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その推薦を求めて予備選候補者が行列! 大統領選再出馬に向けて、存在感増すトランプ氏

集英社オンライン / 2022年5月27日 9時1分

2年に一度行われる中間選挙を秋に控え、党の公認候補になるための予備選挙がすでに全米各州で始まっている。ここで存在感を増しているのがトランプ前大統領だ。いまだに根強いトランプ人気にすがるように、候補者たちがその推薦を求めて行列を作っているのだ。2年後の大統領選に向け、トランプの足場固めは着々と進んでいる。

トランプの推薦は当選への“特効薬”

トランプ前米大統領がうごめいている。テレビやSNSの世界で、ではない。リアルな政治の場においてだ。2年後の大統領選挙への立候補を正式に表明したわけではないが、出馬に向けて着々と外堀の基礎工事を始めていると言っても過言ではない。

その戦略は今年11月の中間選挙で自らの息のかかった議員を一人でも多く当選させ、共和党内に“トランプ議連もどき”を作るというもの。その熱心さは、共和党を「トランプ党」に変貌させたいのではと思ってしまうほどだ。



トランプ氏の最大の武器は、支持者を中心に、いまだ根強い人気があること。今秋の本選挙を控え、党の公認候補になるための予備選挙がすでに全米各州で始まっているが、ここでトランプ氏の推薦を得られれば、候補者は圧倒的に優位に予備選挙を戦えるのだ。すでにその“恩恵”を受けた共和党候補者は150人に上る。

「ドナルド・トランプ第45代米大統領には、絶対、お礼の言葉を述べなければならない」

オハイオ州共和党上院議員候補の座を勝ちとった、作家でベンチャー資本家のJ.D. ヴァンス氏が、シンシナティで支持者を前に、こう仁義を切ったのは5月3日(日本時間4日)のことだった。

ヴァンス候補は予備選ではずっと3番手の位置に甘んじていた。それが4月15日にトランプ氏の推薦を受けるとトランプ支持者を中心に支持を集め、一気にトップに躍り出たのだ。

オハイオ州の上院予備選は全米でも注目の選挙区として知られるが、その理由はふたつある。

ひとつは場所柄だ。1964年以来、オハイオ州で勝利した大統領候補者は常にホワイトハウスの住人となっている。そのため、オハイオ州は”bellwether state”(大統領当選者を占う指標となる州)という特別な地位を与えられてきたのだ。

前回の大統領選でオハイオ州を落としたバイデン候補が当選したことで、そのパターンは途切れてしまったものの、全米屈指の激戦州(swing state)として、いまもその支持動向は注目の的となっている。

反トランプ候補までもが“信者”に

ふたつ目の理由はJ.D.ヴァンス候補自身にある。彼を一躍有名にしたのは『ヒルビリー・エレジー(Hillbilly Elegy)』という自伝的小説だ。

ヴァンス候補はオハイオ州のラストベルト(錆びついた工業地帯)であるシンシナティ郊外で育ち、苦学して名門イエール大学ロースクールを修了。その後、金融業界に進んで成功を収めた、いわゆる「勝ち組」だ。

粗暴でアルコール依存の祖父母、薬物依存で性的に放縦な母、日常に蔓延する暴力と虚無感。こうしたシンシナティ郊外での暮らしを汚点や哀れみの対象とすることなく、淡々と愛情を持って小説に描いたことで、ヴァンス氏は多くの読者、とくにリベラル層から高い支持を得た。

ところが、そのヴァンス氏がリベラル層の支持の厚い民主党でなく、トランプ系保守候補として共和党の予備選に出馬したのだ。それまでヴァンス氏は「トランプはアメリカのヒトラー」「詐欺師」「私はトランプ否定論者だ(never-Trump guy)」などと公言し、反トランプの姿勢を前面に打ち出していた。

だが、中間選挙が近づくと共和党候補として名乗りを上げ、しかもトランプ氏の推薦欲しさに「私の判断はまちがっていた」「反省し、後悔している」と、それまでとは真逆の発言をするように。果ては「私の人生で(トランプ氏は)最良の大統領であることは疑いない」とまで言い切る始末だ。

そのヴァンス氏の変わり身の早さに全米が改めてトランプ氏の推薦パワーの凄さを認識し、オハイオ州の注目度はさらに高まった。

候補者たちが次々とトランプ別荘詣で

じつはオハイオ州ではヴァンス氏以外の共和党候補も、トランプ氏のお墨付きを得ようと、し烈な戦いを繰り広げていた。

当初、共和党の最有力候補と目されていたのは元州財務長官のジョシュ・マンデル氏だった。予備選では極右政治家らしく、「宗教にイエス、銃所持にイエス、トランプにイエス」と叫ぶなど、トランプ氏へのすり寄りはピカイチで、選対にはトランプ陣営のスタッフが多く参加していた。

そのマンデル氏も含め、オハイオ州上院予備選候補者が大挙して、フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の別荘・マール・ア・ラーゴに馳せ参じたのは昨年のこと。もちろん、トランプ氏に面会し、当選の「特効薬」――推薦を受けるためだ。

出席者の証言によれば、一堂に会した候補者はトランプ氏にアピールしようと激しく論戦し、ついにはブチ切れ、互いに罵倒し合ったという。しかし、ここで展開されたトランプ氏への「忠誠心」競争に勝者は出ず、結局、その場にいなかったヴァンス候補が推薦を手中にし、漁夫の利を得る形となった。

選挙を控えるライバル候補同士を別荘に呼んで「プレゼン」競争させ、求心力を高めるトランプ氏のこうした手法は、自らが司会をしていた人気TV番組「アプレンティス」の番組構成そのものだ。

共和党の予備選に出馬する候補者の多くが、昨年から熱心にこの「マール・ア・ラーゴ詣で」を続けている。それもありきたりの参拝ではない。

敷地面積1万平米、時には結婚式場としても利用される広大なマール・ア・ラーゴでわざわざ政治資金集めのパーティ(ファンドレイザー)を開いたり、トランプ氏がよく視聴するとされるFOXのスポットCM枠を買い取り、トランプ礼賛メッセージを流して歓心を買おうとするなど、じつに手が込んでいる。

過熱する一方のトランプ推薦獲得合戦で、もっともドラスティックだったのが、ジャニス・マクギーチンアイダホ州副知事のケースだ。

彼はトランプ氏がお気に入りの保守派論客・タッカー・カールソン氏が司会を務めるFOXニュースのインタビュー番組に出演。そこでトランプ礼賛をしたところ、翌日には「ニューヨークのトランプタワーで会おう」とトランプ氏からマクギーチン副知事のもとに連絡が入り、推薦を手中にすることができたのだ。

米中間選挙の共和党予備選挙は5月、6月が山場となる。そこでトランプ氏の推薦を受けた候補が何人当選するのか? その「確率」は共和党内での、トランプ氏のパワーを測るバロメーターとなるはずだ。

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