1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ファッション

“完璧な服”ワークマンのレディースサロペットが、音楽好きにとって由緒正しき服でもある理由

集英社オンライン / 2022年6月10日 11時1分

安くてカッコよくて実用的で…もはやその理由を説明する必要がないほど、人気ブランドとして定着した「ワークマン」。作業着として生まれたアイテムたちからおしゃれ着に成り代わったものは数知れず。こだわりのコラムニスト・佐藤誠二朗氏がハマったのは……

完璧な服を見つけてしまった。
それはワークマンの「レディースガーデニングサロペット」

「この服、完璧……」と感嘆するほど、よくできた服を見つけてしまった。
それは、ワークマンの「レディースガーデニングサロペット」。
もう今や、毎日着てもいいくらい気に入っているのです。

早くも「なに言ってんだ? このオヤジは」と思われたかもしれない。
そう、御年52歳、すっかり仕上がったおっさんの僕がめちゃくちゃ気に入って皆にオススメしたいと考えている服は、よりによって“レディース”なのだ。



決して“目覚めた”わけではない。
この服は女性ものとされてはいるものの、無骨な雰囲気のデザインで、男性が着てもまったく問題なし。
むしろワークマンさんがなぜ“レディース”と限定しているのか、そっちの方が不思議なくらいなのだ。
せめて“ユニセックス”としてくれていたら、僕ももっと早く見つけられたのに。

と言うのも、僕はこの服の存在を妻から教えてもらったのだ。
家でペンキを塗る用事があったある日、妻が見たことのない作業着を着ていた。

ある日の妻

直感的にいいじゃん!と思った僕は、妻に尋ねてみました。
僕「その服、何?」
妻「いいでしょ〜」
僕「うん、悪くない。もしや?」
妻「そう。ワークマン!」
僕はさっそく近場のワークマンに走り、自分用に一着買ってみた。
そしたらまあすっかり気に入り、ハマってしまったというわけなのだ。
しかも値段はたったの2900円(税込)!

いやはや、やっぱスゲエなあワークマンは。まだまだその勢い衰えず、ですなあ。

さっそく真似して買ったサロペット

このサロペットでまず特筆すべきなのはポケットの多さだ。
iPadも難なく入る特大のものから、小さなペン差しまで含め、実に15もの(!)ポケットがある。
基本的にガーデニング用として作られた服なので、庭作業で必要な細々とした道具をみんなポケットに詰め込んで動けるようになっているらしいのだが、日常着に転用したらカバンなど持つ意味がなくなってしまうほどだ。

随所に施された大小様々なポケット

僕はこのサロペットをガーデニングではなく、DIY作業をするときのために買ったのだが、ポケット盛りだくさんの機能性に感動し、もはやちょっとした外出時などにも躊躇なく着ていくようになっている。

ナイロン製パーツは、スナップボタンで取り外しでき、体の前側にも後ろ側にもつけられるようになっている

サイズ展開は少ないが、調整幅が大きくゆったりめの作りなので大丈夫

ワークマン・サロペットの第二の特筆ポイントは、作業着であるにもかかわらず、デザインもカラーも秀逸で、普段着としてもおしゃれなところだ。
と言っても特殊な服であることには違いないので、人によっては「こんなもん着られるか!」と思うかもしれない。
でも街では無理だとしても、バーベキューやキャンプ、釣り、それに登山などのアウトドアシーンでは、きっと活用できるのではないかと思う。

日常着としても全然OK

ちなみに僕はミリタリーっぽくてかっこいいなと思ったのでグリーンを選んだが、このサロペットは3色展開で、妻が選んでいた黒のほかにもベージュがある。
僕は洗い替え用にベージュをもう1着……と狙っているのだが、どうもコチラ大変な人気商品となっているようで、この原稿を書いている6月上旬現在、どの店舗にも見当たらないし、ネットでも「売り切れ」となっている。
ワークマンさんもきっと売れ筋商品として一生懸命増産しているだろうから、待っていればまた市場に出てくるだろう。
そしたら僕は、すかさず買いに走るつもりだ(皆さんもお早めに)。

レディースだけど男性にオススメしている行きがかり上、サイズ感についてもお伝えしなければならないが、このサロペットにはMとLの二種類しかない。
Mは身長150〜160cm、Lは155〜165cmと設定されているので、この時点で「自分は着られないな」と思う男性も少なくないだろう。

僕は身長165cmのチビっ子なのであまり参考にならないかもしれないが、Lサイズで余裕をもって着ることができた。
肩にかける2本のストラップで長さ調節ができるので、表記以上に幅広い体型をカバーできるようなのだ。
生地はストレッチが効いているし、作業着という性格上、胴回りはゆったりな作りなので、比較的恰幅のいい男性でも窮屈せずに着られそうである。

妻のサロペット(黒)と僕のサロペット(グリーン)。ペンキで汚れても様になる

そもそもサロペットってどんな服?

ところで、そもそもサロペットって何? オーバーオールと何が違うの? という疑問を持たれる方もいるのではないだろうか。
調べてみたところ、同じように肩ひもがつき、胸元を覆う布がついている作業用ズボンで、背中の部分にも布があるのがオーバーオール、背中の部分が大きく開いているのがサロペットと呼び分けられているらしい。

しかしその呼び分けも実は日本限定のもので、さほど厳密ではない。
このワークマンのサロペットにしたって、背中の部分にしっかりと布がついているではないか。
実は両者は本来同義語で、オーバーオールは英語、サロペットはフランス語というだけの違いなのだ。

オーバーオール=サロペットと呼ばれる作業着が誕生したのは、19世紀後半、西部開拓時代のアメリカだ。
当時はカリフォルニアで大規模な金脈が発見されたことにより、アメリカ国内はもちろんヨーロッパからも一獲千金を夢見る人々が西部を目指した、いわゆる“ゴールドラッシュ”の時代でもあった。
オーバーオール=サロペットとは、砂金を求めて泥まみれになって働く労働者のために開発されたワークウェアで、テントなどに使われる丈夫なキャンバス生地の胸当て付き作業パンツが原型になったのだという。

そんな原点へ思いを馳せ、ワークマンのサロペットは、やはり都会よりも田舎で過ごしているときにいっそう着たくなる。
僕は東京と山梨に家を持つ二拠点生活者だが、サロペットが大活躍するのはもっぱら山の家に行ったときで、現地ではここのところ、ずっと着っぱなしの状態になっている。

そして僕にとってオーバーオール=サロペットとは、好きな音楽ジャンルであるサイコビリーの源流にあたる、“ヒルビリー”のスタイルというイメージだ。
ヒルビリーというのはもともと、アメリカの山間地域であるアパラチアやオザークに住む“田舎者”を指す、やや差別的ニュアンスを含む言葉。
田舎で自由かつ無秩序な生活を送り、貧乏で学がなく、汚れたオーバーオールを着て乱暴な言葉を使い、気に入らないことがあると銃をぶっ放す人たち、これがヒルビリーのステレオタイプである。

良い感じでやれた“ヒルビリー”な人たち photo by Tim Vrtiska/flickr

ネガティブな印象ばかりと思えるかもしれないが、息苦しい都会生活を送る近代アメリカ人にとって、素朴で自由、豪快なヒルビリーは、差別対象であるとともに一種の憧憬の対象でもあった。
ヒルビリーへの憧れは、彼らが作った独特の音楽を、アメリカ全土のポップカルチャーに押し上げたことでもわかる。

20世紀前半から彼らが奏でていた音楽は当初、アパラチアミュージックやマウンテンミュージック、あるいはヒルビリーミュージックと呼ばれていたが、1940年代にはカントリーミュージックという呼称で定着し、21世紀の現代でもアメリカ人の郷愁を誘う音楽として広く親しまれている。

カントリーミュージックが定着する一方、1950年代にはヒルビリーミュージックをロックンロールと融合させたロカビリーが生まれ、1980年代にさらにパンクが融合してサイコビリーが生まれる。

つまり何が言いたいかというと、僕が好きな音楽ジャンルのひとつであるサイコビリーにとってオーバーオールとは、ルーツを感じさせる由緒正しい服装だということだ。

まあ、そんなこたぁ、2022年のワークマン製サロペットには何の関係もない話なのだが。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください