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お酒に香り、R18指定の作品まで。大人がハマる「令和のプラネタリウム」

集英社オンライン / 2022年5月31日 13時1分

有楽町や池袋、押上にある「コニカミノルタプラネタリウム」が今、大人世代から支持を集めている。昔ながらのプラネタリウムとは一味も二味も違う、新時代の演出とは。人気の秘密に迫った。

プラネタリウムといえば「子どもの頃、学校の課外授業で行った!」「大人になってからはあまり行かないなぁ」という人も多いだろう。筆者もそのひとり。プラネタリウムは天井に映し出された星を見ながら説明を聞くだけの「ちょっと真面目でお勉強っぽいもの」というイメージだった。

しかし、昨今のプラネタリウムは違うらしい。星を眺めるだけにとどまらないエンターテイメント性のあるプログラムが増え、大人がデートで、友達同士で、おひとりさまで楽しむ場所になっているという。



そんなプラネタリウム業界を牽引するのがコニカミノルタプラネタリウムだ。

アロマの香りに包まれたり、お酒を嗜んだりしながらプログラムを楽しめるもの、俳優やミュージシャン、アニメ作品とコラボしたものなど、そのプログラムは実に多彩だ。斬新な企画はどのようにして生まれるのか、作品プロデューサーの嶋津奈穂さんに作品づくりの裏側を伺った。

コニカミノルタプラネタリウム株式会社 営業統括部 コンテンツグループ 嶋津奈穂さん

進化するプラネタリウム。音楽、猫…多様なコラボに隠された思い

プラネタリウムが変化した背景の1つには、技術の進歩がある。

従来のプラネタリウムは、中央にある機械から壁に向かって星を映し出す「光学式プラネタリウム」形式だった。それに対して、昨今は「デジタル式プラネタリウム」と組み合わせることが多くなっている。ドームに映像を映すことが可能になり、表現の幅が広がったのだ。

東京・有楽町にある「プラネタリアTOKYO」

「たとえばハワイを表現する場合、昔は星とナレーションで説明するしかありませんでしたが、今はハワイの映像を映し出すことができます。できる表現が増えたおかげで、さまざまな物語を作れるようになったんです」

さらに「LEDドーム」の登場により、ますます鮮明で美しい映像表現が可能になった。ドーム自体がモニターになっていて、壁に映像を映すというより「壁から映像が出る」のだ。その迫力は息を飲むほど。

「LEDドームでは入場時から映像を出しているのですが、一歩足を踏み入れた瞬間に『わぁ!』と歓声を上げるお客様がたくさんいらっしゃいます。そのくらい美しいんです」

ダイナミックな星空を楽しめるLEDドーム

進化したのは技術面だけではない。上映作品も昔とは比べものにならないほどバラエティに富んでいる。

例えば、俳優の濱田龍臣が主演を務めるドラマ仕立てのプログラム「流れ星を待つ夜に」や、葉加瀬太郎や須田景凪などのアーティストが楽曲を手掛けたり、プロの楽器奏者による生演奏が楽しめるプログラムもある。そのアイデアの根源について、嶋津さんは次のように語ってくれた。

クラシックの生演奏と星を楽しむライブ・プラネタリウム

「もちろんプラネタリウムなのでメインは星ですが、星に他の要素をかけ合わせることで、常に新しい切り口を模索しています。例えば、アーティストさんとコラボしたプログラムは星と音楽の組み合わせです。好きな音楽を聴きながら星を楽しんでいただくにはどうしたらよいかを考え、内容はその都度、新しいことを突き詰めていっています。いろんなエンタメを入れることで、星を見るだけというよりも、星を身近に感じていただけるかなと思っているんです」

たしかに上映しているプログラムは「星×○○」のかけ合わせが特徴的だ。例えばハワイやオーストラリア、ウユニ塩湖などの星空を楽しめる「星の旅 特別ロングバージョン」は、星と世界各国の美しい風景を掛け合せた内容となっている。

また、現在上映されている「猫星夜 -ある日の星空のおはなし-」は星と猫がかけ合わさったプログラム。アニメーション作品で、人気声優の櫻井孝宏が猫を演じ、場内にはマタタビのアロマが香る、猫好きにはたまらない内容だ。

このように星以外の要素が組み合わさることで、それまで星に興味がなかった層も楽しめる作品に仕上がっているのだ。

猫好きにはたまらない「猫星夜 -ある日の星空のおはなし-」

実は日本国内のプラネタリウムは自治体が運営するものがほとんどで、民間で上映館を持つのは同社だけ。配給されたプログラムを上映するのではなく、自分たちで一から作るため、アイデアを実行に移すことができる。それがコニカミノルタプラネタリウムの強みであり、魅力だ。

アーティストやアニメとのコラボも! キャスティングへのこだわり

コニカミノルタプラネタリウムの施設で上映されるユニークな作品の数々は、嶋津さんを含めた10人ほどのチームで企画立案しているものがほとんど。全体的なプロデュースは嶋津さんが所属するチームの仕事だ。

上映プログラムはおよそ1年で切り替わるため、毎年、新作を生み出しているとのこと。チームで作っているとはいえ、アイデアが枯渇することはないのだろうか?

「作品づくりのインスピレーションは日々の中に転がっています。たとえば『星の美術館』という作品は、チームメンバーのひとりが美術館に行ったときに音声ガイドがおもしろかったことから着想を得たもの。日常の中で感じたものから『これをプラネタリウムにできないか』とイメージを膨らませます」

音声ガイドを選べる『星の美術館Ⅱ』

現在上映中のプログラム『星の美術館Ⅱ』は、観客が自分のスマートフォンで音声ガイドを選べるという実験的な仕様だ。音声ガイドを担当しているのは、アン ミカ、磯村勇斗、大塚明夫、四千頭身の4組。同じ星空を異なる個性のナレーションで楽しめる、何度でも行きたくなる内容になっている。

嶋津さんはどのような意図でこの4組をキャスティングしたのか?

「バラエティに富んだラインナップを意識しました。アン ミカさんのナレーションは超ポジティブで元気になる内容、磯村さんのものは臨場感あふれる神話の朗読、大塚さんのナレーションは真面目な解説、四千頭身さんの音声ガイドはひたすら笑える内容に。“同じ星でもいろんな見方ができる”というのが裏テーマなんですよ」

同社の作品は、俳優や声優、アーティストなど幅広いキャスティングが特徴的。人選について、嶋津さんは「作品の世界観に合致している人をブッキングします」と言う。

テーマは「明日、誰かに話したくなるプラネタリウム」

「子供の頃から星とギリシャ神話が好きで、大学も天文の研究室に入った」と話す嶋津さん。星にまつわる仕事をしたいと思ったものの、就活の時期にプラネタリウム業界での求人がなく、テレビ業界で20年ほど仕事をしていたという。

「テレビ番組のプロデューサーをしていたとき、コニカミノルタが関係している科学館のプラネタリウムを見て、『今のプラネタリウムってこんなに進化しているのか!』と衝撃を受けました。それで思い切って転職し、20年ぶりに星の世界に戻ってきたんです。同じ映像とはいえテレビとプラネタリウムでは、お客様が求めるものも作り方もまったく違うので、転職した当初は驚くこともありましたが、今はかなり好きなことをやらせてもらっています」

そんな嶋津さんの代表作のひとつが「Bar PLANETARIA」。お酒と軽食を楽しめるプラネタリウムバーだ。

毎週金曜の夜に有楽町のプラネタリアTOKYO・DOME1で開催中

「私の欲望を具現化したのがこのバーです(笑)。ずっと、お酒を飲みながらぼーっと星を眺めたかったんですよ。飲食OKのプラネタリウムはプラネタリアTOKYOが初なんですが、オープンするときから『絶対にバーやりたいです!』と言い続けて実現しました」

都内にも「プラネタリウムバー」を謳うお店はあるが、家庭用プラネタリウムで天井に星を照射するのと本物のプラネタリウムとではわけが違う。こんなにも広大なスペースで満天の星々が見られるバーは、おそらく日本でここだけだろう。

「「Bar PLANETARIA」に欠かせないカクテルは、写真映えはもちろん、味にもこだわった自慢のカクテルです。おいしいカクテルを片手に美しい星空を眺められる至福のひとときを過ごしていただけます」

インスタ映えとおいしさを両立!

身も心も癒されること間違いなし。(写真はイメージです)

さらに嶋津さんは「エロいプラネタリウムをやったこともあります!」と続けた。

お子さんに質問されたら困るようなワードもじゃんじゃん出てくる

「ギリシャ神話とエロは切っても切り離せないもの。それまではオブラートに包んでいましたが、いつかはエロと向き合わざるを得ないと思い、この作品を作りました。R18指定にさせていただいて、ドームもピンク色にして。おかげさまでとても話題になりました。今後もおもしろくて知識欲を満たせる作品を作っていきたいと思います」

最後に、プラネタリウムをプロデュースする上で大切にしていることを伺った。

作品をプロデュースする嶋津さんのモットーは「明日、誰かに話したくなるプラネタリウム」だ。
「見た人がなにかしらを感じ取って、『こんなプラネタリウムを見たんだよ!』と思わず誰かに話したくなるような、そんな作品を目指しています。その日の空を説明することも大事だけれど、もっとさまざまな切り口で星の楽しみ方を提案したいなと」

たしかに『R18オトナ♡プラネタリウム』などは、見たらつい人に話したくなるだろう。その話題性も、嶋津さんが意識的に作りだしたものだったのだ。

そのほかで大切にしていることを尋ねると、「“大人が落ち着ける空間づくり”を意識しています」との答えが返ってきた。

「もちろんお子様にも楽しんでいただきたいですが、プラネタリウムはリラックスや癒しを求めてくる大人のお客様も多いので。特にプラネタリアTOKYOは有楽町という土地柄か、仕事帰りに来場される方も多いんですよ。私も、頑張った日は仕事終わりに星を眺めてリフレッシュしています。ゆったりと一人の時間を大切にできるのもプラネタリウムの魅力のひとつなので、そこは大切に守っていきたいですね」


取材・文/吉玉サキ
撮影/於ありさ

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