――映画『52ヘルツのクジラたち』ではトランスジェンダー男性の岡田安吾を演じていますね。ヒロインの三島貴瑚(杉咲花)に寄り添う重要な役ですが、この映画のオファーを受けた理由について教えてください。
志尊淳(以下、同) 僕にとっては、成島監督の作品であることが大きかったです。学生時代から成島監督の映画は観ていましたから。でも自分は縁がないかもしれないと思っていたので、オファーをいただいたときは光栄だと思いました。
ただオファーの理由がもし「志尊淳はトランスジェンダー女性を演じた経験があるから……」ということだけだったら、お断りしようと思っていました。だから監督にお会いしたとき「なぜ僕に依頼をしたのですか?」と聞いたんです。そしたら監督は、僕が出演したNODA・MAPの舞台『Q:A Night At The Kabuki』の初演と再演を観て「役者としての信頼が芽生えたから、志尊くんにお願いしたいと思った」と。僕に期待をしてくださったんだと思い、うれしかったです。
――それですぐ出演を決めたのですか?
それでもすごく悩みましたね。台本の初稿は完成した映画とは違っていて、岡田安吾の描き方もかなり異なるものでした。僕は岡田安吾役について、自分の考えを成島監督に正直に伝えました。監督も同意してくれて、僕の意見も反映しながら「いいものにしていこう、自分を信頼してほしい」と言ってくださったので、出演を決めました。