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義理チョコ文化消滅で縮小するバレンタイン市場…グリコ、明治、チョコレートメーカー各社の対策は?

集英社オンライン / 2024年2月14日 8時1分

バレンタインデーに対する消費者意識に変化が起こっている。かつて職場や学校で当たり前のように手渡されていた、「義理チョコ」市場が縮小へと向かっているのだ。バレンタインデーのある2月はチョコレートの月間平均支出額の3倍近い消費が生じる、販売会社にとっては、いわば稼ぎどき。義理チョコ文化の消滅はマーケティング活動の転換点にもなっている。

意味を見いだせない文化が消滅の危機に

キャリアの研究などを行うライボは、義理チョコに関する調査結果(「2024年 バレンタイン実態調査」)を発表した。その統計によると、2024年2月に職場の人にバレンタインの菓子を渡さないとの回答は89.3%に及んでいる。



今や約9割の人は義理チョコを渡す意向がないのだ。

職場の人へバレンタインの菓子を渡したという割合は、コロナ禍前の2019年が14.4%。2023年は4.8%まで減少している。コロナ禍の2021年でもこの割合は6.9%あった。オフィスや学校に行くのが当たり前になって、義理チョコを渡す機会は今や増えているはずだ。義理チョコ文化そのものの意識に変化が生じている。

渡さない理由として、「特にバレンタインを気にしていないから」との回答が3割に及んでいる。また、準備や時間が面倒、お金がかかるからという回答も同様の割合を占めた。

※総務省「家計調査」より筆者作成

義理チョコとホワイトデーによるお返しは、職場や学校の人たちとの信頼構築やコミュニケーションを活発化させる意図が込められていた。しかしながら、一連のやりとりが何らかの成果として実を結ぶわけでは決してない。

コロナ禍は組織内でのデジタル化や効率化を急速に推進したが、そこに意味を見いだせない義理チョコ文化も淘汰されたと見ることができる。これは飲み会文化、いわゆる「飲みニケーション」が消滅しつつあるのと似た動きだろう。

コロナが消費者の背中を押したか?

義理チョコ文化の消失は、意識調査だけでなく支出額からも見出すことができる。

2人以上の世帯が、チョコレートに支出する月間平均額は500円程度だ。2020年までは、2月のその支出額が平均の3倍近い1400円前後に跳ね上がっていた。しかし、2021年には1200円台まで縮小している。2023年に入っても支出額は1307円であり、2020年と比較すると100円程度少ない。

※総務省「家計調査」より筆者作成

本格的なコロナ禍を迎える直前の2020年2月のチョコレートの支出額が1409円で、2015年以降最も高くなっている。総務省「家計調査」の推移を見ると、バレンタインデーがある2月のチョコレートの支出額が年を重ねるごとに多くなっていた印象を受ける。しかし、実際にはそうではないようだ。

各年2月のチョコレートの支出額から、その年の平均支出額を引いた統計がある。絶対額の場合、物価高による買い控えなどの影響があるため、本質的な消費動向は見えづらい。しかし、平均値からのズレであれば、その年のチョコレートの消費全体に対する、消費者の2月の重要度が見えてくる。

※総務省「家計調査」より筆者作成

2020年は、2018年・2019年に比べると確かに上昇しているものの、2016年からの推移を比べると下がり基調だ。すなわち、消費者の義理チョコを忌避する意識はじわじわと浸透しており、コロナ禍が決定的となった可能性がある。

なお、2023年のカカオ豆の価格は1キロあたり3.3ドルだ。2022年までは2ドル台で推移していた。カカオ豆の価格高騰は著しく、円安も相まってチョコレート価格も上昇している。
チョコレート単体の支出額が下がる要因は少なく、本命チョコの需要が失われていないと仮定すると、義理チョコの数量が減少していると考えるのが自然だ。

手軽に贈れるアイテム商品が痛手

業績に異変が生じ始めているのが、ポッキーを販売する江崎グリコだ。

グリコは2019年度1-6月のチョコレートの売上高が232億円、7-12月が248億円だった。上半期の構成比率が48.4%、下期が51.6%である。なお、グリコは2019年に決算月を3月から12月に改めている。この数字は12月期に修正したものを基にしている。

2022年度の売上構成比率は上期が47.4%、下期が52.6%だった。2月が含まれる上期の売上構成比率が下がっている。

この傾向は、明治ホールディングスには見出すことができない。明治の2019年度4-9月のチョコレートの売上高は396億円、10-3月が575億円だった。上期が40.8%、下期が59.2%である。2021年度は上期が41.0%、下期が59.0%だった。2月が含まれる下期の比重はほとんど変わっていない。

今月、明治は同社が運営する「チョコレート大作戦」というXアカウントでミルクチョコレート400枚(20㎏)、リッチストロベリーチョコレート870枚(40㎏)を使って手作りする超巨大アポロのレシピを公開し、X(旧Twitter)で話題となった。

「チョコレート大作戦」のXアカウント(@chocodaisakusen)より

この投稿はネタとして投稿したのは間違いなさそうだが、明治の強みはチョコレート菓子を手作りの材料にできる点にある。明治は、公式ホームページに板チョコなどを使った数多くのレシピを掲載している。

婚活に特化した撮影サービスを提供するアルファブルは、Z世代ほどバレンタインの贈り物として手作り志向が強いことを意識調査(「Z世代の意識調査」)で明らかにしている。その材料を提供できる明治は、時流に乗ったマーケティングが可能なのだ。

アポロやきのこの山も、手作り用の商品を販売している。子供が家族に贈るには最適だ。

一方、グリコの主力はポッキーだが、アレンジを加える隙がない。かつてポッキーはバレンタインに向けたテレビCMを打っていたが、近年は抑制気味だ。ポッキーは手軽な義理チョコアイテムだった。消費者意識が大きく変化する中で、マーケティングも改めているのだろう。

義理チョコ文化消滅とともに危惧されるのが、ホワイトデーのお返しだ。3月14日にキャンディーやマシュマロやホワイトチョコレートを渡すのが当たり前だったが、その市場も縮小に向かう可能性が高い。

取材・文/不破聡

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