「SMAPとの仕事は最高の経験」も「これまで仕事で楽しかったって思ったことは一度もない」鈴木おさむが引退を決意した“ビジネスセックスレス”の苦悩
集英社オンライン / 2024年2月29日 11時1分
放送作家・脚本家として、長きにわたり数々のヒット作を手掛けてきた鈴木おさむ氏。しかし32年間仕事を続けてきて、「楽しかったことは一度もない」と振り返る。鈴木氏にとって仕事におけるモチベーションや成長の重要性はどこにあるのか。『仕事の辞め方』(幻冬舎)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
ビジネスセックスレス
第一章のこんまりさんの話に戻りますが、家の洋服だけでなく、ときめくかどうかは自分の仕事にこそ生きる考えだと思うんです。
今の自分の仕事、これからの仕事を想像して、ときめくかどうか? 「これから10年、今の仕事をしている自分がワクワクするかどうか?」が大事なんです。
僕は51歳。この数年でも色々なお仕事をさせていただいてます。テレビの枠を超えて様々な仕事に挑戦させていただき、2024年にはNetflixで自分が企画した大型ドラマが配信予定です。
ですが、この先10年、ワクワク出来るか?と考えたら、そうではない自分がいることに気づきました。
この先、ワクワクするために生きていくにはどうしたらいいのか?と考えると、「人生がときめく片づけの魔法」と同じなんですね。
ワクワクするために手放さなきゃいけないものがある。
手放すから、この先ワクワク出来る。
僕が仕事を辞めることを報告すると、何人もの人に「もったいない」と言われました。
ありがたすぎる言葉です。もったいないと言ってくれるなんて。
だけど、もったいないと本気で言ってもらえてるうちが花。
でも、周りがもったいないと言ってくれることに自分がワクワクするかは別の話です。
洋服ダンスの服を見てワクワクするかどうかを決めたように、自分の今の仕事、そしてこれからその仕事をしている自分にワクワクするかどうかを考えてみた結果。
ワクワクしなくなっている自分がいる。
セックスレスという言葉があります。付き合って最初の頃は燃えるセックスですが、慣れ親しんでくると前のような興奮やときめきがなくなる。そして、セックスしなくても、それが当たり前の関係になってくる。
恋愛や夫婦においては、セックスレスになっても、愛しい関係を作ることが出来るかもしれませんが、仕事に対してのセックスレスは良くないと思っています。
仕事というものは基本しんどいものだと思ってます。だけど、その中に一滴の興奮とワクワクがあるから、それで再びモチベーションが上がり頑張れる。
だけど、仕事に対して前のような興奮とワクワクがなくなってきたら、それはビジネスセックスレスだと思うんです。
これは辞めることを考えるサインだと思っています。
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経験値の円の中にいませんか
そして、仕事に対して、経験値が増えるということは素晴らしいことなんですが、経験値が増えすぎると、新たな仕事に挑戦しても、想像がついてしまうことが多い。
想像がつくからといって簡単にこなせるということではありません。ミスすることだってあります。ですが、その起こりうるミスも含めて想像がつく。
どんな仕事をしても、経験値の円の中にいる気がする。会社からしたらその経験値を持っている人材は貴重なんですが、僕にとっては、ある時からそれが怖くなったんですね。
ずっとこの円の中で仕事をしていくのかと。
その円は年とともに少しずつ大きくなってはいるのでしょうが……。経験値の円の中にいることに気づいた時に、それが一つのきっかけになりました。
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楽しかったことは一度もない
僕はこの32年間の仕事を振り返ってきて一つ気づいたことがあります。
これまで、沢山の仕事をさせていただきました。かなりのビッグチャンスももらいました。
その中で「嬉しかったこと」は沢山あります。想像以上のものを作れたり、あとは何より、そこに結果がついてきたり。そして「やり甲斐があったこと」も沢山あります。
そして「感動したこと」も沢山あります。
ですが、「楽しかった」と思ったことは一度もなかったなと気づきました。
このことは、辞めると決めてから気づいたのですが、周りの人に「これまで仕事してきて楽しかったって思ったこと、一度もないんだよね」と話すと驚かれます。たまーに理解を示してくれる人はいます。
楽しくなかったからダメということではないです。僕にとって今の仕事は、天職だと思っています。
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緊張があることこそ最高の経験
じゃあ、なぜ「楽しい」と思ってこなかったのか?
それは、僕が23歳の時から20年以上お仕事をさせていただいたSMAPと、そのマネジメントをされていた飯島さんの存在が大きい。
僕がSMAPの皆さんとお仕事をさせていただくようになってから、グループはただただ巨大になっていく。その仕事をしていく上で振り落とされたくないと思って必死でした。
目の前の仕事を全力でこなしていくのに一生懸命。与えられる仕事は、自分がいつも着ている服よりちょっと大きいサイズという感じで。その服を「いつも着てますよ」風の顔して着る感じ。本当はその仕事を与えられて、自分のサイズに合ってないのに、合ってるフリしてやって、結果を出していくしかなかった。
そして20代のうちから、自分がおもしろいと思ったものを世の中に発信していくことが出来るのは「嬉しい」ことではあるのですが、その場合は責任を問われます。
だから楽しんでいる時間はなく、常に「緊張していた」のだと思います。
マネジメントの飯島さんは、絶対に妥協をしません。飯島さんは、若くておもしろいと思う人をピックアップするのがとてもうまくて、チャンスを与えられた方は嬉しいし、頑張る。
結果、成功して、その人がその分野でトップになっていくことが多い。
売れてる人を起用するのは簡単ですが、若手の時代から育てるってとても難しいですよね。
さらに飯島さんがすごいのは、自分と一緒にやってきた人がどれだけ売れようが関係ない。
自分の仕事で手を抜いたりしたらすぐに見抜くし、めちゃくちゃ厳しく注意されます。
僕も沢山のチャンスを頂きましたが、たまに、かなり厳しいオーダーもされましたし、怒られてもきました。
だから緊張感をもって頑張れたのだと思います。
そして、今まで絶対に作ることの出来なかったものを作るチャンスや環境も用意してくれました。どれだけ経験を積んでも自分の経験値では計算出来ない仕事がたまにやってくる。それに対して結果を出したいので、若手のような頃の気持ちで頑張れる。
ずっとそのような気持ちでやってきたから「楽しくなかった」のだと思いますが、振り返ってみると、それって最高の経験が出来たなと思っています。
SMAPが解散して、それからもありがたいことに、色々な仕事のチャンスを頂けています。2024年配信予定のNetflixドラマ『極悪女王』では、企画・脚本・プロデュースというありがたすぎるポジションを頂きました。これは配信されたら、絶対グローバル1位を取るつもりでいます。
とあるアーティストの伝記をもとにした映画も作っています。これがうまくいったら、日本の映画でありそうでなかった新たなジャンルを作れるなと思っています。
こんな仕事をやらせていただいてるし、全力で頑張っています。
ですが、なんでしょう。
20年以上とてつもない緊張感でやっていた時のスイッチが入り切らない。
僕は若手の頃から、まず目の前の人に褒められたいと思ってやってきました。そしてSMAPと仕事をしてからは20年以上、メンバーや飯島さんにおもしろいやつだと思われ続けたいなと思ってやってきました。
だけど、僕が今、仕事をしている状況は、以前のように大きな緊張感を持って、この人にいらないと思われたくない! この人にめちゃくちゃ褒められたい! ということがかなり減ってしまっている。
エクスタシーを感じる状況が減っていて、仮に大きな結果が出たとしてもそれはあくまでも結果であって、自分は緊張感ある過程の中でそのエクスタシーを生み出していたのだなと気づきました。
だからきっとそれが僕のビジネスセックスレスなのでしょう。
自分を求めてくれる人がいたとしても、きっとこれは「終わるべきサイン」なのだと思います。
おもしろいもので、「辞める」と決めたら、久々に経験値にないおもしろい仕事のオファーが来ました。
辞めると決めるとそれが来る。だからといって、これで再び続けようとは思わない。
きっとそれは「辞める」と決めた自分への仕事の神様からのプレゼントなのだから。
仕事の辞め方
鈴木おさむ
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2024/02/20231429547083/400/book.jpg)
2024年1月24日
1650円(税込)
A5判/216ページ
発行:幻冬舎
978-4-344-04206-3
マンネリを捨てることで、人生を取り戻す
32年間やった放送作家を辞めます。
○40代からソフト老害
○ビジネスセックスレスは辞めるサイン
○あなたにも代わりはいる
○手放すからこそ入ってくる
ワクワクしない仕事をダラダラ続けるほど、人生は長くない!
「仕事を辞める」と想像することで、働く意味、人生の目的、幸せのカタチが見えてくる。
人生100年時代に、毎日をキラキラ生き続けるための方法
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