天草旅行も終わり、親の家に戻り東京に帰る支度をしていると、いつものようにエプロン姿の父がお茶を飲んでいた。父の担当家事、食器洗いを終えてくつろいでいるのだ。
本当はどこにも行かず自分専用のソファに座って、この家から窓の向こうの海を眺めたり、テレビを見ていたいのだろう。それほど父は自分の建てたこの家を愛している。
「やっぱり我が家が一番落ち着くねぇ」と幸せそうに父が言った。すると母は、「そりゃそうだけど、時々よそに連れて行ってもらわないと、私はもたないのよ」と反論。母のストレスは極限のようだ。
父はその意味が理解できないようで、大げさだなと笑った。その後、いつものようにメガネがないと、あちこち探し始め、母が重たい腰を上げた。