暑い日に、拭いても拭いても汗が出る。次第に頭痛、めまいも……。そんな症状が出たら要注意だ。
古い話になるが、私が大学の卒業研究で、九州にある大規模造成地の地質調査をしていたときのこと。
真夏で造成地には木陰も建物もなく、地面からの照り返しも強かった。1日目の午前中は、汗をぬぐったタオルを絞ると水滴がボタボタと落ちたものの、午後になると汗をほとんどかかなくなり、2日目からは激しい頭痛に襲われた。
当時の私は、帽子をかぶっていれば大丈夫と考えていたが、熱中症の診断基準に当てはめると、汗をかかなくなるのは重症、頭痛は中等症だ。知らないというのは恐ろしいことで、もう少しで救急車で搬送されるところだったのだ。
熱中症は体温が上昇した際、体の体温調整機能がうまく働かなくなり、体内に熱がたまることで発症する。軽症の場合、症状としては、めまい、たちくらみ、筋肉のこむら返りなど。高温多湿の環境下でこのような症状があらわれたら、熱中症を疑ったほうがいい。
対処法は、涼しい場所に移動し、濡れたタオルや氷などで体を冷やすこと。吐き気、頭痛がある場合は、医療機関を受診した方がよいとされている。
環境省の資料によると、熱中症は10代は運動中、成年の男性は作業中、乳幼児や高齢者、40代以上の女性では住宅内か庭で発症することが多いようだ。
桐蔭横浜大学大学院の星秋夫教授の論文によれば、医学者で陸軍軍医の森林太郎らが1897年に出版した書籍の中で、「熱中症」という言葉が初めて使われたという。ちなみに森林太郎とは文豪、森鷗外の本名だ。
この書籍には「夏の行軍では軍医はまず気温や湿度を測定し、危ないと判断したときは行軍を中止するか……」という記述がある。つまり熱中症は100年以上前から知られていたのだ。