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二日酔いを防ぐ賢い飲み方 名医が教える!一生健康で飲むための必修講義

集英社オンライン / 2022年6月16日 18時1分

酒が大好きな人。健康にちょっぴり不安を感じている人。下戸だけど人体のしくみに興味がある人。アフターコロナに備えて今こそ読みたい科学の知見が満載の『名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必修講義』(日経BP)から一部抜粋・再構成してお届けする。

色のついた酒のほうが二日酔いになりやすい理由

二日酔いのメカニズムはまだ分かっていないが、アルコール依存症の「禁断症状のミニ版」ともいえる症状が起きているという説がある。そう聞くと、二度と二日酔いにはなりたくないと切に願う。

もちろん、飲み過ぎるから二日酔いになるということは十分に理解している。二日酔いにならないためには、飲み過ぎなければいいだけのことだ。だが、それができないときもある。同じ量を飲んでも、体調のせいなのか二日酔いになったりならなかったりする。二日酔いになるメカニズムは、さまざまな要因が複雑に絡んでくるものなのだろう。



そもそも、二日酔いになるギリギリまで飲もうとするのがいけないのである。なるべく余裕をもって杯を置けばいいだけのことだ。もう若くないのだから、サッと切り上げてお開きにすれば、二日酔いになる確率はグッと減るだろう。

だが、それを頭では理解していても、できないのが酒飲みの性だ。ここはひとつ、恥を忍んで、先ほど「二日酔い=禁断症状のミニ版」という説を教えてくれた久里浜医療センター名誉院長・樋口進さんに、二日酔いになりにくい飲み方について聞いてみよう。

「よく分かっていらっしゃると思いますが、大前提として飲み過ぎは禁物。二日酔いの詳しいメカニズムはまだ未解明ですが、『飲み過ぎ』によって起こることは間違いありません。基本は、酒量を抑えることです」(樋口さん)

このように前置きしつつ、樋口さんは、酒の種類によって二日酔いの度合いが変わってくることがある、と教えてくれた。

例えば、色がついている酒とそうでない酒、そして醸造酒と蒸留酒によって、二日酔いのなりやすさが違う傾向があるそうだ。

酒の色については、「ウイスキーとジンを、同じアルコールの濃度・量を飲んだ場合、ウイスキーのほうが二日酔いが起こりやすいという報告があります。また、赤ワインと白ワインを比較すると、赤ワインのほうが二日酔いになりやすいという報告があります」(樋口さん)

確かに、赤ワインのほうが白ワインよりも二日酔いになりやすいというのは、個人的な経験からも納得のいくところだ。だが、なぜなのだろうか。

醸造酒より蒸留酒のほうが二日酔いリスクは低いが…

樋口さんは「色のついたお酒のほうが、お酒に含まれる成分が多いことが原因」だと話す。お酒に含まれる、水とアルコール(エタノール)以外の成分は「コンジナー(不純物)」と呼ばれる。

初めて耳にする人も多いであろうコンジナー。水とアルコール以外の成分を指すコンジナーは、酒の風味や個性を決める重要な要素になる。だが樋口さんによると、基本的にコンジナーが多いお酒のほうが二日酔いを招きやすいのだという。

蒸留酒に比べ、醸造酒のほうが二日酔いを起こしやすいといわれるのも、同様に、コンジナーの量で説明できるという。

「蒸留酒は、醸造酒を蒸留して製造されます。この蒸留過程により、アルコールの濃度が高まると同時に、コンジナーは大幅に減ります。蒸留酒は翌日残りにくいといわれるのも、この影響が大きいのではないかと考えられます」と樋口さんは話す。

ということは、個人差(体質)もあるだろうが、大きな傾向として「色のついたお酒より透明なお酒」「醸造酒より蒸留酒」を選んだほうが二日酔いのリスクは減らせるということか。となると、透明な蒸留酒である本格焼酎などは最適ではないか。樋口さんに聞いてみると、「そもそも蒸留酒はアルコール度数が高いので注意してください。二日酔いのリスクが低いからといって飲み過ぎては元も子もありません。二日酔いの最大の原因は飲み過ぎですから」と釘を刺された。

ほかにも酒を選ぶ際のポイントはある。スパークリングワインやビール、ハイボールといった炭酸系の酒は、「胃の蠕動運動が促進されることで腸でのアルコールの吸収が促進され、血中アルコール濃度が上がりやすくなります。そのため、酔いやすくなるので注意が必要です」と樋口さん。

また、酒とともに水(チェイサー)もきちんととるようにする、蒸留酒などアルコール度数の高いお酒は、水で割って飲むといったことも実践するとよいそうだ。

「空きっ腹にハイボール」は危険

血中アルコール濃度が急に上がると、歯止めが利かなくなり、結果として飲み過ぎてしまうことが多い。「これぐらいで止めておけば二日酔いにはならないだろう」と判断できる理性を保つには、血中アルコール濃度が急激に上がらないよう、ゆっくりとしたペースで飲むことが大切なのだ。

「加えて、食べながら飲むことも、血中アルコール濃度を急に上げないために必須です。食べながら飲むことは、低血糖状態を防ぐことにもつながります。二日酔いを助長する 要因のひとつに低血糖があります。そして、同じく助長要因である脱水症状を防ぐため にも、お酒を飲みながら水も飲みましょう」(樋口さん)

空きっ腹に飲むハイボールのおいしさったらないのだが……。二日酔いを回避するためには食べてから飲むのが基本である。では、予防の効果もなく、二日酔いになってしまったときには何が効くのだろう?

「まずは水分の摂取です。そして糖分です。二日酔いの気持ち悪い状態から少し回復しつつあるとき、甘いものをとると調子が良くなるケースがよく見られます。このことから、私はオレンジジュースを勧めています。ゆっくりですが血糖値が上がります。脱水症状と低血糖の解消というダブルの効果が期待できます」(樋口さん)

果物などに含まれる果糖(フルクトース)は、昔からアルコールの分解を早めることが知られているのだそうだ。オレンジジュースはこの果糖を多く含んでいることもあり勧めているのだと樋口さんは話す。

ちなみに、二日酔いを改善しようとサウナに行く人がいるが、あれはどうなのだろうか。

「汗をかいてもお酒は抜けません。さらに脱水症状を促進させてしまうので、むしろ危険です。不整脈のリスクも高まります。絶対にやめましょう。お風呂も同様です」(樋口さん)

私の周囲の酒豪は、「酒が抜けないからサウナ行ってくる」というタイプが多い。私もサウナに行けば「汗をかいて酒が抜け、二日酔いが治る」と思っていたが、どうやら正反対のことをしていたらしい。

樋口さんによると、サウナや風呂は「さっぱりすることで、酒が抜けたと勘違いしてるだけ」とのこと。二日酔いの何よりの特効薬は「水分や糖分をとって、安静にしていること」なのである。

いつまでも健康でいられる「適量」はある? #1
飲んでも太らない!? 糖質ゼロビールが誕生!
#3

『名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必修講義』(日経BP)

葉石かおり(著), 浅部伸一 (監修)

2022年3月17日

1650円(税込)

単行本ソフトカバー 296ページ

ISBN:

978-4-296-11187-9

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