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「旅が気分をアゲるものなら二拠点暮らしは心を鎮めるもの」60歳男性が「もうひとつの地元」に茅ヶ崎の築60年マンションを選んだ理由

集英社オンライン / 2024年1月25日 17時1分

コロナ禍を経験したことで、ライフスタイルや価値観が変わった人は少なくない。必ずしも都市に住む必要がなくなったり、自然豊かな場所でリラックスする時間が大切に思えたり。そうした人たちに都市と田舎、あるいは郊外を行き来する「二拠点生活」が注目されている。今回紹介するのは、服飾ジャーナリストの山本晃弘さんのスタイル。平日は東京都目黒区、週末は神奈川県茅ケ崎市と、二つの拠点で暮らす実感を聞いた。

コロナ禍の影響で、都心以外での時間、潤いのようなものが欲しくなった

山本晃弘さんは、新聞や雑誌、ウェブサイトなどでファッションの情報を発信する編集者・ジャーナリストだ。

コロナ禍前は、多くの会社や人と一緒に対面で仕事をする多忙な毎日で、夜は会食も多く、マスコミ人らしい華やかな生活を送っていた。



ところが、コロナ禍になり、それが一転。対面での仕事も会食も自粛という期間には、東京・恵比寿の事務所と、目黒区の自宅マンションを行き来するだけとなり、都心以外で過ごす、潤いのようなものが欲しくなった。そこで思い出したのが、海だった。

山本晃弘さん

山本さんは20代後半から30代のころ、サーフィンが趣味だった。平日は夜遅くまで都心の出版社に勤め、週末は神奈川県の鵠沼海岸まで車で通い、波乗りをした。

編集者として平日にガチガチになった頭も体も、週末の海に行くと解放された。海に行くと決めれば、そこで会う仲間たち同様、天気のことしか考えなくなる。波が来ているか、風は吹いているか。そこでは流れる時間も違い、スローダウンできた。

しかしその後転職し、新しい職場環境で生活はますます多忙に。家族構成も変わる中、いつしかサーフィンにも行かなくなっていた。

それがコロナ禍により、都心で一人、静かな生活をしばらく続けるうち、「また海で過ごしたい」という思いが甦ってきたのだという。

編集者である平日とは違う時間の流れや価値観をくれる、海の見える小さな部屋を探そう。そう思い立ったのは、59歳になる2022年のことだった。

山本さんの事務所。恵比寿の事務所には、自宅から徒歩で通勤

サザンビーチの目の前、築60年近いマンションに一目惚れ

場所は自宅の目黒から夜なら車で1時間程度で行ける、神奈川県の湘南海岸がいい。ビンテージマンションの情報も多く掲載されている不動産のサイトを参考に、葉山町や鎌倉市などの物件も見たが、予算内では駅からの便が悪いか、海からは遠い部屋しかなかった。

だが、茅ケ崎のサザンビーチの目の前にある、築60年近いマンションの1室が目に留まった。コンビニもファミレスも至近距離で、駅から徒歩16~17分。バスもある。週末を過ごす部屋として、35㎡というサイズ感もちょうどよかった。

二拠点目は、神奈川県茅ケ崎市サザンビーチ目の前の部屋

古いマンションだが、内装はリノベーションされて真新しかった。大家さんはその部屋の工事を手掛けた工務店で、内覧用に展示していた家具も「どうぞ使ってください」。まさに渡りに船だった。

「茅ケ崎駅前の不動産屋さんに案内してもらった1軒目。二拠点の物件探しだと理解されなかったからか、『ここは古いし、狭いですよ。横浜みなとみらいの高層マンションはどうですか?』とお勧めされたけど、私自身はサイトを見て、めちゃピンときてたんだよね。

いざ内覧してみると、3階の部屋から道路を隔てて海で、屋上からは左手に江の島、右手に富士山が見える。ここいいじゃん!って、1軒目で即決しました」(山本さん・以下同)

茅ヶ崎のマンション屋上からの景色。湘南国際マラソンも見物できる

以来、賃貸契約して約1年半。来られる週末は、金曜夜か土曜朝に茅ケ崎に着き、日曜夜か月曜朝に東京に戻る。夜中なら車で片道50分だ。できればこれから、週に3日間滞在できるようにしたいという。

「旅行が気分をアゲるものだとしたら、二拠点生活は気分を鎮めるもの」

茅ケ崎での週末の過ごし方について聞いてみた。

「特に何をするでもない、着いてすぐ昼寝するときもあるし(笑)。やることの選択肢が少ないのが、のんびりできてまたいい。いつも行く蕎麦屋さんで蕎麦を食べて、図書館で本を借りてひなたぼっこしながら読んで、海を散歩するぐらい。

あとは自転車で近所の農園に行って新鮮な野菜を買って料理したり、東京へ持って帰ったりするのも楽しみ」

茅ケ崎の隣町にある「清水農園」で新鮮な野菜を買うのも楽しみの一つだそうだ

まだサーフィンを再開することはできていないというが、その目的もほどなく叶いそうだ。

何ともうらやましい、海の目の前の二拠点目ライフだが、ホテルに泊まる旅行ではなく、家賃の支払いが生じる賃貸契約を選んだのはなぜなのか。

「私は岡山出身で、中学高校のときはずーっと自転車生活。どこへでも自転車で行っていたそのころのような、なつかしくも気楽な感覚が茅ヶ崎にはあるね。岡山の実家がなくなった私にとって、ここは『もう一つの地元』感がある貴重な場所で、旅行では持ちえない感覚なんです。

ビーチサンダル履いて床屋さんへ行って、居眠りしながら散髪してもらったり、中学生に戻ったようでもあるし、引退して爺さんになる練習をしているようでもあり(笑)。旅行が気分をアゲるものだとしたら、二拠点生活は気分を鎮めるもの、かな」

「清水農園」に行ったらいつも看板ポニー、シロちゃんにご挨拶

自分サイズの二拠点ライフの始め方

これから二拠点生活を始めてみようという方へのアドバイスをもらった。

「『何かやりたい』と思っていることがあるなら、やってみたほうがいい。二拠点生活だったら、あまり綿密に考えても、いざやってみないとわからないことが多いから、写真が載っている賃貸物件サイトを参考にイメージを膨らませて、ピンときたら実際に見に行ってみる。

条件じゃなくて、ピンとくることが大事なのは、ある意味恋愛と同じ。実際会ってピンとくるかどうかで決めればいいんじゃないかな」

茅ケ崎ではどこでも自転車で。「中学生に戻ったような、引退したお爺ちゃんのような(笑)」

直感を大事に、やりたいと思う何かがあるなら行動してみる、ということか。
二拠点生活は当然ながら、余裕があって成り立つものだが、還暦近くまで猛烈に働いてきた山本さんにとって茅ケ崎は、ご褒美のような「もう一つの地元」なのだろう。

真夏や正月といったハイシーズンは、海の見えるホテルは予約困難で、オフシーズンの何倍もの料金になるが、部屋を持っていればいつでも気軽に行ける。賃貸する二拠点目なので、新しさや広さなど多くは求めなくてもいい。

目的を明確にして、求めるものを絞り込んでいけば、自分サイズの二拠点ライフを実現できるのだろう。

ハイシーズンの夏にも、茅ケ崎漁港に上がる花火を屋上から手軽に楽しめる

取材・文/中島早苗

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