名曲『行くぜっ!怪盗少女』『走れ!』『全力少女』『オレンジノート』はどうやって生まれたのか? FKDが語るももいろクローバー 聞き手:吉田豪
集英社オンライン / 2022年6月4日 10時1分
アイドル戦国時代のキーパーソンの1人でありながら、長らく表舞台から遠ざかっていた”FKD”こと福田幹大が、10年ぶりにメディアに登場! ももいろクローバー、ハロー!プロジェクト、ぱすぽ☆、Doll Elementsといった有名アイドルグループと関わり続けてきた自身のアイドル業界歴を語り尽くす。プロインタビュアー・吉田豪による、福田幹大インタビューの第2回(全4回)。
ももクロ以前の音楽キャリア
――(吉田豪)というか当時めちゃくちゃ若かったんですよね。
FKD 25歳前後ですね。いま思うとホントなんで会社を辞めたんだろって(笑)。
――『未来へススメ!』ぐらいのときには、もう会社辞めてて。
辞めてましたね。あのときはスターダストからの小遣いと、あと平日たまにバイトしながら生きてましたね。
――そして、平日の本職がなくなったから楽曲にも関わるようになって。
そうですね。もともとずっとアマチュアバンドやってたんですよ。
――ジャズでしたっけ?
そうです。ビッグバンドで鍵盤弾いてて。そのあと地下アイドルのバックで鍵盤弾いたり。
――そんな経験もあるんですか!
あるんですよ。桜川ひめこのうしろでキーボード弾いたり。
――えぇーっ!? 『アキバに行くのん!』の? ああ、秋葉原つながりだ。
そうです。そういうのをやったり。で、遊びでバンドやってたんですけど、そのときのボーカルがでんぱ組.incのえいたそ(成瀬瑛美)だったんですよ。
――そうだったんですか!
これ言っていいのかな? だから当時からえいたそのことを知ってて、何年か経ってTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)で会うわけですよね。基本そのときは「FKD」とか「福田さん」って呼ばれてたんですけど、バンドのメンバーからは「幹大さん」って呼ばれてたんですよ。
えいたそにTIFの裏で会ったとき、「あ、幹大さん!」って呼ばれて、それをぱすぽ☆のメンバーに見られて。「おまえどこで女を引っかけてんだよ!」みたいに言われて(笑)。「違うんです、昔からの知り合いなんです!」って。
音楽ディレクターの道へ
――つまり、音楽知識はちゃんとある人なんですね。
でも、見よう見まねでしたね。当時のももクロってホントお金なかったんですよ。MVも撮れないから、川上さんがハンディカメラ持ってきて公園で撮影したり。そんなことばっかりやってて、当然ディレクターなんていないんですよ。会社のスタジオはあるけどディレクターがいないから、「おまえが録れ!」って言われて。
2015年には、ロサンゼルス・Microsoft Theaterで開催されたAnime Expoにも出演したももいろクローバーZ。 Tommaso Boddi/WireImage/Getty Images
――最初に担当したレコーディングがmihimaru GTのカヴァー『ツヨクツヨク』で。
いまは本家より有名になっちゃった『ツヨクツヨク』ですけど、あのときは「これ、いい曲だからやろうぜ」って川上さんか藤下(リョウジ、現在スターダストプロモーション代表取締役社長)さんのノリで。当時、Mihimaru GTさんはスターダストと業務提携してたんですよね。
――そういうつながりだったんですね。
そこから先は当面、僕がレコーディングをやってました。
――実は初期の重要な曲にガッツリ関わってるわけですよね。
そうですね、『最強パレパレード』も僕が録りましたし、『未来へススメ!』からずっと、『Dream Wave』(飛鳥凛のカヴァー)も録った記憶あるし。あのへんのカヴァー曲はほとんど録ってます。よくやってましたよね(笑)。愛ちゃんのレコーディングを1回か2回見学させてもらって、こうやって録るんだって学んで、その翌月にももクロでやってましたから。なつかしいですね。
ももクロ初期代表曲の誕生
――名曲『走れ!』や『全力少女』も手掛けて。
全部やってましたね。
――『オレンジノート』に至っては作詞まで担当してましたね(クレジットはツキダタダシ名義)。
やっちゃってましたね。それで2010年にインディーズからメジャー(ユニバーサル)に上がることになったんですよ。そしたらもう僕やることないじゃないですか。だからクビだと思ってたら、「おまえもユニバーサルに行け」と言われて。翌週には「ユニバーサルミュージックA&R」っていう名刺を持たされてました。
――急にあんなデカい会社に入ることになって。
ホント完全おのぼりさんですよね。アイドルをちょっとやってただけのド素人がいきなりそんな偉そうな名刺を持たされて、「おまえが全部を仕切るんだ! アートワークをやるんだ!」って言われて。
――そんなのやったことないですよっていう(笑)。
わからんぞ……と思いながら、ホント見よう見まねで。「とりあえず曲を集めろ」と言われてコンペをして、残った曲が『行くぜっ!怪盗少女』『走れ!』『全力少女』『オレンジノート』の4曲でした。
――すさまじいクオリティのコンペじゃないですか!
どれをリード曲にしてデビューするんだって話で揉めたのはめちゃくちゃ覚えてますね。これ川上さんに絶対言いたいんですけど、『怪盗少女』をいいって最初に言ったのは藤下さんなんですよ。
――お、さすが理事長!
「これだ!」って言ったんですけど、僕と藤下さん以外、誰もいいって言わなかったんですよ。いまでも川上さんの第一声を覚えてて、「すげえいい曲だけど、これライブでやるぐらいだよねー」っていうのが川上さんの評価で、すげえヘコんだんですよ。でも、なんやかんやでそれがリード曲になって。
――メジャーデビューのリード曲が『怪盗少女』になって、ももクロの運命がそこから変わっていくわけですけど、アニメ好きのFKDさんからしたら『ルパン三世 カリオストロの城』オマージュの曲はハマって当然だったんでしょうね。
そうですね、どストライクの曲が上がってきて。作曲のヒャダインもこの曲に懸けてくれてて。アレンジャーはもともと違う人だったんですけど、「頼むから俺にやらせてくれ、金いらないから」って会社に乗り込んできて。
当時はヒャダイン=前山田健一じゃなかったんですよ。彼の「実は同一人物です」って発表も、プロモーションのためにやってくれて。それで出来上がったのが『怪盗少女』ですね。
――ボク、ヒャダインさんからデモを聴かせてもらって、曲がどうやって出来上がっていくのかって流れもけっこう知ってるんですよ。
最後の最後の話って覚えてます?
――1回歌詞を変えさせられたときに戦ったみたいな話は聞きました。
戦いましたね。「いっちょ まるっと」が「いっちょ ソバット」に変わったときも、川上さんにいきなり会社に呼ばれて、「ここ『まるっと』を『ソバット』にするから」って言われて。「リピート・アフター・ミー。いっちょまるっと」「いっちょまるっと」「いっちょソバット」「いっちょソバット」「イエス、帰れ」って言われて、「え、これで!?」みたいな感じで帰されて。
きっかけは福山雅治
――どうしてもプロレス要素を入れたかった。
そうですね、「なんかわかんないけどソバットで」って。そのときにカップリングが『走れ!』で、『走れ!』は歌詞ができなくて。何回も何回もユニバーサルミュージックの偉い人に「ダメだダメだ」って言われ続けてたんですよ。
いよいよ明日レコーディングっていう日の夜中に、初めてmichitomoさんのところでふたりで歌詞を考えたんです(クレジットはINFLAVA名義)。そこで出た歌詞っていうのが、「好きなんだ好きなんだ とにかく好きで好きなんだ 好きで好きで好きで好きで好きでキスしたいよチュッ」だったんです。
――え!
夜中の2時に「俺ら天才だ!」って言ってましたからね。
――ダハハハハ! 夜中のテンションなだけですね(笑)。
朝起きてレーベルの偉い人に「これです!」って見せたら、真顔で「バカか?」と言われまして。でも、2時間後にはレコーディング始まりますってときに、福山雅治さんの『はつ恋』ってCDをポンと渡されて。
「これ初恋を表現したいんだろ? 福山雅治の初恋はこれだよ。ももいろクローバーの初恋って何?」って言われて、机に戻って15分で書いたのがいまの歌詞なんです。で、「笑顔が止まらない! 踊るココロ止まらない! 動き出すよ 君の元へ 走れ!走れ!走れ!」になって、そのままレコーディングしたんです。
だからレコーディングの日の朝の出来事なんですよ。いまでも鮮明に覚えてますね。「歌詞が決まらないどうしよう? 川上さんに怒られる」っていう。
――そこまで追い込まれて。
あのときよくやってましたね。でも実はユニバーサルミュージック内で一番評価が高かったのは『全力少女』でした。『オレンジノート』も、これ初めて言いますけど、あの歌詞は僕の日記なんですよ。当時、オレンジ色の手帳を日記に使ってたんです。それで『オレンジノート』ってタイトルで、その日記から拾って歌詞を書いて。その直後にももクロはキングレコードに移籍ですね。
ももクロとの別れ
――キング移籍後、『全力少女』はシングル『ミライボウル』のカップリングに、『オレンジノート』はデビューアルバム『バトル アンド ロマンス』に収録されることになる、と。そこの流れが正直よくわからないんですよ、なんでももクロがユニバーサルでメジャーデビューしてFKDさんがユニバーサルに入ったのに、シングル1枚だけでキングに移籍して、FKDさんがユニバーサルに残ることになるのかっていうのが。
うーん……どうなんすかね?
――あまり言えないヤツですか。
言えない話でもないんですけど、わからないっていうのが本音なんですよ。きっと何かがあったんだろうなとは思うんですけどホントにわからなくて。ただある日突然、「終わります」って言われて。
――ユニバーサルに送り込まれたばかりなのに。
「え、僕どうすればいいんですか? 帰ってくる? 帰らない? どっち?」みたいなのがあって。翌日『オレンジノート』のレコーディングだっていうときに、渋谷の汚い中華屋さんでスターダストのスタッフに添削してもらいながら歌詞を書いて、このレコーディングが終わったらももクロと二度と会わないんだーと思いながら録って。
翌週、新三郷かどこかのイベント(2010年6月6日、ららら新三郷“瞬”前売隊『フェスももLIVE』)で『オレンジノート』の初お披露目を見届けて、「じゃあね」って言って。あのときの早見あかりの捨てゼリフは一生忘れないですね。
――何を言われたんですか?
「ぜってー売れてやる!」って(笑)。
――ダハハハハ!
第3回に続く
取材・文:吉田豪
写真:小山田恵太
サムネイル画像:Tommaso Boddi/WireImage/Getty Images
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