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「老害」よりもタチが悪い40代からの「ソフト老害」。放送作家・鈴木おさむが仕事を辞める理由にも「よかれと思ってやったことが、若い世代の妨害行為に…」

集英社オンライン / 2024年2月27日 11時1分

3月末で放送作家業・脚本業から退くことを発表した鈴木おさむ氏。「辞めよう」と決意した理由の一つに、「自分の行動がソフト老害になっているのではないか」と思ったことがあるという。鈴木氏が考える「ソフト老害」とは何なのか。『仕事の辞め方』(幻冬舎)より、一部抜粋・再構成してお届けする。

40代からのソフト老害

40代の人は「老害」と聞くとどんなイメージを持ちますか?

老害をネットで調べると、「自分が老いたのに気づかず(気をとめず)、まわりの若手の活躍を妨げて生ずる害悪」と出てくる。

ある政治家が思い浮かんだりしませんか?

60代、70代でその会社のことを決定出来る力を持っている人が、時代の変化を感じられずに、自分の意見を正義にしてジャッジ&ゴリ押しし、若者たちが迷惑を被るパターンが多い。



僕自身も振り返ると、若い頃は老害による被害をいくつも受けてきました。若者たちが必死に作った企画書は秒でスルーされて、代わりに、「上の人」が飲み屋で思いついた一言を、「周りの大人」たちが持ち上げて、その成立してない企画を制作する「現場」に下ろしてくる。

「現場」の人たちは「こんな企画、成立してないじゃないですか」と言うが、大人たちは「上の人」の思いつきだから絶対成立させろと言う。

いざなんとか形にしてみても、結果ふるわず。すると「上の人」は「俺が思っていたのはこんなんじゃなかった」と言う。すると「大人たち」は、「お前たちがちゃんと作らないから」と言って、「上の人」がその場しのぎで言ったキーワードをまた押しつける。

そもそも「大人たち」は、「現場」出身なのだから、成立してないのなんてわかっているのだが、そんなことはどうでもいい。「上の人」に気に入られればそれでいいのだ。

結果、「現場」の人たちが四苦八苦するが、どうにもならず、ソレがさらりと終わっていく。

老害による、テレビ局あるあるの被害。どこの会社にもあるでしょう。

この場合、老害の加害者は二人いると思います。まず「上の人」です。「上の人」の一言で、下の人たちがどれだけ動かなきゃいけないかもっと想像してほしいのですが、自分の思いつきが形になるのが嬉しくて、言ってしまうという老害。

自分の感覚が、時代とかけ離れていることに気づかないという老害。

そしてもう一人は「大人たち」です。「上の人」が思いついたことが、絶対成立してないとわかっていながら、その人に認められたいがために、それをゴリ押ししてくる。僕はこっちの立場の老害がやっかいだと思うし、罪が重いと感じています。

また、厄介なのが、こういう老害による被害の話を聞いた他局の人が「あの局のあの番組、上の人の思いつきで大変らしいね」とか言うのだが、僕からしたら、その局でだって同じようなことが繰り返し行われている。

隣の老害はよく見えるんですよね。

こんな老害の被害を、若い頃は、まあよく受けました。ただ、たまに、そういう企画の中で当たりが出てしまう時があるから、迷惑な話です。こういうもので当たるのって奇跡に近いと思うのですが。

僕も老害になっていた

僕は「老害」による被害者側だとずっと思ってきました。

でも、この一年はそうでもないと思っています。

老害は60代、70代の話ではない。

40代から老害を与える加害者側に立っている人もかなり多い。

事の始まりは、とあるYouTubeチャンネル。『街録ch』という人気チャンネルをご存じでしょうか?

三谷三四郎というテレビディレクターが町中で、とんでもない人生を経験した人たちにインタビューするもので、これがとてつもなくおもしろい。

三谷Dは、元々お昼の番組『笑っていいとも!』のADさんで、そのあとディレクターになり、僕もいくつか番組を一緒にやっていたことがある。

三谷Dが、テレビから少し離れて、『街録ch』を始めてヒットし始めたときに、嬉しくて電話した。「良かったな、三谷」と言っても、なんかノリが悪い。あんまり嬉しそうじゃない。

その理由が一年後にわかった。

三谷Dとの一回も使われてないLINEに、いきなり映像が送られてきた。それはライターの吉田豪さんに三谷が逆インタビューされている『街録ch』の映像。

まだ公開されてないが、ちゃんとサムネイルも入っていて、そこに「鈴木おさむを逆恨み」と書かれている。それを見て心臓の鼓動が速くなる。

そしてLINEの文章に、いきなりアップするのも卑怯だなと思ったので、とりあえず公開前に送ります……的なことが書いてある。

見てみると、僕ととある番組をやっていた時のこと。三谷たちが必死に作ってきた企画やVTRが僕の一言で、簡単になくなったり、直されたり。しかも、僕の意見をプロデューサーや演出たちが大切な発言として、受け入れて、その通りにしてしまう環境に対して激しくキレていた。

僕ら作家は10以上の番組を担当し、週に一回、番組の会議に来て発言する。ディレクターは一週間、その会議に向けて気持ちを込めて作り上げてくる。だが、それが週に一度そこに来た僕らの発言でひっくり返される。

三谷は僕に対してもですが、その環境を作り上げている「大人たち」や局にも問題があると提言していた。

見終わり、色んな感情がこみ上げてきたが、三谷にはこうLINEした。「おもしろいじゃん」と。

三谷はその言葉を求めていたらしく、その後のLINEの文面は急に穏やかになり、結果、後日、彼のチャンネルに僕も出演して、自分の人生や思いを語った。

三谷のVTRを見て気づいた。これって、自分は「老害」の被害者側だと思っていたけど、加害者側に立ってたんだよなと。

自分も40代から老害の加害者側になっていたんだと気づき、40代から「ソフト老害」は始まっているのだとわかった。

「老害」と「ソフト老害」の違い

60代、70代の「老害」と40代の「ソフト老害」はちょっと違う。

40代になり、会議に出席し、自分が一番上に立つ。僕ら放送作家の仕事というのは、誰かのパートナーになることが多い。

プロデューサーや総合演出と言われる番組を作る一番の責任者のブレーン的パートナーとなる。

自分の一言で全てが決まっていく時も数々あるし、時には、プロデューサーや総合演出の気持ちをアシストすることもある。

20代の時よりも、全体の「バランス」を取ることが多くなる。ただ、自分の発言力が大きいため、バランスを取っているはずの僕の言葉は、結果、若者たちが必死に考えてきたことを妨害することになっていた。

これ、どの会社でもあるのではないでしょうか?

40代になり、20代、30代とは違い、会社全体のことを考えて動かなきゃいけないポジションになる。

そのポジションに立ったからこそ、会社のことを考えて発言していること自体が若い世代からするとソフト老害になっていたりする。

そして、例えばそのプロジェクトがうまくいっている時はいいが、うまくいってない時。「上の人」からは、なんとかうまくいくようにツツかれる。

若い世代からは、自分たちのやりたいようにやりたいと言われる。

こういう時に、自分は「上の人たち」とは違うよというフリをしながら、若者たちを説得するようにして、結果、走る方向を変えさせていく。あるあるだ。だが、これもソフト老害と言えるだろう。

誰も傷つかないようにとバランスを取っているつもりだが、20代、30代からしたら、そのバランスを取っている行為が、妨害行為になっている。

良かれと思ってやっていることは、ソフト老害になっていることが多いのだ。

40代は老害なんて関係ないと思いがちだが、40代から始まっているのだ。それを自覚した方がいいと本当に思う。

僕は、三谷DのVTRを見てから決めたことがある。バランスを取るのはやめようと。

自分が違うと思ったことは、オブラートに包んで言ってるつもりだったが、結果、それがソフト老害になるならば、なぜ違うのかをハッキリ伝える。

そして、嫌われるなら正面からちゃんと嫌われようと。嫌われることを恐れてうまくやろうと思うから、逆にソフト老害になるのであって。

嫌われることを恐れずに、ハッキリ伝えるようにした。

そんな僕がどう思われているかわかりませんが、もし自分が若者だったら、そんな「大人たち」の方が気持ちよく映るのではないかなと思っている。

僕が今の仕事を「辞めよう」と思った理由の一つに、40代以降、どうしてもバランスを取る立場になることが増えてしまい、自分の行動がソフト老害になっているのではないか、と思ったのもある。

仕事の辞め方

鈴木おさむ

2024年1月24日

1650円(税込)

A5判/216ページ
発行:幻冬舎

ISBN:

978-4-344-04206-3

マンネリを捨てることで、人生を取り戻す
32年間やった放送作家を辞めます。

○40代からソフト老害
○ビジネスセックスレスは辞めるサイン
○あなたにも代わりはいる
○手放すからこそ入ってくる

ワクワクしない仕事をダラダラ続けるほど、人生は長くない!
「仕事を辞める」と想像することで、働く意味、人生の目的、幸せのカタチが見えてくる。
人生100年時代に、毎日をキラキラ生き続けるための方法

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