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日本一美味しい温泉、まずい温泉はどこ? ハマると深い「飲泉」の世界

集英社オンライン / 2022年6月9日 8時1分

温泉大国ニッポン。環境省によると全国に2934か所の温泉地があり、2万7980か所もの源泉から温泉が湧出しているらしい。人気温泉地の素敵な旅館でゆったり食事と入浴を楽しんで…なんて至極のひと時だが、それだけで満足するのは少々もったいない。あなたの温泉ライフをより充実させる「飲泉」のススメ。

そもそも温泉って飲んでいいの?

「飲泉」とはいっても、どんな温泉でも飲んでいいというわけではない。環境省が定めた温泉利用基準を満たし、都道府県知事又は保健所設置市(区)長の許可を得た温泉であれば飲用してもいいことになっている。

許可を受けている飲泉所には許可証が掲示され、コップや柄杓が置いてあることが多いので、それを目印にすると良いだろう。言うまでもないが、浴槽のお湯を飲むのは衛生上NGだ。


峩々温泉(宮城県)

泉質によっては一定の症状への効用があることも認められており、例えば含鉄泉は鉄欠乏性貧血、二酸化炭素泉は胃腸機能低下が適応症となっている。

昔からよく言われている「貧血なら鉄分を採った方がいい」とか「夏バテの時に炭酸水を飲むと食欲が出る」といった効能を温泉水を飲むことで得ることができるというわけだ。

ただし、持病などによっては飲泉してはいけない場合もあるので、飲泉所に書かれている注意事項を守って適切に飲泉するべし。

飲泉はどこでできる?

飲泉できる場所は全国に数多くある。箱根温泉(神奈川県)や別府温泉(大分県)といった有名温泉地にも飲泉可能な施設が多く存在するし、城崎温泉(兵庫県)のように公共の飲泉所が温泉街に点在している温泉地もある。

伊香保温泉(群馬県)では飲泉所自体が観光スポットとなっており、近くには明治時代に設置された「湯元呑湯道標」もあって、当時から飲泉目的の来訪者が多かったことが伺える。

伊香保温泉飲泉所(群馬県)

効能の面で広く知られている温泉地としては、四万温泉(群馬県)が挙げられる。古来より「四万の病を癒す霊泉」や「日本三大胃腸病の名湯」などと謳われ、国民保養温泉地の第一号として国から指定された温泉地だけあって、飲泉しても胃腸に良いとされている。

各宿泊施設内の飲泉所のほか、公共の飲泉所も3か所あり、やや塩味があって飲みやすい味なので、飲泉初心者にもおすすめだ。

四万温泉 塩之湯飲泉所(群馬県)

自分好みの泉質を探してみる

筆者は、飲泉が「何に効くのか」よりも「美味しいかどうか」の方が重要だと考えている。含有成分の少ない単純温泉は口当たりが良く飲みやすいものが多いが、一方で味気がないとも言える。

泉質(含まれている成分や濃度)によって味や喉ごしが大きく異なるし、湯温や湧出してからの時間によっても味は変化する。飲泉の魅力が感じられる個性的な温泉地をいくつか紹介するので、興味があればぜひ試飲していただきたい。

有馬温泉 炭酸泉源(兵庫県) ©︎一般財団法人神戸観光局

日本三古湯にも数えられる有馬温泉には多種多様な泉質の湯が湧出しており、温泉街から「タンサン坂」と呼ばれる坂を上っていくと、飲泉可能な二酸化炭素泉(炭酸泉)の源泉がある。飲むと少し鉄っぽいエグ味を感じるものの、シュワッとした舌感はまさに炭酸水で、ガムシロップなどの甘味を少し足せばさらに美味しくなりそう。

ちなみに、有馬は日本のサイダー発祥の地とも言われており(諸説あり)、この温泉を使用した名産の「炭酸せんべい」もサクサクしていて美味しい。

三朝温泉 薬師の湯(鳥取県)

世界屈指の放射能泉で、橋から丸見えの河原風呂でも知られる三朝温泉にも、数か所の飲泉所がある。放射能泉は、温泉に含まれるラジウムやラドンなどの放射能が細胞に刺激を与えて活性化させる「ホルミシス効果」があると言われており、飲泉してみると身体の中から力が湧いてくるような気分になれる(あくまでも個人の感想です)。

味自体は特に「ラドン味」を感じることもなく、さっぱりめで比較的飲みやすい印象。

玉川温泉(秋田県)

全国から末期がん患者が集まってくることで有名な玉川温泉。日本一酸性の強い温泉と言われており(pH1.13)、お湯に浸かっているだけで肌がピリピリしてきて、これ…溶ける…?と怖くなってくるレベル。

浴室内に飲泉コーナーがあるのだが、こちらももちろん強酸性。「必ず薄めて飲むように」とか「飲泉した後は真水でうがいしないと歯が溶けるよ」みたいなことが書かれた注意書きが貼られている。

ビビりながら飲んでみると、意外とさっぱりレモン風味。酸味が強くて、やや苦味もあるけど悪くない。飲泉後のうがいは忘れないように。

湯村温泉 荒湯(兵庫県)

全国には神社やお寺の下に源泉のある温泉も少なくないが、湯村温泉の荒湯源泉は、この温泉を開湯したと言われる慈覚大師の像の下にお湯がグツグツと湧き出ており、すき間の穴から柄杓ですくって飲泉するスタイル。

源泉温度が国内トップクラスの98℃なのでとにかく熱いのだが、味はほんのり硫黄が香る程度で、クセがなく飲みやすい。冬場は体もポカポカに癒されて、ありがたい気持ちになれる。すぐ隣の湯壺では野菜や卵を茹でられるので、温泉卵をツマミに温泉をグビっと飲るのも悪くない。

日本一美味しい温泉は…?

味の好みは人それぞれなので一概には言えないが、筆者がこれまでに飲んできた温泉の中で、個人的に一番美味しいと思ったのは小野川温泉(山形県)だ。

小野川温泉 飲泉所

小野小町が病を癒したという伝説があり、メタケイ酸を多く含む「美肌の湯」としても知られる温泉地。地元の誰かが源泉に「だしの素」的な何かを入れているんじゃないかと思ってしまうくらいの強い出汁感があり、例えるならば昆布茶に近いような塩味と旨味の絶妙なバランス。

この温泉水を使ってラーメンを作ったら、メチャクチャ美味いスープができそうだ。この温泉街には(おそらく)2か所の飲泉所があるのだが、旅館組合駐車場の横にある飲泉所の方がより美味しかったような記憶がある。

この辺り(山形と福島の県境周辺)は、山の中にも関わらずしょっぱい温泉が点在しており、温泉水を煮詰めて山塩を生産していたりするエリアなので、探せば他にもまだまだ美味しい温泉があるかもしれない。

かたや、日本一まずい温泉は…!

これまた、人それぞれ意見の異なる所であろうが、実は自ら「日本一まずい温泉」を名乗っている温泉地がある。新潟県の月岡温泉だ。

古くから「新潟の奥座敷」として高級温泉宿が立ち並び、近年は新しいお店が次々とオープンして温泉街も賑わいを見せている人気温泉地。この温泉街の一角にある「源泉の杜」に飲泉所があるのだが、その看板には堂々と「自称日本一まずい温泉」と書かれている。

月岡温泉 源泉の杜

「自称日本一」のお手並み拝見とばかりに飲んでみたところ、これは…確かに相当まずい…。月岡温泉は硫黄成分の濃さが全国2位と言われているだけあって、口に含むとすぐに硫黄のエグみがガツンと来て、しかも後味まで悪い。

国内トップクラスにまずい温泉であることは間違いないだろう。しかし、硫黄泉は生活習慣病に良いとされているので、良薬は口に苦しということで、ありがたく飲ませていただいた。

このように、温泉に入浴するだけではなく飲泉にもチャレンジしてみると、温泉旅行の楽しみがさらに広がると思う。みなさんも自分好みの“お味”を求めて旅に出てみてはいかがだろうか。

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