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高まる男性の「美髪」意識…頭皮と髪の危険サインは?【美髪プロに聞く】

集英社オンライン / 2022年6月9日 10時1分

ツヤなしバサバサ、脂べたべた、フケ、かゆみ、におい、抜け毛…そんな髪の悩みを抱える男子は多い。美髪を追究する美容師で「Hair salon aruca」(福岡県北九州市)のオーナー・三谷遥さんによると、「ここ3カ月の新規のお客様は、男性の比率が50%を超えています。男性の美髪に対する潜在的願望は高いと思われます」という。そこで、男性が自分でできる頭皮と髪のチェックやケアのポイントについて、三谷さんに前後編の2回に渡って聞いた。

男性こそ、少しの手入れで見違える髪に

――昨今の男性の美髪ニーズの高まりには、なにかきっかけや事情があるのでしょうか。

個々のご意見として、「上司がフケをそっとはらってくれたのを機に」「爽やかさは髪から、と妻に言われた」「美髪になった友人の姿を見て」など身近な人の影響という方、「就活時に手入れをしたらきれいになったから続けている」「仕事でイベントがある」とビジネスシーンがきっかけと話す方、「40歳を過ぎてバサバサ感がおさまらない」「抜け毛、やせ毛が大変」「くせ毛がひどくなった」と悩みを改善したい方など、多様です。それぞれのきっかけによって、ヘアケアの目的も明確になります。



ただし、ヘアケアを始めた皆さんが一様におっしゃることがあります。それは、「ちょっと髪に気を配っただけで質感が変わった」「シャンプーをていねいにしてみたら急にきれいになった」ということです。以前は「ただ適当に洗っていただけ」だそうで、そういう方こそ、少しのセルフケアで見違えるように整っていかれます。

――では、美髪とはどういう状態をいうのでしょうか。

主に、毛髪にツヤがあり、指通りがよくサラサラしていて、ハリやコシがある様子を美髪と呼んでいます。見た目に整っていてきれいだということです。ただし、毛髪の美しさをキープする条件は、何よりもまずは根元の頭皮を清潔に保ち、皮脂や汗、フケ、かゆみなどのトラブルがないことです。毛髪の土壌である頭皮の状態がもっとも重要なポイントで、これは老若男女を問わず同じです。

――その条件は、先ほどの男性の悩みとも一致しますね。

そうです。男性からの相談で多いのは毛髪の見た目よりも、「頭がべたべたする」「フケが多い」「におう」「汗が多い」「かゆい」という頭皮のトラブルと、「抜け毛」「細毛」です。次に、見た目に関する、「バサバサ、ボサボサがひどい」「ハリ、コシがない」「スタイルをどうしていいかわからない」「スタイルが決まらない」が続きます。

――そのような男性の頭皮のトラブルはどうして起こるのでしょうか。

主な原因は、「皮脂の分泌量が多い」「汗を放置」「髪が短いので、汚れやシャンプー剤によるダメージが直接影響する」「雑な洗髪法」「紫外線」などです。それに、こうしたことを「放置」することがもっともよくないと痛感しています。抜け毛や細毛の場合はホルモンの影響が大きいのですが、頭皮トラブルもその一因になります。

頭皮の毛穴は顔の数倍ある

――頭皮は顔の皮膚の延長と聞きますが、汗やフケ、においは頭のほうが激しいですね。なぜなのでしょうか。

そもそもの構造は同じです。どちらも、表皮・真皮・皮下組織の三層になっていて、新陳代謝をくり返しています。そのため、顔や体にとっての垢(あか)が、頭皮からはフケとなって排出されます。また、どちらにも皮脂腺、汗腺があり、そこから皮脂や汗を分泌しています。

ただし大きな違いとして、毛穴の数と、毛穴の大きさ、皮脂腺と汗腺の数が挙げられます。毛穴は頭皮のほうが顔の皮膚の数倍あり、しかも、ひとつひとつの毛穴のサイズがかなり大きくなっています。そして、顔や体の皮膚の毛穴からはうぶ毛が、頭皮の毛穴からはうぶ毛より太く硬く色素が濃い毛髪が生えています。

また、頭皮の皮脂腺は全身の部位でもっとも多く、汗腺は手と足に次いで多いといわれます。それゆえに、頭皮は脂っぽくて汗をかきやすいのです。そして、頭皮にも皮膚にも常在菌がいて、皮脂や汗を放置すると、それらをえさにして菌が増殖します。するとさらにフケが出て、においを発するようになるのです。

頭皮と髪の危険サインをチェックする

――頭皮と髪の状態がどうなのか、よいのか悪いのか、自分でわかりますか。

いくつかチェックの方法があります。それぞれの悩みは不調のサインともいえますが、気づいていない方も多いようです。次のことを確認してみてください。

・洗髪後、3時間ほどでべたべたしてくる……皮脂が過剰な状態。

・顔にニキビや吹き出物がある……頭皮も皮脂が過剰になっていると思われる。

・毎日洗髪しているけれど、フケが出る……頭皮に古い角質がたまっている状態。

・頭皮に指の腹をあて、少しずつずらしながら前後左右に動かすと、動きにくいところがある……頭皮が硬い。血流が悪化している。皮膚の新陳代謝に関わる場合も。

・抜けた毛が全体的に細く、コシがない、なよなよしている……毛穴が古い角質で圧迫されていると毛髪はやせる。また表皮の血流不足で栄養が足りない。

・抜けた毛の根元が細い。毛根がない……自然に抜けた毛の根元はふくらんでいるか、毛根がついているもの。生え変わりのサイクルの「成長期」の途中で抜けているため、抜け毛が増える可能性が高い。

・髪がバサバサ、ボサボサだと感じる……髪の表面にあるキューティクルがはがれ、内部の栄養が流出して空洞化している。

――これらは現状を改善するべきサインなのですね。

そうです。これらに加えて美容師は、ご自分でのチェックが難しい「頭皮の色」も観察します。

・「赤み」がある……皮脂や汗の過多、紫外線、シャンプー、パーマ、カラー剤などによる刺激で炎症を起こしている。

・「黄色」に近い……毛穴に皮脂や汚れがたまっている。べたつく、においがする。

・「白い」……頭皮が乾燥していて、角質がはがれてきている。フケやかゆみの原因となる。

・「青白い」……これが健康な頭皮。毛根が地肌に透けて見えている状態。

理想は青白い頭皮で、この色の場合は毛髪の状態もよいことがわかっています。信号と同じで、赤が止まれ、黄は注意、青は進め、とイメージしてください。美容院で確認してもらうとよいでしょう。

バサバサの毛は内部が空洞化している

――先ほどのチェック時に、「キューティクル」という言葉が出てきました。女性にはおなじみの毛髪の要素ですが、男性は意識しているのでしょうか。

言葉はご存じですが、説明をすると、よく、「へえ、考えたことがなかった」と言われます。キューティクルを整えることが、美しい毛髪を作るための基本ケアです。

キューティクルとは0.005ミリほどの薄さで、毛髪の表面をうろこ状に覆って内部を守っている膜です。毛髪の芯は「メデュラ」、中間物質は「コルテックス」といい、その大部分はタンパク質で、脂質やメラニン色素なども少し混在しています。

このキューティクルは大変薄いので、毛髪どうしの摩擦、紫外線、水に濡れる、乾燥、パーマ、ヘアカラー、シャンプーなどの刺激ですぐにはがれてしまいます。はがれると、内部の芯や中間物質から栄養成分が流出して「毛髪が空洞化」し、バサついた毛になってしまうのです。キューティクルをイメージして働きを知っておくと、セルフケアに大いに役に立つでしょう。

――毛髪には体を守る働きもあるそうですね。

ヒトの毛髪には、外部からの衝撃から頭皮や脳を守る役割があります。頭のケガ、傷、紫外線による害、直射日光による炎症などを緩和し、寒いときには保護をします。また、毛髪が抜けることによって、体内に蓄積された鉛や水銀などの有害な微量含有物をも排出しているといわれます。

――男性の美髪事情から、普段は意識をしない頭皮、毛穴、毛髪の奥の深い世界が見えてきました。まずは自分の頭皮の状態をチェックして、こうしたことを理解しておきたいものです。次回の後編では、今日からすぐにできるセルフケア法を具体的に紹介してもらいます。

構成・文 藤原 椋/ユンブル 取材協力・監修/三谷遥 写真/AC PIXTA

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