間違えて買付けした『アメリ』を大ヒットさせた名物・映画宣伝マン、バツ3で600人以上の女性経験を持つ性豪、自己破産して倉田真由美の旦那になった、リアルだめんず……そんな紹介を受けて、先輩から「週刊プレイボーイ」誌の連載「叶井俊太郎の試写日記『タダ見ですけど、何か?』」の担当を引き継いだのが15年前のこと。
破天荒なエピソードの数々に恐る恐るやりとりを始めてみると、そんな触れ込みを覆す、真摯に映画と向き合う「仕事人」叶井さんの顔に圧倒された。毎週なんでも歯に衣着せず、忖度なく映画を批評するその原稿には、入社2年目の若造としては半泣きになることもしばしばあったが、とにかく自分が「おもしろいと思うこと」に対して頑なに正直な姿勢が印象深かった。
「あの映画の最初の題字が出るところがかっこよかった」
「音楽がよすぎてサントラ買っちゃったよ」
「あの映画は全然おもしろくないね」
会えばいつもそんな風に映画の話ばかりしていた叶井さんとの仕事で忘れられないことがある。それは2011年3月の連載でのこと。