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【私のウェルネスを探して】小原ブラスさんが「ロシア軍のウクライナ侵攻」を報じる日本のメディアに伝えたいこと

集英社オンライン / 2022年6月4日 13時1分

自分のことを労わる時間、自分のことを大切にする時間は、きっと誰かを大切にする時間につながるはず。いつも忙しいあなたには、カラダとココロのウェルネス情報が必要です。いち早く気づいたキーパーソンのインタビュー集。

引き続き、タレント、コラムニストの小原ブラスさんのインタビューをお届けします。上京して10年、そして30歳の誕生日の前日という節目に、「人生の一番大事な時期」を過ごしたという東京・中野にてインタビューを行いました。「一般社団法人外国人のこども達の就学を支援する会」の理事長に就任した経緯、子どもの頃に支えてくれた人達への感謝、そしてロシアが今年2月に開始したウクライナへの軍事侵攻についての率直な胸の内を語ってくれました。(この記事は全2回の2回目です。前編を読む


支えてくれた人達に「ありがとう」と言う代わりに

日本には現在、2万人もの学校に通っていない外国人の子どもがいます。義務教育はあくまでも「日本人の子どもを持つ親」に課せられた義務であり、「外国人の子ども」は該当しません。外国人労働者が子どもを連れて来日し、子ども達は居住地の公立学校に編入するも、日本語が分からないから学校の授業について行けない、学校から配布されるプリントにも何が書いてあるかわからない、そのうち学校から足が遠のく……というケースが増加しています。インターナショナルスクールは学費が高額なので現実的な選択肢ではありません。

移民を多く受け入れているヨーロッパ諸国では、日本よりも状況が深刻化。学校に通っていない外国人の子ども同士で集まってグループを形成し、ギャング化し、犯罪率の上昇につながり、「外国人がいると治安が悪い!」と差別が生まれ、差別された側もやり返す……という悪循環が生じています。将来的には日本でも同様の社会問題に発展する可能性も。それを知った小原さんは昨年、「一般社団法人外国人のこども達の就学を支援する会」の理事長に就任しました。寄付を募り、その寄付金で外国人の子ども達に日本語と、学校教育で習う教科をリモートで教える活動をしている団体です。小原さん自身もメディアでの宣伝活動に加え、リモートで子ども達と日本語会話をしてレベルチェックを担当することも。

「僕自身はロシアで飛び級で4歳で小学校に入学したんだけど、5歳で来日して保育園からやり直しになって。まあ日本語がわからなかったから、結果的に良かったんですよね。でも受け入れてくれる保育園がなかなか無くて。カメルーン出身で僕と同じく姫路育ちの漫画家・星野ルネさんも通った広峰保育園の園長先生がたまたま父の知り合いで、ルネさんの成功体験もあったこともあり、受け入れてくれたんです。現場の先生がすごく頑張って、日本人の子どもと繋いでくれて。ちょっとずつこれは何、これは何って教えてもらって。

小学生時代の小原さん(写真提供:小原ブラスさん)

あと、関西って公園に何か知らんけどオッサンがずっといるんですよね。そのオッサンが僕に興味持ってくれて『来いや来いや』って、日本語教えてくれたんですよ。決めつけたらあかんかわからんけど、関西の人って他人にちょっかい出したり話しかけるの好きなんですよね(笑)。今思えば、近所の人にめっちゃ支えられてた。でも当時は何とも思ってなかった、当たり前のことって捉えてたから。大人になって初めて『あれって当たり前じゃなかった! 感謝すべきことやった……』と気づいたけど、もうお会いすることも出来ないし感謝も伝えられない。せめて彼らが僕に日本語を教えてくれたりサポートしてくれた、その意志を繋ごうと。同じようなことを次は自分がやることで、彼らの意志を繋げることになるんじゃないかな」

実はめっちゃ、歯に衣着せてます

本連載でインタビューした皆さんに必ず「身体のウェルネスのためにしていること」「心のウェルネスのためにしていること」という定型質問をしています(詳細は記事末)。小原さんが「心のウェルネスのためにしていること」が、オンラインのメンタルトレーニング。そのトレーニングを受けて、自身の「外国人の見た目」にコンプレックスを抱いていたことに気づいたそう。「歯に衣着せぬ発言」と形容されることの多い小原さんですが「実はめっちゃ歯に衣着せてて……」と自己分析します。

「日本で暮らしていて、自治体指定のゴミ袋の値段が高いとか、住民税が高いとか、不満いっぱいあります。でもだからって、日本を好きじゃない、わけじゃない。日本を愛してるけど、愛してても悪い部分が見えるから、文句は言いたい。僕はずっと日本で育ってて、皆と同じ感覚で不満やのに、『不満やったら国へ帰れ』と思われてしまう。だからそういう文句をなるべく言わんようにしたり、言ったとしても後で必ずフォローの言葉を加えたりする。メンタルトレーニングを受けて、そういう言葉をいちいち付け加えていかんとあかん、っていうのがめっちゃ嫌だったんだなって気づいた。

(外国人の見た目ゆえ)子どもの頃から『自分は他の人と違う見られ方をしている』とずっと感じてたからこそ、自己防衛のために『歯に衣着せる』能力が身について、結果的にそれが現在のコメンテーターの仕事に活きてる。ちゃんと衣着せられるからこそ、TVに出られるんですよ。ロシアとウクライナで戦争が起きたことで、ますます歯に衣着せんとあかんくなってしまったし……」

コロナとロシアのウクライナ侵攻で日本国籍取得を決意

小原さんは日本の永住許可資格を取得していますが、ロシア国籍です。これまで日本に帰化しなかったのは、ロシアに住む祖父母に定期的に会いに行くため。ロシア国籍がないと渡航の度にビザを取得せねばならず、利便性を追求した結果、日本に帰化をせず永住許可資格を取得していました。

しかし2020年の新型コロナウィルス流行がきっかけで、その考えを改めざるを得なくなりました。日本在住者に一律で10万円が給付されましたがその際、在日外国人にも10万円給付するか否か論争になりました。結果的に給付はされましたが、それを知った小原さんは「今は有事で、そんなときに頼れるのは自分の国籍のある国なんだ」と気づき、日本国籍を取得する必要性を感じるように。その上、昨年末に祖父母がコロナに罹患し亡くなり、ロシアに渡航する必要も無くなってしまい「帰化しよう、ロシアの国籍を離脱して日本の国籍を取ろう」と決意します。そして今年2月、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始――。

「他のメディアでも何度も言ってますけど、僕はもう大反対。侵略だけでなく、これまでプーチンがついてきたウソがたくさん露わになったことも許せない。これまではロシアに行くし、おじいちゃんおばあちゃんに迷惑がかかるかもしれんし、中立な立場でおらんとあかんなと思ってたから、あまりプーチンを批判する発言はしてこなかったんです。ロシア政府に対して負の感情を抱いていても、疑問に思うことはあっても。ロシア、(法律的に)ゲイにも厳しいしね。でも今回はあまりにも逸脱していて『許せないな』と。『ちゃんと言おう』という心境に変化したんです。

ウクライナへの軍事侵攻が始まってからロシアで法律が変わって、海外在住のロシア人が国を批判するのも法律違反になった。なので今、日本国籍を取得するために動いています。僕は自分の持っている国籍は捨てたと思ってます、ある意味その国はもう頼れないもん。今、僕はロシアの大使館に行くことすら怖いと思っている。まるで今、無国籍の人みたい。でもまさかこんな急に、自分がこんな状況に置かれるとは。自分の国にすごい裏切られた。まあ向こうからしたら僕が裏切ったと思ってるんだろうけど」

何を言ったら正解なのかわからない。苦しい、の一言

ロシア国籍を持っていることで、今回の軍事侵攻について「お前、ロシア国籍持ってるんだから責任あるだろ」と言われることも少なくないそう。「個人としてどこまで責任を感じればいいのかわからないのが正直な気持ち」と言う小原さん。「ピロシキーズ」のYouTubeチャンネルの収益をウクライナ赤十字に寄付しています。しかし「あなたがそうやって謝ったり『ロシア人として責任を感じる』と言うと、私達まで申し訳ないと感じないとならない」と、ロシアにルーツを持つ、日本育ちで日本国籍の高校生からメッセージが来たことも。

「もちろんウクライナの現状は見ていられない、可哀想過ぎる、ロシア人としてウクライナの人達に申し訳ない。でも何を言ったら正解なのかわからない。苦しい、この一言です。苦しいけど、私よりもっと苦しいんだよね、ウクライナの人達は。苦しいけど、苦しいと口に出すのも良くないな、と。

メディアの方から取材を受けると『ネットで悪口を書かれたり、差別を受けているんじゃないですか?』と聞かれます。そして『在日ロシア人への差別! 批判殺到!』といった記事になるわけです。善意で書いてくれてるんだろうけど、それを読者は『ウクライナのことはさておき、自分のことばっかり心配しているロシア人』と捉えるだろうし、結果的にロシア人への批判に繋がるんですよ。記事にすることはもちろん大事だけど『それ私達の口から言わせんとってよ、日本の方が自分達でそれに気づいて記事にしてくださいよ』と思いますね」

タレントは「商品」。ある程度のエゴサーチは必要

自らのタレント活動に留まらず、「Almost Japanese」のCEOとして社員と所属タレントを抱え、「一般社団法人外国人のこども達の就学を支援する会」の理事長としても活動する小原さん。ロシアのウクライナへの軍事侵攻以降コメンテーターとしての出演依頼が激増し、パーソナルジムにも通えない状態だそう。「日本在住ロシア人」という立場ゆえ何かと風当たりも強そうですが、メンタルを病むことはありません。エゴサーチもします。

「悪口専用サイトやヤフコメは見ません。何をやっても悪い部分しか見てもらえないし、事実と違うことを書かれることも少なくないので。でもTwitterは見ちゃいますね。名前や出演番組名以外に『小原プラス』『小原プレス』とかでもエゴサします。最近ちょっと増えてきたのが『小倉ブラス』、『とくダネ!』(の司会だった小倉智昭さん)と混じってんのちゃう?(笑)もちろん批判的なツイートもあるけど、好意的なツイートもあるから、ある程度客観性が保ててるのではと感じます。

それにエゴサを全くしないっていうのは、タレントとしてどうなんかなとは思う。だってある意味、自分が『商品』なんで。もし会社を経営していてモノを売っていたとしたら、自社商品のレビューをチェックしますよね、それと一緒です。チェックせんと今後改善しようがないし、それに私は人間なので悪い部分がいっぱいある、むしろ悪い部分の方が多いかもしれない。『ありのままの私を好きになってください』と言うこともできなくはないけど、自分に悪い部分があることに気づかないまま、そう言うのはちょっとエゴかなと思う。ある程度自分で努力改善してここは直す、でもここはもう自分の個性だから直さへんでこのままにしとく、と自分で取捨選択した結果としての『小原ブラス』という商品。それを評価される分には悪い評価でも良い評価でも受け入れるつもりだし、それでいいかな、と」

小原ブラスさんに聞きました

身体のウェルネスのためにしていること
“水、めっちゃ飲みます。長生きしたい、150歳まで!“

水、めっちゃ飲みます。コントレックスを1日4ℓぐらい。時間がある日は1時間ぐらいお風呂に入りながら水飲んで、めっちゃ汗かくようにします。以前はシャワー派だったけど、数年前にお風呂に切り替えたら最初、ドロッドロの汗が出てきて。その後、水を飲みながらお風呂につかるようになったら、汗がさらさらになって。老廃物が出たんだと思う。あとは毎日寝る前にヤクルト1000を、朝起きたらミルミルを飲む。血圧計で血圧を測る。(インタビュー当日は誕生日前日だったので)今は暴飲暴食期間だけど、普段は完全栄養食のBASE FOODを食べるようにしています。長生きしたい、150歳まで! 人類の行く末を見届けたいんですよね(笑)」

心のウェルネスのためにしていること
“オンラインのメンタルトレーニング“
「オンラインでメンタルトレーニングを受けてます、オリンピック選手も受けているトレーニングです。自分がその時、頭の中で思っていることをとにかく全部、口に出す。それをトレーナーの先生がホワイトボードに全部書き出して、可視化してくれます。それを見ると『あ、自分こういう風に思っとったんや』『やっぱり自分はあの人に嫉妬してたんや』といった気づきを得られるし、ぐちゃぐちゃになっている頭の中が一旦整理されて、不思議と落ち着く」。小原さんがトレーニングを経て気づいた自らのコンプレックスについては、インタビュー本文参照。

インタビュー前編はこちら


撮影/高村瑞穂 取材・文/露木桃子

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