数年前に生まれたばかりのロックンロールが全米中のティーンエイジャーを夢中にさせていた1959年ごろ。そんな2月3日未明のこと。
悪天候の中を強引に飛び立った小型飛行機が離陸して間もなく、吹雪のために方向を失ってアイオワ州のトウモロコシ畑に墜落した。翌朝になって発見されると、パイロット1名と乗客3名全員がすでに死亡していた。
命を落としたのは、エルヴィス・プレスリーに次ぐロックンロール・スターだったバディ・ホリー、メキシコの民謡をロックンロール調にアレンジした『ラ・バンバ』のヒットで知られるリッチー・ヴァレンス、そして「ビッグ・ボッパー」の名で知られたJ.P.リチャードソンの3人である。
この痛ましい犠牲者たちはバディが22歳、ビッグ・ボッパーが28歳、リッチーにいたっては17歳という若さだった。
バディ・ホリーは、ビートルズやローリング・ストーンズに影響を与えた人物としても、今ではロック史で最も影響力のあったアーティストの一人として記憶されている。
ジョージ・ルーカス監督の映画『アメリカン・グラフィティ』の中で、「バディ・ホリーが死んでロックンロールは終わった」というセリフがある。アメリカではそう思った名もなき若者たちが無数にいたのだ。