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アカデミー賞でのビンタ事件…それでもウィル・スミスが愛おしい理由

集英社オンライン / 2022年6月14日 12時1分

ライターとしてだけではなく、編集者としても「ロードショー」にかかわった斎藤香さん。ジャッキー・チェンとの握手から、ナタリー・ポートマンにガン飛ばされた経験まで…いろいろなスターと遭遇してきた中でも思い出深いのはウィル・スミス。暴力事件が話題になった彼をまだ好きな理由って?

ジャッキーの肉厚なグローブみたいな手

「ロードショー」がレーベルとして14年ぶりに復活! 本当にうれしい! 私の編集者&ライターとしてのキャリアは「ロードショー」から始まったので、思い出はあふれるほどあります。何をピックアップしたらいいのか、とても悩みましたが、「やはり読者が知りたいのは俳優たちのことだろう」という結論に至ったので、取材したスターについて印象深かったことを書こうと思います。



私がいちばん最初に会ったスター俳優は、香港が生んだスーパースター、ジャッキー・チェンです。1980~90年代くらいの「ロードショー」をご存じの方ならわかるでしょうが、とにかくジャッキー人気はすごかった! 読者投票で決まる<シネマ大賞>のNo.1スターの常連でしたし、「ロードショー」とジャッキーはとても仲が良かったのです。

読者の人気投票ではつねに上位にランクしていたジャッキー! 当時は授賞式も行われた
©ロードショー1988年6月号/集英社

本物のジャッキーを初めて至近距離で見たのは、80年代。確かその<シネマ大賞>授賞式だったと思います。ジャッキーは受賞者として出席。そのとき、裏方の編集部員のひとりひとりに満面の笑みで握手をしてくれました。

当時、編集アシスタントだった私は、初めて会うスーパースターを前にかなり緊張していたのですが、私の右手が、ジャッキーの大きな肉厚のグローブみたいな手に包まれたとき「あったか~い」と緊張がほぐれ、自然と笑顔に。今でもそのときの手の感触を覚えているほどです。

ちなみにその頃、編集部があった集英社ビルの地下にはスタジオがあり、スターが来日した際にはそこで撮影も行われていました。アシスタントの私は撮影に関わることはありませんでしたが、「今日、スタローンの撮影がある」とか「シェリル・ラッドがスタジオに来ている」とか聞くたびにドキドキしていました。

わざわざスターが出版社のスタジオに足を運ぶなんて、今では信じられません! エンタテインメント媒体が今ほど多くなかったので、取材スケジュールもギチギチに組まれることがなかったんですね。のんびりしたいい時代でした。

家族愛に支えられていたウィル・スミス

ひとときフリーライターになり、また戻って編集部でお仕事をしていたころ、印象に残ったのはウィル・スミス。確か『バッドボーイズ2バッド』(2003)の来日で、合同取材に参加しました。

同作の記者会見にて。左からマイケル・ベイ監督、ウィル、ガブリエル・ユニオン、製作のジェリー・ブラッカイマー
撮影/青柳宏伸

当時、ウィルはすでにスターで、ワガママだのなんだのあまりよろしくない噂も聞いていたのですが、取材はとっても楽しかった。登場するなり、「午前中にショッピングにいって、この靴買ったんだ~、いいだろう」と自慢。財布の紐は妻(ジェイダ・ピンケット・スミス)がガッチリ握っているらしく、自由に使えないようなのですが、「日本に行くから」と、多めにもらったみたいなことを言っていました。

そしてひとしきり雑談が終わると、「じゃあ質問をどうぞ、It's showtime!」とインタビューを自らスタートさせ、たっぷりネタを提供してくれて…「こんなにかっこよくて、いい人だなんて~」と感動。一気にファンになりましたよ。

今年3月の第94回アカデミー賞授賞式では、妻に対して超失礼なジョークをとばしたプレゼンターのクリス・ロックに怒りのビンタを放ったウィル※。暴力は絶対ダメだけど、家族愛が深いあまりに冷静さを欠いて暴走しちゃったんだなあと私には思えました。
1997年に結婚して、ふたりの子供をもうけて、25年経つ今もこんなに愛妻家って…やっぱり私はウィルのファンです。

※同授賞式の本番中、コメディアンのクリス・ロックは、脱毛症のため坊主頭で来場していたジェイダをからかうようなジョークを飛ばし、怒ったウィル・スミスにカメラの前で顔を叩かれた。その後ウィルは『ドリームプラン』(2021)の演技でアカデミー主演男優賞を受賞するも、翌日、SNSで謝罪を表明したのち、映画科学技術アカデミーを脱退。今後10年はアカデミー賞と関連イベントへの出席を禁じられた
Polaris/amanaimages

何度も取材したレオとナタポー

編集者として戻ったとき、担当したスーパースターは、レオナルド・ディカプリオとナタリー・ポートマン。10代の頃のレオは、何度もロードショーの取材を受けていましたが、私が担当になったときはもう超スターだったので、取材は空港、記者会見、プレミアのみでした。

レオはオンオフがきっちり分かれている人で、会見やプレミアではスターとしてまぶしい存在なのですが、空港取材では、完全にオフモード。『ディパーテッド』(07)で来日した際、空港の到着ロビーに現れたレオは、男友達数人と一緒で、なおかつ、バックパッカーみたいな恰好なので、どれがレオだかわからないという……。大声で「レオーっ!」と呼んで、こっちを見たらカメラマンに撮影してもらうという、イチかバチかみたいな取材をしましたね。

記者会見の記事。一緒に写っているのはマーティン・スコセッシ監督
©ロードショー2007年4月号/集英社

ナタリーは、私が担当していた間の来日は1回。『Vフォー・ヴェンデッタ』(06)のとき。このときも空港取材へ行きました。ナタリーが乗った飛行機が到着するのを待ち、カメラマンと一緒に、空港の到着ロビーではなく、取材ができるゾーンのできるだけ人がいない場所で待機。しばらくするとナタリーが出てきたので、「おお、ナタリーが来た!」とカメラマンに教えて撮影してもらったのですが、飛行機から降りたばかりで、いきなりカメラを向けられて嫌だったのか、ガン飛ばされた気が……。それもまたいい思い出です。

そのときのナタリー。写真は笑顔で。当時はスター来日の際には空港取材が定石だった
©ロードショー2006年5月号/集英社

海外ドラマのスターでは、『Lの世界』(04~09)のキャサリン・メーニッヒと、『コールドケース』(03~10)のキャスリン・モリスの取材が印象に残っています。

キャサリン・メーニッヒは超人気だった! 『L』プロモーションで初来日した際、空港で何百人もの女性ファンにキャーキャーお出迎えされて「突然メジャーな人になった気がした」と、まさかの人気に本人がびっくりしてました。

キャスリン・モリスのほうは、「物音とか人の声で気が散るから」という理由で、スタッフを部屋から出して、全集中インタビュー。スタッフを外に出しちゃう人は初めてだったなあ。インタビューもしっかり応えてくれて、とてもありがたかったです。

ほかにも多くの俳優たちの取材をさせていただきました。みなさん協力的で感謝しかありません! 「ロードショー」のような良い紙質&カラーグラビアの映画雑誌は海外にはないので、見本誌を見せると喜んでいただけたことも印象に残っています。

ウェブでレーベルとして復活する「ロードショー」でも、スター俳優たちのキラキラした姿やインタビューが読みたい! そしてメジャー、インディーズ問わず、世界中の良質な作品が紹介され、多くの人を映画館へと導くメディアになってほしいと願います。

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