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「僕じゃなくても成立するはずなのに“どうしても志尊淳に演じてもらいたい”と言われると結構弱い(笑)」病気、独立を経て今、俳優人生に思うこと〈『52ヘルツのクジラたち』〉

集英社オンライン / 2024年3月1日 17時1分

2021年に本屋大賞を受賞した人気小説の映画化『52ヘルツのクジラたち』に出演している志尊淳。映画制作の裏側に加え、自身を取り巻く環境が変わり、より研ぎ澄まされた日々について話を聞いた。

出演するか否か、悩み抜いた

――映画『52ヘルツのクジラたち』ではトランスジェンダー男性の岡田安吾を演じていますね。ヒロインの三島貴瑚(杉咲花)に寄り添う重要な役ですが、この映画のオファーを受けた理由について教えてください。

志尊淳(以下、同) 僕にとっては、成島監督の作品であることが大きかったです。学生時代から成島監督の映画は観ていましたから。でも自分は縁がないかもしれないと思っていたので、オファーをいただいたときは光栄だと思いました。



ただオファーの理由がもし「志尊淳はトランスジェンダー女性を演じた経験があるから……」ということだけだったら、お断りしようと思っていました。だから監督にお会いしたとき「なぜ僕に依頼をしたのですか?」と聞いたんです。そしたら監督は、僕が出演したNODA・MAPの舞台『Q:A Night At The Kabuki』の初演と再演を観て「役者としての信頼が芽生えたから、志尊くんにお願いしたいと思った」と。僕に期待をしてくださったんだと思い、うれしかったです。

――それですぐ出演を決めたのですか?

それでもすごく悩みましたね。台本の初稿は完成した映画とは違っていて、岡田安吾の描き方もかなり異なるものでした。僕は岡田安吾役について、自分の考えを成島監督に正直に伝えました。監督も同意してくれて、僕の意見も反映しながら「いいものにしていこう、自分を信頼してほしい」と言ってくださったので、出演を決めました。

俳優・志尊淳

トランスジェンダー男性を演じるためにしたこと

――岡田安吾役は難しかったとは思いますが、役作りについて教えてください。

僕は岡田安吾(通称アンさん)個人に向き合うことを大切に考えていたのですが、やはりトランスジェンダー男性であることは演じる上で重要なので、どのように気持ちを作っていったらいいのだろうと、彼の過去や家庭環境などについて考えました。

その役作りの中でトランスジェンダー監修兼、役者としても出演している若林佑真くんから実体験によるさまざまなアドバイスをいただいたり、トランスジェンダー男性が経営しているバーで当事者の方とたくさん話して役作りに活かしたりしていき、アンさんの過去も含めて掘り下げていくことを常に考えていました。

――役作りの中で、いろんな方にお会いして、気づいたこと、改めて思ったことなどありますか?

取材に協力してくださった皆さんの話は、アンさんを演じる上でとても重要で、自分は知らないことが多かったと改めて思いました。俳優として、トランスジェンダー男性であるという立場や経験も含めて、アンさんという個人に寄り添うことを心がけました。

おそらく観客の皆さんも、この映画で知ることがあると思いますし、「知らず知らずのうちに、傷つけていたかもしれない」と感じるかもしれません。でもそう思う気持ちは大切だと思うので、何かに気づくきっかけになってくれればいいなとも思います。

志尊淳が寂しさを感じるときとは

――母親に依存されて、義父の介護に明け暮れ、ギリギリの精神状態で生きていた貴瑚をアンさんは救いますが、アンさんと貴瑚と友達の美晴(小野花梨)は仲がよく、人生の厳しい側面を描いている本作の中でも、ほんわかしたシーンもありました。

3人のシーンは、ふだんの3人の雰囲気と繋がっていたほうがいいと思ったので、いい関係性を作ろうと思いました。僕は小野花梨ちゃんにずっといじられていましたね(笑)。杉咲花ちゃんとはまさにアンさんと貴瑚みたいな関係でした。だから本番でもいい空気が作れたと思います。

(C)2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

――「52ヘルツのクジラの鳴き声はあまりにも高音で他のクジラたちには聴こえない。だから世界で一番孤独なクジラと言われているんだ」というセリフがありますが、志尊さんが孤独を感じるのはどんなときですか?

孤独は感じないけど、寂しいなと思うのは、休みの日。朝起きてから誰からも連絡が来なくて、ずっと1人で家にいるとき。ちょっと寂しいですね(笑)。

でもだからといって、自分から連絡をとってアクションを起こしたりせず、「今日は家でゆっくり過ごす日」と思って家から出ない。ひとりで過ごす時間が好きなんです。

――出不精なんですか?

前は家にずっといるタイプじゃなかったんですけどね。今は、外出するとすぐ家に帰りたくなります。

――人が多くて外にいるのが嫌とか?

そういうのでもなくて。外出のために着替えて外にいると疲れちゃうんですよ(笑)。友達と一緒のときは別ですが、ひとりで外出とかあまりないですね。食事も行きつけの店に行ってパパッと食べて帰るとか、ふだんはそういう感じなんです。

病気の克服、独立を経て、大切にしていること

――ここ数年、コロナ禍で映画制作がストップするなど、俳優たちの仕事環境に影響を与えました。志尊さん自身も取り巻く環境に変化があったと思うのですが、仕事への向き合い方や気持ちに大きな変化はありましたか?

ガラリと変わりましたね。僕自身、急性心筋炎になって入院したり、12年間お世話になった事務所から独立したりしましたから(2023年ワタナベエンターテインメントから独立)。とはいえ、一つひとつの仕事に全力で向き合うことに変わりありません。

ただ、仕事に対する考え方や自分のプライオリティーを大事にしながら決めていくことなど、仕事へのスタンスには変化がありました。自分の人生なので後悔したくないし、責任を持ってやっていきたいです。

――さまざまな経験を経て、変わっていったんですね。

少ない経験ですけど。もう少し自分を大切にしていこうとも思うようになりました。それは健康面だけでなく、精神的な面も含めて。今の自分を認めてあげた上で、やりたいことに挑戦していきたい。

――具体的にはどのような挑戦でしょうか?

俳優だから、こういうことはしなくていいというような括りはやめて、やりたいことをやろうと思います。ファンクラブサイトを作って、イベントなども最初から自分も関わってやっています。

仕事はチームで動いていますが、最終的に決断するのは自分なので、そこが今までとは違いますし、俳優活動をメインにしつつ、いろいろな活動をやっていきたいですね。

「志尊淳に演じてほしい」と求められる俳優に

――最終的に決断をするのは志尊さん自身ということですが、出演のオファーを受けるときの決め手はあるのでしょうか?

ケースバイケースですが、脚本がよければいいというものではないし、いろいろな要素がすべて揃ったら……という感じでしょうか。

ただ僕は作品の規模は特に気にしていません。エンターテインメントの大作じゃなくてもいい。そういうのもやりがいがありますが、インディペンデント系の小さな作品でも喜んで出演します。

でも、意外と依頼されるときの熱量も決め手になるかもしれません。これだけ多くの俳優がいる中、僕じゃなくても成立するはずなのに「どうしても志尊淳に演じてもらいたい」と言われると結構弱い(笑)。

やはり俳優は求められてこそクリエイティブな活動ができるわけですし、ストレートに「志尊淳しかいない!」と言われたらうれしいですから。そういうオファーが来る俳優にならなければと思っています。

どうなるかわからない将来を楽しみたい

――俳優として将来はこうありたいという願望はありますか?

ないですね。俳優になってから10年くらいは目標を定めて、貪欲に仕事に取り組んでいたのですが、無理をしすぎたのか心身ともにしんどくなってきて……。

そもそも作品を通して何かを伝えたい気持ちや、応援してくれる人に喜んでもらいたい気持ちでやっているから、理想を追い求めたりするのは違うのではないかと思うようになりました。

――客観的に考えるようになったんですね。

俳優の仕事をやってきて思うのは、背伸びはするべきじゃないと。等身大で表現することが大切だと思うようになりました。

だから、やりたい役というのもないです。映画やドラマのクリエイターの方々が「志尊淳にこれを演じさせたらいいんじゃないか」と提案してくれるものを演じた方が面白いものになると思います。どんな役の依頼が来るかと楽しみに待つのもいいかなと。

13年前に今の自分を想像できるか?と言ったらまったく想像できないじゃないですか。だからこれから先もいい意味で想像できない、どうなるかわからないことを楽しみながらやっていきたいです。

映画『52ヘルツのクジラたち』
3月1日(金) TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
配給:ギャガ


亡き祖母の一軒家に暮らす三島貴瑚(杉咲花)は、言葉を発しない少年(桑名桃李)と出会う。母親(西野七瀬)に育児放棄されていた彼を受け入れる貴湖。彼女はかつて自分が母親(真飛聖)にされていたことを思い出します。3年前、義理の父の介護を懸命にやっていた彼女ですが、病状の悪化を母に激しく責められ、絶望。貴瑚はトラックの前に身を投げようとしていました。そのとき助けてくれたのは、塾講師の岡田安吾(志尊淳)と学生時代の友人・牧岡美晴(小野花梨)。二人に手を差し伸べられた貴瑚は、家を出て、人生の再スタートを切るのですが……。

公式サイト:https://gaga.ne.jp/52hz-movie/
(C)2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

取材・文/斎藤 香 撮影/恵原祐二 ヘア&メイク/松本順 スタイリスト/九

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