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なぜ裏金問題が続出しても自民党は支持されるのか…「嫌でも野党に投票するしかない」という状況で、今ひとつ立憲に足りないものとは?

集英社オンライン / 2024年1月20日 7時1分

NHKが1月15日に更新した世論調査によると内閣支持率は先月よりも3ポイントアップの26%。一方、不支持率は2ポイント下がって56%だった。昨年12月に発覚した自民党派閥が政治資金パーティー収入の一部を裏金化していたことが、連日メディアで報じられたことで大幅な支持率下落が予想されていたが、結果的には信頼回復に向かっている。「今年の野党が果たすべき責任は大きい」と期待はされるものの、国民からイマイチ支持されない立憲民主党に“足りない”要素を政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏が指摘する。

2つの選挙は「自民の強さ」と「立憲の弱さ」を証明したのか?

世論調査の結果を見ると「自民党は依然として強い」というよりは、「野党第一党である立憲民主党が頼りない」という見方ができる。立憲は支持率5.3%となかなか二桁台に乗らない渋い状況が続いており、2023年12月に東京都で実施された江東区長選、武蔵野市長選では、いずれも立憲が推薦した候補者は自民党推薦の候補者に負けている。



とりわけ武蔵野市長選は昨年12月24日に行われ、裏金問題に伴う自民党バッシングがヒートアップ中で、立憲側からすれば、いわば“ボーナスステージ”だった。わずか339票差の接戦だったとはいえ、千載一遇のチャンスを逃したことを鑑みると、立憲の期待感の低さを感じずにはいられない。なぜ与党の問題が止まらないにもかかわらず立憲は支持を集められないのだろうか。

永田町で長年取材活動をしているジャーナリストの鈴木哲夫氏にその理由を聞いた。

まず江東区長選、武蔵野市長選での立憲の敗戦について、「東京都は小池百合子都知事の存在感が強い特殊な地域です。この2つの選挙結果から単純に『立憲が負けた』と決めつけてはいけません」と釘を刺す。

「江東区長選では与党の推薦を受けて元東京都政策担当部長の大久保朋果氏が出馬しましたが、都民ファーストの会も一緒に推薦しています。都ファは自民党の“天敵”だった小池知事が創設した政党であったのに、これまでは相容れなかった自民党と手を組むという異常事態が起きました。

都ファ所属の都議からその裏側を聞くと、江東区長選に向けて元都議擁立の準備などを進めていたようですが、幹部会で小池知事から『自公と一緒にやる』『大久保氏は都庁女性幹部として頑張って働いてきたいい候補であり、自公と手を組むくらい別にいいではないか』と突如言われたそうです。当然『自民党とは一線を画すべき』と反対の声もあったそうですが、知事の声は天の声。結局は与党と都ファが手を組む構図が決まりました」

江東区長選で街頭演説する小池百合子都知事(左)と当選した大久保朋果区長(右) 写真/共同通信


江東区長選では“自民色”を消して“小池色”を前面に押し出して大久保氏が勝利した。ただ、武蔵野市長選では同様の動きは見られなかったが、鈴木氏は「都ファから候補者を出さずに“自公と野党がそれぞれ推薦する候補者の一騎打ち”という状況を作り、間接的に自公に協力しました」と語った。

自民党と都民ファーストは今後も共闘?

そもそも、小池知事が自公と組んだ背景は何なのか。鈴木氏は「前出都議によると『2024年7月に行われる知事選を見据えているのかもしれません。小池知事が出馬するかはまだ明らかになっていません。しかし、出馬とすれば自民党と協調路線にして対立候補擁立を出さないようにしてもらう狙いがあるのではと話しています』と口にしていました」という。

「しばらくは自民党と都ファの協力は続くかもしれません。そのほうが自民党にとって好都合なので。というのも、自民党東京都連の衆議院議員は『岸田政権の影響によって2023年9月の立川市長選、10月の立川都議補選、11月の青梅市長選、と自民党は3連敗しました。東京都における自民党の組織力をこれ以上弱体化させないため、小池知事とは今後も協力関係をとっていくかもしれない』と話していました」

都ファという新たな“仲間”を加えたことにより、自民党の巻き返しは加速しそうではあるが、鈴木氏は「武蔵野市長選は僅差の勝利であり、やはり自民党の逆風は依然として強いと思います」という。

国会議事堂

立憲が消費税減税に後ろ向きなワケ

次に立憲について聞くと、鈴木氏は「少しずつですが支持率は挽回してきています」と答え、より一層信頼を集めるために必要なこととして「与党が絶対にできない政策を立てればいい。例えば、消費税減税。自民党は財務省や厚労省など霞が関と親密なため、消費税減税は絶対できません」と説明。

時事通信が2023年11月に発表した世論調査によると「消費税減税に賛成」(57.7%)という回答は5割を上回るなど、消費税減税を求める国民は多い。ただ、立憲の泉健太代表は2023年11月下旬、都内の講演に出席した際に消費税減税について「選挙の政策はその時の経済状況を見て判断する」と発言するなど、後ろ向きな姿勢を見せている。

自民党には打ち出せず、国民が望む消費税減税を掲げない手はないように思える。しかし、現実には消費税減税を前面に押し出さない背景があり、「ある立憲のベテラン議員は『泉代表は党内の重鎮である野田佳彦元総理や岡田克也氏などに気を遣っている。野田氏らは財務省にも近く消費税は触るべきではないと考えているため、泉代表はその決断ができない』と言っていました」という。立憲も自民党と同じで、官僚に配慮するあまり、国民が望む政策を推進できないようだ。

カギはメディアを味方につけられるか

泉代表としても言いたいことも言えずに苦慮しているのだろう。それでも、野党第一党の代表としてリーダーシップを発揮してほしいところだが、2023年11月に法政大学で公演した際に「5 年で政権交代を考えている」と口にしている。この発言に落胆した人は少なくない。

記者会見する立憲民主党の泉健太代表 写真/共同通信

なにかと後ろ向きな発言が目立つ背景として、「『5 年で政権交代を考えている』と発言した後に『前回(2021年)の総選挙で僕らが150議席を獲っていれば、次は当然政権交代と言いたい。もう一回再生していくには手順が必要。そういう意味で5年。次の総選挙でしっかりと基盤を築いて、ホップ、ステップで(政権を)獲れる。そういうものを目指している』と続けています。

前後までしっかりチェックすると『参院選も段階的に考えている』という、ある意味で筋が通っている内容でした。とはいえ、それを取り上げる際には、メディアは必ずこの『5年』を切り取り、『次の選挙では政権を獲る気はないのか』と書かれます。本人も気を付けていたため、前後でちゃんと説明していたと思うのですが、それでも切り取られました。この『5 年で政権交代を考えている』という発言の報じられ方からもわかる通り、立憲としては“コミ戦(コミュニケーション戦略)”が必要であり、党内でコミ戦部隊をしっかり作っていかなければいけません」

「今年の野党が果たすべき責任は大きい」

先月、元外相の田中真紀子氏は YouTube チャンネル『たかまつななチャンネル』に出演した際、政治の健全化のために「嫌でも野党に投票するしかない」と話していた。とはいえ、立憲の支持率は一桁台。政権交代するために必要な戦略は何なのか。

「政権交代と聞くと『政策もバラバラな野党が上手く共闘できるのか?』という疑問が浮上します。ただ、政権交代が起きた1993年では、8党派からなる細川連立政権が誕生しましたが、当然8党派の政策が全て一致するのは無理です。しかし、最も大きな“非自民党”のただ一点では一致しました。『一度長く続いた支配を終わらせて自民党にお灸を据えよう』という意識が広がって政権が変わりました。今回もそれで行くべきです」

政権交代で立憲が足りないもの

最後に政権交代を目指すうえで立憲に足りていない要素を聞くと「したたかさ以外にありません」とキッパリ。

「1993年に政権を奪取された自民党は翌年、対立が目立っていた自民党・社会党・新党さきがけと手を組み、“自社さ連立政権”という考えられない組み合わせで政権復帰しました。自社さ連立政権では、自民党は議員数が一番多かったのですが、社会党の村山富市氏を総理として担いで裏方で支える、という“したたかさ”を見せました。野党は立憲の議員数が一番多く、野党結集のためにかつての自民党同様に立憲がバックヤードに回り、他の野党を前に出してまとめる“したたか戦法”があってもいいかもしれません」

続けて、「政治に大きな2つの勢力が緊張感を持って対立することで初めて、権力は国民の声を丁寧に聞きます。今年の野党が果たすべき責任は大きい」と語気を強めた。裏金問題が発覚した幹部議員の立件が見送られるなど、もはや政治の歪みは禁じ得ない。もう一度お灸を据えるためにも野党、とりわけ野党第一党の立憲は例年以上に存在感を見せなければいけない。

取材・文/望月悠木

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