『義足のボクサー GENSAN PUNCH』は、俳優の尚玄さんが親友の土山直純さんの実体験をモチーフに、プロデューサーと主演を兼ねた作品です。幼い時に片足を失った土山さんは成長し、プロボクサーを目指します。しかしながら、義足での試合は安全性を保てないとの理由で日本でのライセンス取得が許されず、土山さんはフィリピンに飛び、そこでプロボクサーを目指すことを決意します。
子育てをする上で、既存のレールに乗ることができると子どもの夢には比較的近づきやすいのですが、この映画が描くのは前例がないことへの挑戦。息子の決意に何も言わず、見守る母親役を南果歩さんが演じています。尚玄さんは土山さんをモデルとした主人公、津山尚生(なお)を演じるため厳しいトレーニングを積んでボクサーの肉体を作り上げ、また、プロデューサーとしてフィリピンを代表する映画監督、ブリランテ・メンドーサに熱意をぶつけ続け、映画化を引き受けてもらい、企画の立ち上げから実現まで8年の月日を費やしました。
努力は身を結び、昨年、第26回釜山国際映画祭において『義足のボクサー』がキム・ジソクアワードを受賞しています。
尚玄さんは今年すでに、中村真夕監督の『親愛なる他人』、吉田浩太監督の『Sexual Drive』が公開されていて、映画俳優として多忙を極めますが、沖縄出身の彫りの深い顔が日本人らしくないと、若い頃は役に恵まれなかった時期があったといいます。尚玄さんの歩みを伺いました。