんやから。盛山が年賀状なんか送るわけないんやから。

成人式の舞台でヤンキーが座ってる横で漫才

――この記事が配信されるころはちょうど成人の日です。お二人の成人式の思い出は？

小林　成人式、営業で行ったな。

友保　1回行かしてもろて。南大阪の泉南。大阪なんか南行けば行くほどワルくなるんで。泉南なんか、ほんまギリギリ電気が通ってるかみたいな感じで。力強いやつが市長なるみたいなね。

小林　そうそう。

友保　そこの成人式呼ばれてね。俺らもその南の大阪の方やから大丈夫でしょう言われて。

小林　慣れてるでしょうと。

友保　そんなことないけどな、思てねえ。俺ら堺っていうちょっと上品なほう出身なんで。

小林　そうですね。泉南に比べたら。

友保　品性の街です。で、行かしてもうて、その成人式会場の裏へ車でバーン行ったら実行委員の子らが来ててね。ちゃんと金ピカの百式みたいな紋付き袴着てて、あれ？　大丈夫なんかな？　あれあれあれ？　思てね（笑）。

――成人式のニュース映像でよく見るタイプの。

友保　あれのちょっと抑えてるやつ。でもちょっと飛ばしてるやん。ちょっとその辺からちょっとね。

――実行委員って基本真面目な子がやるのに。

友保　態度はすごくいいんですよ。「金属バットさん、来てくれはってありがとうございます〜」って下から。でも格好は完全に戦闘スタイルですね。聖闘士星矢みたいのついとったな。誰と行ったっけ？

小林　ラニー（ノーズ）とトットさん

友保　そやった。控え室みたいなとこで、放送とか聞こえるんすよ。これから市長の挨拶があります、みたいな。なんでみなさん静かに、騒がないでくださいって、去年は外で騒ぎすぎてパトカーが出動したので、今年はちょっと抑えてくださいって。あ、終わったなって（笑）。

小林　お弁当を食べる手が止まったな。

友保　死や。終わったよ、俺ら。いざ俺らの番で舞台に出たら、もうすでに舞台にヤンキーが座ってるんすよ。（ステージの）ヘリにな。

小林　そうそう。

友保　背中向けて俺らに。ほいで俺らのほう向いて「おおおもろいことせえよ～」みたいな。

小林　「巻きで頼むわ～」とか（笑）。

友保　（ステージ上に）俺ら、ヤンキー、その奥に手話（通訳）の人。だんだんそのヤンキーも俺らのこと相手せえへんようになって。俺らもその、あまりにも凄まじいから、ちょっと黙ってしもうて（笑）。でも手話のおばちゃんだけは、動いてるから何してはるんやろ思たら、舞台に座ってるヤンキーの話を訳してた。

小林　最悪やったな〜。

成人になって一番辛かったことは？　今や！

友保　最悪やった。で、最後質問コーナーがあったのよ。俺らとラニーと、トットさんが出てきて、トットの多田さんがMCで。「成人の方おめでとうございます〜」って、僕ら成人になってからだいぶ経つんで、「なんか質問ある人〜？」みたいなん言って、あんま手上がらんかってね。で、なんか真面目そうな人が手あげてくれて「あの、みなさんはなんで芸人になったんですか？」って。でも俺はもう心死んでるから「わかんないです」って（笑）。

小林　とにかく早く終わらせよう。

友保　で、またヤンキーがカラんできてな「おもろいこと言うてや」とか、多田さんが上手いから「今から言うねん！」って。「なんでやねん！」「いやまだボケてないやろ！」とか。でみんな笑えばええけど、そのヤンキーしか笑てない。

小林　そやったな……。

友保　多田さんがほんまズバズバ切って話終わらして、俺らは震えて。なあ、真面目な子の質問スカして（笑）。「成人になって一番辛かったことなんですか？」みたいな質問にも「いやぁ、特にないですね」って。今や！

小林　一番辛かったのは、今やな（笑）。

友保　もうヘロヘロなって、帰りみんなおんなじバス乗って。そんでなんでかしらんけどわし、ちんちん勃起しまくってな。

小林　それずっと言ってるけどなんやねん（笑）。

友保　たぶんちょっとあれや、体が死ぬってなって。

――生命の危機を感じたんですね。

友保　そう、生命の危機を感じたもんやから、もうズボン千切れるくらい勃起してましたよ（笑）。みんな寝てるのに。地獄やったなぁ。あれから成人式の営業行ってないな。成人式会場にも近付かんようにしてるな。たまに（オファー）くるんですけどね、ふざけんなですよ。ノーモアよ。ノーモア成人式。

小林　千代田区の成人式だったらやりますけどね（笑）。

取材・文／西澤千央　撮影／Peta Photo Studio

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1年後の金属バット#1
1年後の金属バット#2

〈マクドナルドで3年間バイトした金属バット・小林が卒店式でもらったビッグマックのぬいぐるみの行方…全酒の中で一番安い酒を飲んでいたけど、めちゃくちゃ楽しかった下積み時代〉へ続く