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これから生成AIに雇用を減らされる職業が「デザイナー」「イラストレーター」「漫画家」「アニメーター」「作家」「脚本家」「作詞家」「作曲家」である理由

集英社オンライン / 2024年1月15日 11時1分

アメリカではAIによって証券アナリスト、保険の外交員、資産運用アドバイザーといった金融系の専門職の雇用はすでに減少している。膨大なデータを処理する仕事は、人間よりAIのほうが得意だからだ。そしてデザイナーやモデルといったクリエイターたちも今後生成AIの脅威にさらされていくという。なぜか? その具体例を『AI失業 生成AIは私たちの仕事をどう奪うのか?』より一部抜粋して紹介する。

生成AIはどの程度雇用を減らすか?

アメリカの投資銀行であるゴールドマン・サックスのレポートでは、生成AIが全世界で3億人分の雇用に影響すると予測されています。また、アメリカの労働者の7%が生成AIに代替されるとも述べられています。しかし繰り返しになりますが、この手の予測は占いのようなもので、参考程度に留めておくべきでしょう。



生成AIが今後いつどの程度進歩するのかという点について、コンセンサスはありません。また、どの程度の労働者が解雇されるのかは、経営者の心理に依存する部分もあり、そういう人の心理はなおのこと読みにくいです。さらに、雇用の変化は政府がどのような経済政策を実施するかにも左右されます。

したがって、生成AIによる雇用への影響の程度についての予測は定かではありませんが、影響を受ける職業が何であるのかは、論じやすいでしょう。わかりやすいのは第1章で述べたように、クリエイターです。デザイナー、イラストレーター、漫画家、アニメーター、作家、脚本家、作詞家、作曲家などがAIの脅威にさらされます。クリエイターというより、自分を表現する仕事と言った方がいいとも思いますが、ほかにもモデルや俳優も大きな影響を受けるでしょう。

すでに人工知能による代替が
始まっているモデルの仕事

京都にあるデータグリッド社は、「敵対的生成ネットワーク」(Generative Adversarial Network:GAN)と呼ばれるAI技術を得意としています。これは2014年に発表された新しい技術で、ありそうでない架空のモノの画像を作り出すことができます。

このAI技術は、図2‐4のように「ジェネレーター」(生成器)と「ディスクリミネーター」(識別器)から成り立っています。たとえば、犬らしい画像を作りたい場合、まずジェネレーターが犬っぽい偽の画像を作ろうとします。

ディスクリミネーターは、そうした偽の画像を本物の犬の画像から識別しようとします。ジェネレーターは犬っぽい偽の画像を本物に近づけて、ディスクリミネーターにばれないようにします。

両者が相手と「敵対」するように自分の目的を遂げようとして、結果、本物に近い画像が「生成」されます。

同社は、この技術を使って人の画像を作るサービスに注力しています。架空のアイドルの画像を作ったり、イメージナビという会社と組んで実在しないモデルの画像を売り出したりしていました。

これは2020年頃の話で、今ではその優位性は薄れてしまっています。図2‐5は、例のサブゼミに参加している学生がStable Diffusionで作った、架空の人物の画像です。

このように、生成AIの登場によって個人でも画像生成AIを使って、DIY的に人の画像を作れるようになっているのです。

ファッション誌の撮影などでモデルを1人雇うと、モデルの報酬のほかにカメラマンやメイク係の人件費など、多額の費用が掛かります。それに対しAIであれば、モデルの画像を簡単かつ低コストで量産できます。

個性やカリスマ性のあるモデルは生き残れるでしょう。しかし、ビジュアルが良ければ誰でも構わないというのであれば、それはAIで代替可能になってしまいます。

生成AIによる架空のモデル画像は、もう十分商用利用できるレベルに達していると言っていいと思います。すでにネットでは、AIの作ったモデル画像が広告に採用されています。特に、マッチングアプリの広告などに多用されている印象があります。

雑誌では、『週刊プレイボーイ』(集英社)が、AIで生成した架空のグラビアアイドルの画像を掲載して話題になりました。「さすがは週プレ!先端的」と私は感心したものでしたが、そのアイドルの写真集が発売されて、1週間くらい後に販売終了となりました。AIの生成物を商品化することに、もっと慎重であるべきだったとのことです。

今後『週刊プレイボーイ』のような雑誌は、ネットにあふれかえるであろう生成AIによるグラビア画像との激烈な競争にさらされます。なので、早めにAIの側へと飛び込んでいった方がよいかもしれません。

生成AIは静止画だけでなく動画も作れるようになってきているため、CMにも使われるようになるでしょう。アメリカではすでにAIのみで作ったコカ・コーラのかっこいいCMがあります。

CMも当然、生身の人間に出演してもらえば多額の出演料がかかります。それに、出演者の俳優などが不貞行為を働いたり、麻薬に手を出したりして商品イメージが傷ついてしまうリスクもあります。

反対にAIが作った架空の人物であれば、多額の出演料がかからないうえに、そういったトラブルとはまったく無縁なわけです。したがって、こうした架空の人物を使ってCMを作ることの利便性は高いと言えます。ただし、CMでは人間的な魅力のある人を起用する場合も多いため、AIでそのような人材を代替するのは難しいでしょう。

事務職の雇用はますます減らされる

クリエイターほどではないにしても、一般的なホワイトカラーのような頭を使う仕事は、今後生成AIが発展していくことによって広範囲に渡って影響を受けるでしょう。中でも、事務職と専門職が雇用を脅かされます。

アメリカではITによって、すでに事務職の雇用が減らされています。それは先述した通り、コールセンターや旅行代理店のスタッフといった人たちです。日本では事務職の雇用が著しく減少しているわけではありません。

それでも2023年7月時点で、一般事務の有効求人倍率は、0.34倍でかなり低く抑えられています。3人に1人くらいしか採用されないことになるため、狭き門だと言えます。リーマンショック後の2009年から全体の有効求人倍率が長期的に上昇しているにもかかわらず、一般事務の有効求人倍率は低迷し続けているのです。

これまでもMicrosoft Officeのような便利なソフトウェアや経理システム、そのほかさまざまな情報システムの導入によって、事務職の仕事は効率化されてきました。近年では、「ロボティック・プロセス・オートメーション」(RPA)によって、定型的な事務作業の自動化が図られています。

そこへChatGPTのような言語生成AIが加わる形です。さらに、GPTの機能は「Microsoft365Copilot」という名前で、「Microsoft365」に組み込まれることになっています。「Copilot」(コパイロット)というのは副操縦士のことで、ここでは手助けをしてくれるといった意味合いがあります。Microsoft 365というのは、Microsoft Officeのサブスクリプションサービスです。

GPTがサポートしてくれることによって、私たちがエクセルやパワーポイントで資料などを作る作業はますます楽になるでしょう。ただし今でも、ChatGPTに「プラグイン」(機能を拡張するソフトウェア)を入れれば、簡単にグラフを描かせることができますし、パワーポイントのスライドを作らせることもできます。

そのため今後は、事務職の人に書類作成を依頼する機会が減っていくでしょう。たとえば、GPTに限らずですが、言語生成AIがメールソフトに組み込まれるようになれば、メールで依頼された書類の作成は一瞬で済むようになります。

これまで営業職の人は、「請求書を作成して送付してください」というメールが届けば、自分で作成するか、事務職の人に作成してもらう必要がありました。

将来的にはメールが届いた瞬間に、AIが「請求書を作成し、○○さんへの返信メールを書きました。これでよろしいでしょうか?」と知らせてくれて、私たちは確認してOKボタンを押すだけで済むようになります。書類作成という業務の負担が劇的に軽くなり、AIが作成した書類の確認と若干の修正くらいで仕事が完了するようになるのです。

書類作成だけが事務職の仕事ではないため、職業自体が消滅するわけではありません。ただ、雇用が著しく減少すればそれだけでも深刻な問題です。一般事務の有効求人倍率は、現在の0・34倍からさらに大きく低下する可能性が出てきたのです。

専門職も人工知能に脅かされる未来

すでに述べた通りですが、アメリカでAIによって雇用が減っていた職業というのは、証券アナリスト、保険の外交員、資産運用アドバイザーといった金融系の専門職でした。それに、「パラリーガル」(弁護士助手)も加えられるでしょう。

パラリーガルという職業は、1つには膨大な書類やテキストデータの中から、裁判に必要な部分だけを抽出してまとめるような作業を担います。そういう作業はAIで代替できるため、アメリカではパラリーガルの仕事も減ってきています。

これは日本の話ですが、不倫に関する民事裁判があれば、膨大なメールの中から不倫の証拠を抽出する作業が必要となる場合があります。人間が行ったら長い時間がかかりますが、テキストを解析するAIであれば短時間で終わらせられます。これまでも、簡単なテキストデータの処理程度であればAIで可能だったのです。

こうして、金融系の専門職とパラリーガルに限っては、アメリカではすでにAIに雇用が減らされました。しかし、ChatGPTのような言語生成AIの出現によって、会計士、税理士、弁護士、司法書士、ジャーナリスト、研究者、教員、コンサルタントといったあらゆる専門職の雇用が脅かされることになりました。

こういったスペシャリストは、専門的な知識を人に伝えたり、それを活かして何かを作成したりすることを主な生業にしています。税理士であれば、税務に関する知識を人に教えたり、確定申告書を作成したりします。

しかし、これからは言語生成AIがそうした業務を肩代わりできるでしょう。こういった職業で生き残りを図るには、顧客が抱えている疑問や不安を察知し、かゆいところに手が届くようなホスピタリティを発揮することで、AIに対する優位性を保っていく必要があります。

大学教員は人工知能で代替可能か?

私のような大学教員も、うかうかしていられません。たとえば、講義で使うパワーポイントの資料なども、「マクロ経済学の授業15回分のパワポ資料を作って」とAIに頼めば、数分くらいでぱっと作ってくれるようになるでしょう。

その資料に沿って話す内容も、文章として作成してくれるはずです。そうしたら、教員が楽になっていいと思うかもしれませんが、仕事が楽になることと雇用が減ることは裏表の関係にあります。

たとえば、1科目あたりの負担が半分に減る代わりに、1人の教員が担当する科目が倍に増えて、その分教員の人数が半分に減らされるということになりかねないからです。実際には大量の解雇は起きないにしても、教員の新規採用が減らされる可能性があります。

さらに言えば、話したい内容のテキストデータと自分の顔写真があれば、AIを使って顔写真の口をパクパクさせ、自分のアバターにその文章をしゃべらせることもできます。

図2-6の左は私の写真で、右はその写真を元に「D-ID」というサイトで作った「しゃべる動画」の画面イメージです。人物の画像とテキストをこのサイトにアップロードすれば、その人物がテキストの内容を話しているかのような動画を作ることができるのです。

この動画を見た知り合いが勘違いして、「井上さん、もうちょっと表情豊かに話す訓練をした方がいいよ」とアドバイスしてきました。口以外はそれほど動かないため、不自然だと感じたのでしょうが、AIが作ったものとまでは思わなかったくらいの出来栄えだということです。

そうした技術を全部組み合わせれば、講義の動画がほぼ自動で作れるため、「人間の教員はいなくてもいい」ということになりかねません。

ただし、これはあくまでも映像であるため、生身の教員が講義をするよりは臨場感に欠けるでしょう。それでも、教員の中には話すのが得意でない人が少なくないため、学生にとってはAIの作った映像の方がわかりやすいかもしれません。

そもそも、「ミクロ経済学」とか「マクロ経済学」といった決まりきった内容であれば、日本でもっとも説明がうまい人が動画を作り、それを学生に視聴してもらった方が、下手な講義を受けるよりも効率がいいでしょう。

しかし、教育現場は保守的であるため、生身の教員が教壇に立って講義を行うというこれまでのスタイルを、そう簡単に捨て去りはしないはずです。「AIの組み合わせで全部いける」、もしくは「優れた1つの動画を使いまわせばいい」と思っても、すぐには実行に移さないのです。

そのせいか、大学教員は私も含めてですが「自分たちは安泰だ」とあぐらをかいている人が少なくありません。しかしビジネスは競争が激しいので、どんどん新しい技術を導入して、人件費を削減しようとします。

それが必ずしもいいことだとは思いませんが、世の中がそうである以上、大学教員はもう少し世の中の厳しさを知った方がいいでしょう。大学教員はのほほんとしすぎです。自戒の念も込めて、そう申し上げておきたいです。

大学教員の仕事には、教育だけではなく研究もあります。このことを知らない学生が意外にも多く、「先生って夏休みは何をしているんですか?暇じゃないですか?」と聞かれることがあり、その度に苦笑しています。

研究とは、調査や分析を行って、その結果を論文や本にまとめて発表するという営みです。その際、自分のテーマに関連した論文を探してきて読む必要があるのですが、私にとってそれは面倒で苦手な作業です。

しかし、今ではChatGPTが「この論文を読めばいい」と教えてくれますし、英語の論文を日本語に訳すことも容易にできます。さらには、指定した字数で要約も可能で、なんなら論文の執筆自体すらChatGPTでできてしまいます。

2023年3月には、途中までChatGPTに書かせた論文が学術雑誌に掲載されています。それは、「チャットと不正行為」というタイトルのChatGPTに関する論文です。論文の審査員は、著者たちが論文の中でChatGPTに書かせたことを明かすまで、人間が書いた文章だと思い込んでいたようです。

理工系の研究では一般に、試験管に薬品を入れてかき混ぜるというような作業が必要なので、AIに論文を書かせるだけで研究が完結するわけではありません。それでも、文系では分野によっては、論文執筆のすべてをAIに任せることもできるでしょう。

学術論文に関して、1995年に「ソーカル事件」という事件が起きています。アメリカのアラン・ソーカルという物理学者が、自分で無内容だと思うような哲学系の論文をもっともらしく見えるように執筆し、学術雑誌に投稿したところ、論文審査を通ってしまったのです。

そんなふうに、上辺だけの適当な言葉を書き連ねて文章を作ることはAIの得意技と言ってもいいでしょう。AIの執筆した文系の論文が審査に通るような事案が、そろそろ起こってもおかしくないと思います。

図2-7は、ChatGPTに「唯識と独我論の違い」というテーマで、哲学の短い論文を書かせたものです。これでも、ある程度内容がちゃんとしたものですが、もっと専門の論文を読み込ませて書かせれば、審査に通らないとも限りません。

とは言うものの、文系の研究はすべてAIに任せればいいと主張したいわけではもちろんありません。人間の研究者はAIにはできないような、意味のある成果を生み出していかなくてはならないのです。

プログラマーも生成AIに代替される

今ChatGPTを一番使っている職業は、プログラマーでしょう。これは元々、AIのようなコンピュータ技術を使いこなすことに長けた人がプログラマーに多いということもあるのですが、それだけChatGPTが見事にプログラムを書けてしまうということでもあります。

ChatGPTが出てきた直後のタイミングである2022年12月に、私は前述したAIについて勉強するサブゼミで、ChatGPTがプログラムを書く様子を学生に見せました。すると、学生の1人が「先生、もう人類終わりじゃないですか!?」と悲痛な叫びをあげていました。AIがプログラミングまでできてしまうならば、人は何もすることがなくなってしまうのではないかと危惧したようです。

しかも、4月から数か月間プログラミングを学んでいた彼らにとっては、「今までの僕たちの努力は何だったの?」といった徒労感を味わわされたかっこうになりました。学生たちには、申し訳ないことをしたと若干悔いています。

前のAIブームが始まった2016年頃、私も含めてみんなが予想できなかったのは、プログラマーの仕事がAIに代替される見込みが立つのが、こんなにも早いタイミングだったことです。これもプログラマーという職業がなくなるわけではなく、AIを使うとかなり効率が上がるということですが、その分プログラマーの頭数は少なくて済むようになります。

今でも、「GitHub Copilot」(ギットハブコパイロット)というGPTを利用したプログラム自動補完システムを使うと、作業をかなり効率化できます。56%ほど作業時間を短くできるという実験結果もあります。

なお、今のところ生成AIは、Webサイトや企業の情報システムをまるごと作成してくれるわけではありません。プログラム言語の書き方をまったく知らないプログラマーが活躍するようになるのは、まだ先の話でしょう。

営業は残りやすい職業

こうして見ていくと、クリエイター、事務職、専門職のいずれであっても、優れた人は生き残るけれど、中途半端にやっていると「機械との競争」に負けて、仕事を得るのが難しくなります。

つまり、卓越したアイディアやAIに負けないような表現力、AIにはないホスピタリティなどを持たない人は淘汰される可能性があるのです。ひどい話ですが、それが現実に起き得ることである限り、やはり私たちは危機感を持たざるを得ません。

逆に、ホワイトカラーの中で生成AIに脅かされにくいのは営業の仕事でしょう。ただし、BtoCの営業(消費者向けの営業)は、そもそもすでにITに置き換えられています。保険の外交員がまさにそうで、昔は親戚のおばさんが保険を売ってくるといったことがよくありました。

今は、対面での営業行為が好まれにくい時代です。それに、ネットで保険を買うことが普及してきて、各自がそれぞれ好きな保険に加入すればいいという風潮になっています。銀行の人から「投資信託を買いませんか」と勧められることがありますが、私個人が受けている営業はそれぐらいです。

一方で、BtoBの営業(企業向けの営業)は、未だに人同士の信頼関係のもとに取引をしています。納期に間に合わないなどのトラブルが生じた際には、発注元は発注先の誰か、つまり人間に責任を取って欲しいわけです。あるいは、接待をしてお酒を注いだり相手をほめちぎったりするのも、今のところロボットというわけにはいきません。

このように、人と人が対面で取引をすることが主流であるため、BtoBの営業は当面、目に見えて減ることはないでしょう。現在のAI技術の延長線上で考えたときに、営業は比較的残りやすいホワイトカラーの仕事であると言えそうです。

とは言え、発注先と発注元を自動でマッチングするようなAIのサービスも出てくるでしょう。そうしたサービスが増えていくことで、営業も多くの部分がAIに任せられるようになるはずです。もっとも、商慣習が根強く残り続けるため、AI任せになるにはかなりの時間がかかるものと考えられます。

販売員は生成AIに代替可能か?

衣料品店やビックカメラのような家電量販店に行くと、商品の説明をしてくれる販売員がいます。そういうお店の販売員は、生成AIの台頭でどうなるのでしょうか?

すでに、お店に行かずにアマゾンなどのECサイトで物を買うことが、消費者の間で一般化しています。また、そもそもお店自体の数も減少しているため、それに応じて販売員も減少しています。それとは別に、生成AIに販売員を減らす可能性はあるのでしょうか?

一時期は、ペッパーのようなロボットが販売員を務めるという期待もありました。それがうまくいかなかった理由は、かつてのAIは人とのコミュニケーションがそんなに得意ではなかったからです。

ところが今では、ペッパーにGPTを組み込む試みもなされています。それが実現すれば商品の説明もできて、お客さんの質問にも柔軟に答えられる人型ロボットが実現できるでしょう。そうしたら販売員という職業がすぐ消えてなくなる、という話ではありませんが、徐々に置き換わっていく可能性があります。

ただ、ロボットは物理的な機械であるため、1台1台製造にコストがかかります。ソフトウェアのAIとは違い、限界費用はゼロではないのです。メンテナンスも必要で、動かなくなった場合には修理の人を呼ぶ必要があります。そうであれば、人を雇った方が安上がりということになりかねないでしょう。

販売員に向いているのは、ロボットよりも言語生成AIを組み込んだバーチャルヒューマンだと思います。商品棚にディスプレイが設置してあり、そこに3Dグラフィックスの人が映っていて、商品に関する説明をしてくれるようなイメージです。

ただし、バーチャルヒューマンの場合、お客さんが「スマホケースはどこに売っていますか?」などと尋ねたときに、その場所に連れていくことができません。衣料品店で、倉庫から洋服を持ってきてお客さんに手渡すということもできないでしょう。空間的な移動を必要とするような接客ができないのが難点で、一長一短です。


写真/shutterstock

AI失業 生成AIは私たちの仕事をどう奪うのか?(SB新書)

井上智洋

2023/11/7

990円

264ページ

ISBN:

978-4815622374

人工知能(AI)で明暗が分かれる仕事、業界、日本社会…その未来を経済学者が大予測!

ChatGPTを代表格とする文章生成AI、ミッドジャーニーやステーブル・ディフュージョンに代表される画像生成AIなど、各ジャンルで高機能のAI技術が続々と誕生している今。あらゆるビジネスパーソンはそれらの概要を理解し、使いこなせなければ生き残れない時代が到来しているといえます。

さらには、最新のテクノロジーツールを自在に操れたうえで、自らのプレゼンスを高めるために、「己の付加価値をどうビジネスで生み出すか」が問われ始めてもいます。

そんななか、多くの働く人の頭にあることは、「テクノロジーによって自分の仕事が奪われるのではないか」「共生していくにしても、太刀打ちできる気がしない…」という危機感でしょう。

数年前は、「どんなに技術が進歩しても、ヒトにしかできない仕事やクリエイティビティはある」と信じて疑わなかった人々でさえ、この現実を目の前にして「いよいよ本格的に多くの人が失業するのでは?」と考えを一転させているはずです。本書は、かねてよりAIやメタバース、テクノロジーと雇用の関係性について、先見的な意見を述べてきた経済学者・井上氏が、この大変革期に「人工知能が私たちの雇用と経済に与える影響」についてやさしく語る1冊です。

AI失業 生成AIは私たちの仕事をどう奪うのか?

はじめに
第1章 生成AIが変える世界
第2章 AIで産業はどう変わるか?
第3章 人工知能は日本経済をどう変えるか?
第4章 AIと人間は共生可能か?

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