『ちびまる子ちゃん』感動の神回…TARAKOさんに捧ぐ「歳とったな」「おたがいさまじゃよ」おばあちゃんとひろしの親子会話に涙
集英社オンライン / 2024年3月17日 16時0分
3月4日に急逝した声優のTARAKOさんが主人公を演じていた国民的人気アニメ『ちびまる子ちゃん』。10日の放送は急遽、過去の厳選エピソードのアンコールOAとなった。多くの人がその家族愛にあふれたストーリーに心を動かされ、SNSなどは〈今回のまる子は本当に神回過ぎて泣きました…〉といった声とTARAKOさんとの早すぎる別れを惜しむ声にあふれた。
ひろしとおばあちゃんの貴重な親子会話
およそ34年間にわたり放送されてきた国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系)で、主人公・まる子の声を演じてきた声優・TARAKOさんが、3月4日に亡くなった。
これを受けて、3月10日の『ちびまる子ちゃん』は急遽内容を差し替えて、過去の厳選エピソードがアンコール放送されたが、それが涙なしでは見られない“神回”だったと大きな話題となっている。
今回放送されたのは、2015年に放送された第998話『おばあちゃんの誕生日』の巻。翌日がおばあちゃん(さくらこたけ)の誕生日ということで、その前日にまる子が誕生日プレゼントを用意しようとするストーリーだ。
いつもの無駄遣いでお金がすっからかんのまる子は、伝家の宝刀「肩たたき券」を用意することに。だがその準備の途中、こたけが今まで家族からもらったプレゼントを、押し入れで大切に保管していることを知る。その中には、以前まる子が渡した「肩たたき券」も入っており、まる子はなんだか胸が痛くなる。
その晩、夜桜を見に出かけていたおばあちゃんだったが、一緒に行く予定だった友人の体調不良で急に夜桜を見られなくなり帰ってきた。そこで誕生日当日は、家族で夜桜を見ながら外でご飯を食べることにした。
こたけを外に誘いだしたのは、息子・ひろし。夕方の道を、こたけと2人きりで歩くひろしは、いつものようにぶっきらぼうながらも、少し様子が違う。
神社を通りかかると、2人はひろしが子どもだった頃を振り返る。ひろしは「歳とったな」と、こたけに語りかけ、こたけも「おたがいさまじゃよ」と返す。
公園で家族に合流すると、それぞれが思い思いのプレゼントをこたけに渡す。その夜、こたけは今日の日を宝物として、桜の花びらを紙に包み、また押入れにしまうのだった。
急遽放送の制作の裏側とは…
この回は、世帯平均視聴率8.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、今年最高を記録した。ここ数年の平均は4~6%ほどであるため、TARAKOさんの訃報を聞いた多くの人が、『ちびまる子ちゃん』を視聴したことがわかる。
今回のさくら家の家族愛あふれるこのエピソードは、SNSなどで〈今回のまる子は本当に神回過ぎて泣きました…〉〈後半ぼろぼろに泣きながら見てた 特にひろしとおばあちゃんのところ〉〈ちびまる子ちゃんで泣きそうになる日が来るとは…… ひろしとおばあちゃんが「お互い歳をとった」って話されてたけど視聴者の我々も、だよね〉〈ひろしとおばあちゃんの2ショット貴重だな〉と感動の声があがり、多くの人が改めて『ちびまる子ちゃん』の素晴らしさを感じていた。
脚本を担当したのは、脚本家の髙橋幹子さんで、『ちびまる子ちゃん』のほか、『おじゃる丸』や『青のオーケストラ』(NHK Eテレ)、現在放映中の連続ドラマ『Sugar Sugar Honey』(TOKYO MX)『瓜を破る~一線を越えた、その先には』(TBS系)などの脚本を手掛けている。
長年『ちびまる子ちゃん』に携わってきた髙橋さんに、『おばあちゃんの誕生日』を書いた当時のことを聞いた。
「歳を重ねると『自分はもう世の中から必要とされていない……』と思うこともあるじゃないですか。
私もそうで、世の中、20代の若者だけでいいんじゃないか、とつい卑屈な気持ちになってしまうんです。でも、本当はどの年代からも学ぶことがあるんじゃないかと。
おばあちゃんからも、小学生のまるちゃんからも、それこそ生まれたての0歳児からも。テーマは『幾つになっても誰もが必要とされる当たり前の世界を』。だからこのお話では“見えないもの”を互いにプレゼントしあいました。まるちゃんは、おばあちゃんから“優しさ”を。おばあちゃんは、まるちゃんたちから“想像力”を。世代の違う二人じゃなきゃ、交換できないプレゼントです。
以前、私の母が大切にしていた空の菓子箱を開けたところ、自分が昔あげた誕生日プレゼントや手紙、お土産のみならず、その空箱までもが一つひとつ日付入りで大事にしまっていたことに胸打たれたのを思い出し、この誕生日話の"肝の部分"に入れました」
SNS上でも特に感動の声があがった、ひろしとこたけの何気ない会話も、工夫がたっぷりこらされていたようだ。
「『台詞は少なく、情景描写で見せる』ことを意識しました。私は、生まれた土地にずっと住み続けている人に憧れているのです。ひろしとおばあちゃんのように、毎年同じ景色をずっと隣で見られるというのは、奇跡だと思うのです。長年一緒にいるからこそ台詞は少なく、情景描写で魅せる。確か高木淳監督に『情景描写で見せましょう』と言われた記憶があります。監督には、打ち合わせの段階から、その画が"見えて"いたのでしょうね」
「グチったりせず、現場で、姿勢で、“答え”を見せていく人」
毎週放送されているアニメ『ちびまる子ちゃん』だが、その1話1話にはしっかりと、クリエイターたちの工夫と想いがたっぷり込められている。最後に、TARAKOさんへの想いをうかがった。
「コロナ前、忘年会の時、毎年座長らしく明るく場を盛り上げる姿に「強さ」を感じていました。この方はきっとグチったりせず、現場で、姿勢で、“答え”を見せていく人だ、と。自分もそうありたいなと思いました。また我々脚本家は、常日頃から、どれだけたくさんの作品を残せるかを考えています。TARAKOさんは『ちびまる子ちゃん』をはじめ、とても多くの作品を生みだして下さいましたので、これからもずっと私たちと共に在り続けると思います。TARAKOさんのご冥福を心よりお祈りいたします」
3月11日に都内で開かれた、「フジテレビアニメ ラインナップ発表会2024」によると、アニメ『ちびまる子ちゃん』は3月24日にTARAKOさんが演じた最後の回が放送され、それまではスタッフが厳選したエピソードが放送される見込みだ。
TARAKOさんとともに歩み続けてきたアニメ『ちびまる子ちゃん』。TARAKOさんが命を吹き込んだ数々のシーンは多くの人の心に残り続け、これからも涙と笑いをたくさん届けてくれるだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部
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