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動画で新規会員を獲得。NewsPicks Studios「異色のビジネスモデル」

集英社オンライン / 2022年6月7日 7時2分

近年、急成長を続けるソーシャル経済メディア・NewsPicks。その中で、現在『動画』の存在感が増しており、有料会員の獲得に大きく貢献しているという。一体、どのようなビジョン・戦略を持って番組を制作しているのか? NewsPicksの番組制作を担う、株式会社NewsPicks StudiosのCEO・金泉俊輔氏に聞いた。

2013年にサービスを開始したソーシャル経済メディア・NewsPicks。時代の最先端を追い、独自の視点を盛り込んだ記事が情報感度の高いビジネスパーソンの支持を受け、2022年3月末時点で総会員数は約689万人、うち約18万5千人がNewsPicksのオリジナルコンテンツを全て視聴できる有料会員となっている。



そして、NewsPicksのグループ会社として2018年6月1日に設立され、NewsPicksで配信される番組の制作を担っているのが、金泉氏がトップを務めるNewsPicks Studiosだ。

今でこそ、経済メディアがYouTubeなどを通じて動画を配信することは珍しくなくなったが、4年前はまだそのような動きは乏しかった。にもかかわらず、なぜNewsPicks Studiosが立ち上がったのか。

「NewsPicksが掲げるビジョンである『経済を、もっとおもしろく。』を体現するには、動画も必要だったからです。起業家がビジョンを語る時や第一線で活躍する著名人が議論する際の熱量などは、動画の方が伝わりやすい。そこで、経済にエンターテイメントの要素をかけわせて、番組制作を進めました」

この発想は、NewsPicksがターゲットとするビジネスパーソンからさらなる支持を受けることになる。動画プラットフォームの台頭とともに、ビジネスパーソンもスマートフォンで動画を視聴する習慣が身についていたことも大きいだろう。それと相まって、NewsPicksらしい番組が受け入れられていくことになる。

NewsPicksらしい番組とは何なのか? 金泉氏が、その一例を紹介してくれた。

「NewsPicksの番組は、配信中にコメントの投稿が可能です。そして、そこには出演したゲストの方が突如現れることもあります。出演したゲストから、収録の際の裏話など明かされると、コメント欄は盛り上がりますね」

一方向に情報を伝えるのではなく、双方向に情報を発信し合い、ゲストと視聴者の垣根を可能な限り低くすることで、番組がより盛り上がる。かつての映像メディアの常識では考えられない、スタートアップらしい斬新な取り組みといえるだろう。

会員獲得の裏にある、重要なポイントとは?

そんな"らしさ"を持った番組を通じて、NewsPicksの新規有料会員に大きく貢献するなど、メディアの成長に牽引する存在になった。経済誌をはじめとした経済メディアの中では、異色のビジネスモデルと言えるだろう。

しかし金泉氏は、会員獲得の裏にある”重要なポイント”を挙げた。

「確かに、有料会員の獲得は大事なことです。しかし、ポイントはNewsPicksは番組や記事だけでなく、コメント機能や書籍の出版など様々な機能・サービスを提供し、さらに各種SNSを通じて情報発信を行い、これらがエコシステムを形成していることです。ユーザーになりうる方々に対して様々なタッチポイントを用意しており、これにより有料会員獲得を実現しています。またNewsPicks Studiosの番組は、そのエコシステムの拡張にも貢献しています」

NewsPicks Studiosが制作する番組には大きく3つの種類がある。1つは、有料会員の視聴を目的とした番組だ。実業家の堀江貴文氏がMCを務める「HORIE ONE」などがそれに当たる。

もう1つは、先ほど触れた「THE UPDATE」に代表されるスポンサー企業とのタイアップ番組。こちらは無料会員も視聴でき、今後有料会員になるであろう潜在ニーズに応えるのが目的の1つにある。

そして、3つ目が「SNS」を意識した番組だ。例えば、昨年スタートしたカリスマホスト・ローランドをMCに迎えた「New Door」は、SNSを通じてNewsPicksのエコシステムを拡張することを目的の1つに置いている。

「一言で人々を魅了できるローランドさんは、TikTokなどショート動画に向いています。番組で発した名言をTikTokなどで配信して、大きな反響をいただいています」

さらに、NewsPicks StudiosがターゲットにしているプラットフォームはTikTokだけではない。日本でも老若男女問わず視聴するYouTubeでも展開を進めている。

NewsPicksのYouTubeチャンネルの登録者は、2022年5月には51万人を突破。NewsPicksのエコシステムとして機能していることがうかがえる。そして、そこにアップロードされているのは、NewsPicks Studiosが制作した番組のダイジェストがほとんどだ。

しかし、NewsPicks Studiosの取り組みはこれだけに止まらない。なんと、YouTubeオリジナルの番組を制作するため、新たにディレクターを募集しているのだ。なぜ、これほどまでにYouTubeに注力するのか? 金泉氏は、特にコロナ禍以降に浮き彫りになった、あるニーズに応えるためだという。

「YouTubeの動画も玉石混交で、中には情報の信憑性が疑わしいものもあり、その認識はYouTubeを視聴する人たちの間にも広まりつつあります。そうすると、望まれるのはメディアとして認知され、そこが発信するより確かな情報です。このニーズは今後さらに高まるでしょう」

現在、NewsPicksだけでなくテレビ局もYouTubeチャンネルに参入している。その中でも、特にニュースなどを中心に配信するチャンネルは登録者を着実に伸ばしている。金泉氏が指摘するニーズは、映像メディアにとって新たなチャンスになるかもしれない。

メディア不況が叫ばれる中、NewsPicksは2022年度も売上成長率18〜21%を見込む(既存事業の撤退や会計基準変更の影響を除く)。不況などどこ吹く風、さらなる成長を実現する上で、NewsPicks Studiosの番組にかかる期待は大きい。

そして、それを実現するためにNewsPicks Studiosは新たな番組を配信する。金泉氏は新番組について「”コラボレーションによる拡散”と”コミュニティの進化”、この2つがテーマです」と語る。

コラボレーションによる拡散の一例は、今年スタートした「起業クエスト」だ。NewsPicks Studiosと小学館『ピカいちCHANNEL』とのコラボ経済バラエティ番組で、俳優の鈴木福氏が第一線で活躍する起業家からビジネスの極意を学ぶ。

もう1つのコミュニティの進化とは、学びの場をドキュメンタリーで伝えることだ。

「NewsPicksではビジネスパーソン向けの講座を開講していますが、その形式は講師から受講生へ一方的に伝えるだけではありません。両者で議論したり、ケーススタディなどで壁に直面して受講生が苦労することもあります。その様子をドキュメンタリーとして配信して、NewsPicksにはデジタル空間だけでなく、リアルな場(コミュニティ)があることも伝えたい。今回はWeb3.0をテーマにした講座を開講しますが、申し込みが殺到して、すぐに定員に達しました。そこでどんな物語が生まれるか、楽しみにしていただきたいです」

新スタジオから『経済を、もっとおもしろく。』

2018年6月1日に設立されたNewsPicks Studiosは、今年の6月で丸4年を迎えた。テレビ局などと比べれば新興企業で「人・モノ・金」のリソースが限られているのは否めない。

しかし、メディア不況が叫ばれている現代で貪欲なまでに成長を求め、限られたリソースをフル活用して番組を制作する姿は、メディア人のみならず多くのビジネスパーソンに勇気を与えるだろう。

今年の夏に予定されている丸の内へのオフィス移転に伴い、NewsPicks Studiosは念願の収録スタジオを手に入れる。『経済を、もっとおもしろく。』するために、NewsPicks Studiosの新たな挑戦が始まる。

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