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キーワードは”TTP”。転職前に「最短距離で自分の価値を上げる」3つのポイント

集英社オンライン / 2022年6月8日 17時1分

研修講師として数多くのビジネスパーソンを指導している岡崎かつひろ氏による、シリーズ「転職前に知っておかないとヤバいこと」。最終回は、これから転職する人が自分自身の価値を高めていくために学んでおくべき3つのポイントをピックアップ。はたして、最短距離で自分の価値を高める方法とは?

賢人と愚人をわけるもの

「天は人の上に人を造らず」といえば、福沢諭吉の『学問のすゝめ』にある一説としてあまりにも有名だ。この言葉は、人間の平等を説いたものだが、岡崎氏は同書から別の言葉を引用し、こう説明する。

「福沢諭吉の『学問のすゝめ』には『されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりて出来るものなり』とも書かれています。つまり人は生まれによって差はついていないけれども、学びによってその差が出るということ。だから我々は、学び続けなければならないんです」



では、転職を考えている人にとって今、学ぶべきことは何なのだろうか。

「まず転職において大事なのは、結果的に自分の価値や能力を高められるかどうか。そのうえで学ぶべきことは、大きく3つあると思っています。1つ目は、お金について勉強すること。

日本では今、年収1000万円ぐらいの方々の破産リスクがいちばん高いと言われています。なぜかというと、ある程度何でも買えてしまうから。ついついローンで欲しいものを買ってしまった結果、月々の支払が増える。でも今の世の中は不安定なので、会社が突然、潰れてもおかしくない。もしくはダウンサイジングで給料が少なくなり、結果的には支払えなくなって破産をする。現実的にそうしたことがあるわけです。

専門的な知識をつけなさいとまでは言いませんが、最低でも『今の収入と支出のバランス』や『将来必要なお金はどのくらいか』『ケガや病気などのリスクが発生したときに、どの程度お金があれば回避できるのか』などの対策は、きちんとしておく必要があるでしょう」

SNSでヤバい投稿はしていませんか?

ところで、TwitterやFacebook、Instagramなど、日常的にSNSを利用している人は、普段どんな投稿をしているだろうか。たとえプライベートでしか利用していないとしても、その投稿は自分自身やほかのだれかにとって有益なものだろうか。岡崎氏は、転職前に学ぶべきことの2つ目としてSNSを挙げている。

「今は社会的な信用がそのままその人の資産になる時代です。評価経済・信用経済という言葉がありますが、これは要するに、その人が今どれだけの信用を蓄えているかによって評価される世の中である、ということ。この社会的信用を計るバロメーターのひとつになっているのがSNSなのです」

こう聞くと、じゃあフォロワー数が多ければいいのか、と早合点しそうになるが、そうではない。

「もちろんフォロワーは多いに越したことはないんですが、ここで大事なのは、自分の投稿が他人から信頼される投稿になっているかどうかです。たとえ匿名性が高いメディアだったとしても、今は何かトラブルがあれば、情報開示請求によって個人名までさらされる時代になっています。なので、匿名情報まで含めて、他人にとって有益で、信用される投稿を心掛けましょう。

もっと言えば、SNSを利用することは自分のメディアを持つということですから、自身のSNSをちゃんと育てて発信力も身につけておくのが理想ですね」

コミュニケーション力と「カッツの理論」

日本経済団体連合会が発表した「企業が社員採用時に求める資質」に関する調査によると、ここ十数年間、第1位に選ばれ続けているのは「コミュニケーション能力」だ。転職前に学ぶべきことの3つ目もまた、この力だ。

「コミュニケーション力が世の中に求められるのは、何をするにも必要になる能力=ベーススキルのひとつだからです。ベーススキルには、問題解決力や課題を設定する力、自分を律する力、自己管理力などがあって、どれも磨いていただきたいのですが、その第一歩として何からやればいいかとなると、断然、このコミュニケーション力になります」

その背景のひとつに、テクノロジーの発達がある。今、人間の専門的な能力のほとんどは、AIや機械工学、業務のデジタル化といった最新技術に取って代わられる時代に入っていると岡崎氏は言う。

「たとえばホームページをつくるとき、ひと昔前までは専門知識がないと難しかった。それが今では、ホームページの雛形を簡単に作成できる『ペライチ』というサービスを利用すれば、ITのスキルがまったくなくても立派なホームページや通販サイトなどがつくれるようになっています。

ですから、専門分野のスキルで一流になると決めている方は別として、そうでない場合はコミュニケーション力をつけるだけつけておいて、困ったらプロの力を借りるという考え方のほうが、経済的合理性が高いと言えるでしょう」

そしてこの“コミュニケーション力最重要説”の根源には「カッツの理論」と呼ばれる法則があるという。まさに転職にも“勝ッツ”この理論とは、企業の人材を「現場層」、「中間管理者層」、「経営者層」の3つに分けたとき、各層で求められる能力が異なるというもの。

「専門スキル、たとえばホームページをつくれるといった能力は、出世するほど必要性が下がります。なぜなら、現場の人に任せられるからです。その代わり、立場が上に行くほどコンセプチュアル・スキル(思考する能力)が求められるようになります。

そして出世しても現場にいても変わらず、ずっと求められる能力がコミュニケーション力。実際、一定のコミュニケーション力が認められないと出世させないという企業も少なくありません」

自己価値を高めるためのキーワードは「TTP」

3回にわたってお伝えしてきた「転職前に知っておかないとヤバいこと」。最後のまとめとして、転職に必要な“自分の価値”を高めるために最短距離でやれるコツを岡崎氏に聞いてみた。

「わたしがおすすめしているのは、うまくいっている人のやり方をそのままコピーすること。これをわたしは“TTP”と名付けています」

岡崎氏はこのTTPが、今後、ビジネスパーソンが転職を自由自在に成功させ、混迷の時代を生き抜くためのキーワードだと語るが、一体、なんの略なのだろうか。

「徹底(T)的(T)にパク(P)る(笑)。結局これがいちばんです。最近は自分らしくやるみたいな考えが流行っていて、初めから自分なりのやり方を見出そうとしてしまう人が多いんですが、それだと遠回りになってしまいます。

そもそも型破りができるのは、基本の型が身についているからこそ。型のない状態で型破りなことをやっても、それはただの形なしでしかありません」

パクる。なるほど。いや、言葉は悪いが真理である。大事なのは成功例の模倣、コピーなのだ。しかし問題は、コピーするモデルを選ぶときの条件だ。その点について岡崎氏は、極めてシンプルに「結果を出しているかで判断すること」だと指摘する。

「もし職場や身の周りに真似る対象が見つからなければ、SNSを活用するのも手です。結果を出していたり、自分もこうなりたいと思うすごい人や尊敬できる人に、ダメ元でもSNSを通してアポイントメントを取ってみてください。たとえば書籍を出している人やセミナーを開催している人の場合、直接連絡すれば返信をくれることもあるはずです」

転職をするにせよ、今の仕事を続けるにせよ、必要なのは「常に自分自身の価値を高めていくこと」なのである。

写真/shutterstock

転職前に知っておかないとヤバいこと♯1 ♯2

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