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念願の“ツンデレ”キャラに配役されるも、声で演ずる難しさに直面…声優・奥野香耶を変えた3つの原点

集英社オンライン / 2022年6月9日 15時1分

2013年に声優ユニットWake Up, Girls!として華々しいデビューを飾った声優・奥野香耶。グループ解散後も躍進を続ける彼女に、声優としての「キッカケ」「始まり」「成長」という3つの原点を聞いた。

空前のアニメブームにより、注目されるようになった声優という職業。最近では、アニメのみならずバラエティ番組やドラマなどテレビへの出演も、ぐっと増えている。

一方、“〇〇の声の人”というイメージが先行し、人となりがあまり見えてこないのも事実。

本稿では、声優たちの【キッカケ】【始まり】【成長】3つの原点を通して、パーソナルな部分に迫りたい。

今回、登場するのは聞く人を癒す高めでかわいらしい地声を持ちながら、大人びた低めの声も出せるなど、幅広い声色を表現する声優・奥野香耶。


2013年に声優ユニットWake Up, Girls!のメンバーとして活動をスタートさせ、同メンバーが主演を務めた同名アニメ『Wake Up, Girls!』の菊間夏夜役で声優デビュー。以来、声優とアーティストの両軸で活動を続けていた。2019年にグループが解散した後もTVアニメ『蜘蛛ですが、なにか?』フィリメス・ハァイフェナス / 岡咲香奈美役などで躍進を続けている。

そんな奥野の1つめの原点【キッカケ】は、声優という職業を意識し始めたのは高校生の時だったという。

声優を志した友人の“とある”一言と、親からの反対【キッカケ】

子どもの頃、多くの人が通るであろう『ちびまる子ちゃん』や『ポケットモンスター』などの国民的アニメに幼少期から触れていた奥野。

中でも大好きだったと話すのは『美少女戦士セーラームーン』。遊んでいたおもちゃも、使っていた枕も、言葉を覚えたのも(※『セーラームーン』あいうえおパソコン)『セーラームーン』だったそうだ。

しかし、この時はまだ“声優”という職業を意識していなかった。

キッカケとなったのは、高校時代に出会った“オタ”という愛称のアニメ好きなクラスメイト。仲を深めていく中で、“オタ”は声優・平野綾を推していると教えてくれた。そして、奥野の声について、“オタ”はこう述べたのだ。

「香耶は声優さんみたいな声だね」と。

当時のことを、奥野は次のように振り返る。

「友達の好きな人って、どんな人なんだろう?と興味が湧いて調べてみたら、平野綾さんが『涼宮ハルヒの憂鬱』で涼宮ハルヒ役を演じている声優さんだと知りました。

さらに“声優さんみたいな声”と言われたものだから、家で声真似をしてみたんですよ(笑)。そしたら、普段の自分とは違った声を出せて“あれ? 私ってこういう声が出せるんだ!”って驚いたんです。

子どもの頃から引っ込み思案で、何をするにも自信がない、得意なことが何か分からなかったけど、“声”が自分の特技になり得るんじゃないかって思えた出来事でした」

そこから奥野は、友人の影響で幅広いアニメ作品に傾倒していった。その中で特に惹かれたのが『新世紀エヴァンゲリオン』の葛城ミサトを演じる三石琴乃さんの演技。

奇しくも大好きだった『セーラームーン』の声を演じていたのも三石だったと知った当時のことを振り返り、「記憶をたどれば、原点は三石さんだったのかもしれません」とはにかみながら話した。

これらの出来事を“キッカケ”に声優の道を志したいと思うようになった奥野は、高校卒業後の進路を決めるタイミングで「声優になるための専門学校へ行きたい」と親に相談する。

ところが、返ってきた答えは「NO」。それは我が子を案ずる親心ゆえの反対だった。

「専門学校に行ったとしても事務所に入れるかも分からない。事務所に入ったとしても、お仕事がもらえるかも分からない。私は家でも大人しい性格だったから、そんな厳しい世界に入ることを心配した上での反対だったんだと思います。それで専門学校は諦めて、四年制大学への進学を決めました」

しかし、高校最後の年、学校の恒例行事で放送部として役割を任された奥野の姿を見て母親は驚くことになった。

「私が普段話しているときの声とは違う声を聞いた母がすごくビックリしたみたいで“香耶ってあんな声が出せるんだね。それはあなたにしかない特技だから、今なら声優になりたいって言ったことが理解できる”と言ってくれたんです。

その言葉が、声優になるのを諦めなかった理由のひとつになりました」と振り返る。

苦戦したオーディション…声優デビューの切符を掴んだ『Wake Up, Girls!』【始まり】

大学へ進学するため地元・岩手県から上京した奥野。

そのころの声優界といえば、放課後ティータイムやスフィアなどの声優ユニットの結成が相次いでいた。

芝居だけではなく、楽器を持ったり、歌ったり、踊ったりーーそんな声優たちの姿を見て「声優って、何にでもなれるんだ!」と奥野は“声優”という職業により魅力を感じていった。そして、大学に通いながら声優のオーディションを受け始めるようになる。

最初に受けたのはゲーム『探偵オペラ ミルキィホームズ』のオーディション。悔しくも二次審査で落選したこのオーディションで選ばれたのは同い年で同郷(岩手県)出身の佐々木未来だった。

この事実を奥野はネガティブに捉えなかった。佐々木との共通点が「自分も声優になれるかも」と大きく確信づけたという。

そして2回目に挑んだのが、2012年に大手レコード会社エイベックスと声優事務所81プロデュースが開催したアニソン・ヴォーカルオーディションだ。後に奥野がメンバー入りを果たすWake Up, Girls!の先輩グループ i☆Risのメンバーを決めるオーディションだった。

残念ながら、ここでも選考に進むことはなかった奥野。しかし、このオーディションを受けたことがキッカケで翌年開催した第2回アニソン・ヴォーカルオーディションにも挑戦。そこで見事、声優デビューの切符を掴んだ。

これが声優としての【始まり】の原点だ。

念願の声優になった奥野だが、全てが想像通りとは行かなかった。

Wake Up, Girls!は当初、二次元のキャラクターと三次元のキャストを重ねる“ハイパーリンク”をスローガンに掲げた声優ユニットだった。

奥野が演じた菊間夏夜は、大人っぽくクールな性格でメンバーの中でもお姉さん的な存在。また、奥野はメンバーの中で最年長。この立ち位置に「最初はすごく戸惑った」と打ち明けた。

「私には兄と姉がいたし、身長が小さかったこともあって、人生であまりお姉さんとしての立場を経験したことがありませんでした。だけどWake Up, Girls!になってからは、お姉さん扱いをされることが増えて。それが嫌でちょっと抵抗してみたこともありました」

キャラクターと自分に乖離を感じていた奥野。さらに、「自分に合うと思っていた声とは全く違う声を演じることへの違和感も拭えなかったんです」と話す。

「声優になる前は自分の声質を生かしたキャラクターを演じてみたいと思っていました。ツンデレっぽいキャラクターが合っているな、演じてみたいなって。

だけど、夏夜は低めの大人っぽい声だったんです。そっちの声が評価されて、すごく嬉しい反面、複雑な気持ちにもなっていました」

しかし、見出された新しい自分を受け入れさせてくれたのもまたWake Up, Girls!だった。2017年に上演された舞台『Wake Up, Girls! 青葉の記録』で同役を務めたとき、奥野は演じることの楽しさにようやく気付くことができたという。

「アニメの絵を通さず、自分自身のまま夏夜を演じることになった時“私は夏夜じゃないんだ!”ってようやく気づきました。ハイパーリンクだけど、“私と夏夜は違う人間で私は私!”って思っていたはずなのに、無意識のうちに夏夜のようにならないと……と思っていたなって。

そこから抜け出せたことで、夏夜を演じる自分を受け入れることができたんです」

念願のキャラを演じるも、声優の難しさを実感した『ハナヤマタ』【成長】

奥野に「声優として成長した」原点を尋ねると、Wake Up, Girls!と合わせて、2014年7月期に放送されたアニメ『ハナヤマタ』と答えてくれた。奥野が声優デビューして2作目の出演となったアニメだ。

同作で演じた笹目ヤヤは、奥野念願のツンデレキャラクター。自身の地声を生かせるキャラクターだったが、思い通りにいかず苦しむ結果となった。

「いざ演じてみたら自分の思うように全くできなくて……。演技の基礎が身についていない状態で現場に入って、何度も録り直して、周りの方たちにもすごくご迷惑をかけてしまいました。

声優さんって楽しいだけじゃない、すごく難しい仕事なんだって気づかされた作品です」

さらに奥野は「念願のキャラクターを演じることへの喜びと同じくらい、プレッシャーも感じていました」と話す。「上手く演じなければ」という義務感もまた、思い通りにいかなかった理由の1つだろう。

「ヤヤちゃんというキャラクターが大好きだったし、ヤヤちゃんは完璧な女の子だったから“私も完璧になりたい!”と思っていたんです。

だけど結局、ヤヤちゃんに追いつくためにずっと足掻いていただけだったかもしれません」

この悔しさが、奥野に気づきを与え、声優として【成長】させてくれた。

奥野は当時を振り返る。「今思い返すと、この時から(Wake Up, Girls!での)夏夜はすごく演じやすかったんだなって」と。

「あの頃は大人っぽい声を演じることがすごく嫌で、マネージャーさんにも相談していました。その時、“私は香耶が出す低い大人の女性の声がすごく好きだよ。それはあなたの武器だから大事にした方がいい”って言ってもらったんです。

でも当時はそれを受け入れることができなかった。今やっとその言葉が理解できるようになりました」

2022年6月にはSpotify限定でPodcast番組「STARRY NIGHT」を配信する奥野。

これまでにもラジオ番組のパーソナリティを務めてきたが、ソロでの出演は初の試みだ。新しい挑戦であると同時に、このPodcastは奥野にとって「原点回帰」でもあるという。奥野の出身地であり、Wake Up, Girls!の聖地でもある「東北」と向き合うコンセプトのもと、番組制作が行われているからだ。

2019年に行われたWake Up, Girls!の解散ライブで誓った約束を、ようやく果たす時が来たのだ。

「解散ライブのMCで“このコンテンツが終わっても、私がみんなを絶対に東北へ連れて行くからね”と話したんです。解散後には地元・東北の復興支援のために、私自身も企画を考えたりして。それを楽しみに待っていてくれた人たちもいました。

だけど、そのあとすぐコロナ禍になり、現地へ行くことも難しくなってしまって……悩んでいたタイミングで、このPodcastのお話をいただきました。また私が、みなさんと東北を繋げられることが今はすごく嬉しいです」

奥野は番組のテーマソング『星のカフェテラス』の歌唱も担当する。「リスナーのみなさんを癒せたらいいなと思って歌いました」と優しく微笑んだ。

Wake Up, Girls!という1つの原点に立ち返る中、1人の声優として歩みを進める奥野はどんな声でどんな話を聞かせてくれるのか。このPodcastで奥野の新しい原点を目撃するかもしれない。その瞬間に、みなさんも立ち会ってみてはいかがだろうか。

取材・文/阿部裕華
撮影/小川遼

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