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映画のタイトルを変えさせた前田敦子の演技「私は嘘がつけない」…難役挑戦でつかんだ「初めてのニュアンス」とは?

集英社オンライン / 2024年2月8日 11時0分

2024年2月9日(金)から全国公開の映画『一月の声に歓びを刻め』は、監督の三島有紀子氏が47年間向き合い続けた「ある事件」をモチーフに、「性暴⼒と⼼の傷」という難しいテーマに挑んだ作品だ。今作に出演する前田敦子に出演のキッカケや撮影の舞台裏について聞いた。

「すごく難しいことを自分の中で負っている」

──ある日、三島有紀子監督を応援していらっしゃる作家の桜木紫乃さんより映画「『一月の声に歓びを刻め』を是非取り上げてください!」とご連絡をいただいたんです。前田敦子さんも出演されていることを知って早速拝見し、本日の運びとなりました。三島監督と出会いはどのようなタイミングだったのですか?

三島監督の作品を拝見したことが今回の作品へ出演するキッカケのひとつではありましたが、実は私自身、何年も前から、監督とは知り合いなんです。本作以外にも、ずっと前からとある作品をご一緒しましょう!と言ってくださっていて。



三島監督は俳優たちからの信頼が厚くて、周囲への愛が本当に深い方で、今回の作品にもぜひ参加したいと思ったんです。

──本作では三島監督ご自身の47年前のとある事件がベースに描かれている部分がありますが、当初からその内容もお聞きになって?

そうですね、衣裳合わせのとき、監督自らの想いが書かれた脚本をいただきました。自らの身を削るようなテーマの作品を映画にするだけでも大変な勇気が要るし、ひとつの奇跡みたいなものも感じました。

当初は、「今の私がそれに応えられるか?」という気持ちが正直すごくありました。もしも、いい形で期待にお応えできなかったら、それこそ引き受けたことに対して一番失礼なので。

“やっぱり無理かも!?“って心が折れちゃったら、それこそあってはならないことだなという葛藤もありました。

それでも監督は待ちますと言ってくださったんです。監督が私に何かを託そうとされてる、その静かな情熱がすごく伝わってきました。

本作は3つの場所で描かれた物語で構成されているのですが、私の出演した大阪のロケでは、監督は涙を流しながら、淡々と説明してくださったんです。

監督は“(自身の体験を)人に話せた瞬間に映像にできる”とおっしゃったのですが、確かに人に話せるってそういうことなんだなと感じました。

だからこそ、何かその勇気みたいなものに対して少しでも役に立てたらいいなという思いに至って。ここは精一杯取り組まなくてどうする!ってすごく思いましたね。

──本作は3つの島が舞台ですが、ご自身で作品を見られたときの印象はどうでしたか?

自分の出演シーンしか知らなかったので、試写で全体を拝見したときにはすごく感動しました。カルーセル麻紀さんの一人芝居から始まり、哀川翔さん演じる父親の葛藤、すごく心に残りました。

映画の始まりも、極寒の北海道の大地が気持ちよく、過酷そうな撮影現場の空気も伝わってくるのですが、何だか清々しい気持ちになれる始まりだと思いました。

──ある意味、ドキュメントを観ているかのようで映画とは思えませんでした。

本当ですか? ありがとうございます! 私は演じていて、常にリアルさを出したいと思ってるんですが、同時にすごく難しいことを自分の中で負っているなとも感じています。

ふだん出ている作品と全然違うアプローチができた

──クランクイン前に準備されたことは?

常々、特別な準備をしない状態でのアプローチを心がけています。準備しちゃうと勝手にそのレールに沿っちゃう懸念があるので。そうなると何か違和感があるんですよね。

もしかしたら準備万端のほうがきれいにまとまった作品になるのかもしれない。でも私は、なぜかその綺麗なものにずっとなじめないんです。追い求めてるものが結構、困難な方向を選んでいるのかもしれません。でもいつかそれを、一つのもの、一つの形として私なりにつかみきれたらいいなと思ってるんです。

──撮影中はいかがでしたか?

今回の映画は『一月の声に歓びを刻め』というタイトルなのですが、発声的に声のボリュームを気にしないでいい作品って実はあんまりなくて。技術的な話になりますが、私の場合、ささやきのような発声で音声さんが聞き取れないから、何度もテイクを重ねることがときどきあったこともあり……。

でも、今回の役に関しては、特にそれを求められることがなかったんですね。発声としてボソボソってなってしまっても監督がそれでいいとしてくださったので、ある意味、出ている作品と全然違うアプローチができたなとは思っています。

それらも含めて本当に監督の懐の広さを感じています。普通だったらウィスパーボイスみたいな表現をすると最初から止めに入ると思うんですよ。「もうちょっと声張って」とか「アプローチ変えて」って言われると思うんです。

私、演じる役によって、毎回声の大きさとか喋り方の微妙な調整は感覚的に現場でやってみないとわからなくて。でも、今回演じた、れいこに関してはマックスまでの声を張らなかったというか。それもやってみて初めて自分でつかんだニュアンスでした。

多分、監督もそのテンションを察知され、きっと「これでいい」と思ってくださり、本作の映画のタイトルにしても、それらの演技の色味をふまえて考え直してくれたようでした。

──“〜声に歓び〜”ですもんね。映像でも、ジム・ジャームッシュ作品などを彷彿とさせるようなモノクロームの映像がまた何とも言えない効果でした。

そうなんですよ。モノクロかカラーか、監督はギリギリまで悩んでいらっしゃいましたが、本当に素敵なスパイスになっているんですよ。

監督の演出を一度味わうと、そりゃあ心から大好きになるわっていう感覚で、本当に彼女は愛に溢れた映画人だなって思っています。

彼女の頭の中には果たして何本の映画が入ってるんだろう?って。撮る度ごとに「このシーンはあの映画のあそこのスパイス」とかってすぐに思いつく方なので、なんだか映画の先生みたいな存在だなとも思ってます(笑)。

一人で前を向いて歌うとか得意じゃない

──ずっとトップアイドルで、アイドルって片方で一つの仮面を被るようなイメージもありますが、何かスイッチのようなものはあるんですか?

全然ないです。当時はメンバーのみんなと一緒だから、そういう風に見えた瞬間もあったかもしれませんが、一人だったら確実にアイドルにはなれてないですし、私はそんなとこにいなかったと思うんです。

だから一人で何かやるっていうのは未だに慣れないんです。役者はみんなで、それもチームでやるものですから。でも、チームでやっていたとしても一人舞台とかは絶対できないと思います。

相対する人がいると安心して何かを創るということを楽しめるのですが、一人で前を向いて歌うとか得意じゃないんです。

ふだん、テレビに出ても、例えば今このインタビューで喋ってても、友達の前でも家族の前でも、私は多分このままなので、噓がつけないんです。不器用なのだと思います。

──撮影を通してご自身の成長を感じた部分はありましたか?

撮影期間は1週間もなかったんですが、凝縮された密な現場でしたので、集中力が鍛えられました。

──本作を待ちわびるファンへメッセージを!

監督自身の47年前の事件がベースになっているとはいえ、純粋に映画として楽しんでいただける作品だと思います。

3つの場所で撮られた映像を綴った作品なのですが、それぞれみんなが自身と向き合い、そしてある意味、彼らが自分を解放するような瞬間があって、それがどこかで気持ちよく観ていただけるんじゃないかなと。

そのとき自分の心に何が残ったのか?みたいなご自身の気持ちを大事にしていただきたい作品です。観た方がそれぞれご自身での答えを見つけていただけたらと願います。

取材・文/米澤和幸(lotusRecords) 写真/殿村忠博 
ヘアメイク/高橋里帆(HappyStar)、RIHO TAKAHASHI (HappyStar) 
スタイリング/有本祐輔(7回の裏)Yusuke Arimoto (7kainoura) 
衣装クレジット/・トップス ¥45,100 GANNI /ガニー (GANNI /ガニー)
customerservice@ganni.com ・スカート ¥35,200 GANNI /ガニー (GANNI /ガニー)
customerservice@ganni.com ・ピアス(ストローラーPR) ¥20,900 Rieuk / リューク (Rieuk / リューク) info@rieuk.com ・リング(ブランイリス) ¥33,000 ブランイリス トーキョー (ブランイリス トーキョー) 03-6434-0210

映画
『一月の声に歓びを刻め』
2月9日(金)テアトル新宿ほか全国公開

© bouquet garni films

出演:前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔、坂東龍汰、片岡礼子、宇野祥平、原田龍二、松本妃代、とよた真帆

脚本・監督:三島有紀子

オフィシャルサイト:https://ichikoe.com/

【あらすじ】
北海道・洞爺湖。お正月を迎え、一人暮らしのマキの家に家族が集まった。マキが丁寧に作った御節料理を囲んだ一家団欒のひとときに、そこはかとなく喪失の気が漂う。マキはかつて次女のれいこを亡くしていたのだった。それ以降女性として生きてきた“父”のマキを、長女の美砂子は完全には受け入れていない。家族が帰り静まり返ると、マキの忘れ難い過去の記憶が蘇りはじめる……。
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