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「令和のお江戸で、我拶もんに出逢う」神尾水無子〈第36回小説すばる新人賞〉

集英社オンライン / 2024年1月3日 11時1分

数年前、神保町の神田古本まつりにて。渉猟していると、江戸時代の資料を並べた書店を見つけた。開いたページに「我拶」の文字が。その時、主人公の一人、桐きりゆう生が背後から「よーう」となれなれしく、わたしの肩を叩いた。チーム「我拶もん」の、メンバーが集まり始めた瞬間だった。

令和のお江戸で、我拶もんに出逢う
神尾水無子

数年前、神保町の神田古本まつりにて。
渉猟していると、江戸時代の資料を並べた書店を見つけた。開いたページに「我拶」の文字が。その時、主人公の一人、桐きりゆう生が背後から「よーう」となれなれしく、わたしの肩を叩いた。チーム「我拶もん」の、メンバーが集まり始めた瞬間だった。
深川江戸資料館からの帰り道にて。


乙粋な芸妓のお姐さん衆が、紳士を取り囲みながら歩いていた。華やかな雰囲気に、道行く人が振り返る。ふと、一人のお姐さんと目が合った。その時、匂い立つような艶な姿の粧香が現れ、物語のシーンさながらに、わたしに流し目をよこした。
贔屓にしている噺家さんの高座にて。
大好きな演目『芝居の喧嘩』。旗本・水野十郎左衛門の四天王と、俠客・幡随院長兵衛の手下が大立ち回りを繰り広げる。その時またもや桐生が、さらに宿敵の小弥太も立ち上がり、取っ組み合いの喧嘩を始めた。桐生の陸尺仲間、翔次と龍太が懸命に止めに入る。
自宅の作業部屋にて。
わたしは歴史について専門的に学んだことはない。小説講座の先生から「あなたは時代ものを書いたら」と勧められ、慌てて書店に走った。手にしたのは中学生向けの江戸時代の図鑑。それから少しずつ、小難しい本を読むようになり、それらしきものを書き始めた。
編集者兼ライター時代の習い性か、ものを調べる作業は楽しかった。その後、何年も結果を出せず、何本も日の当たらない拙作を書き散らかすとは夢にも思わず。けれど今、信じられない栄誉を授かった。
小説すばる新人賞に向けて日々、努力されている皆さまへ。
こんな作者でも受賞できるんだな、と少しでも励みになれば幸いです。

我拶もん
神尾水無子 著
単行本・2024年2月26日発売予定

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