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給与減、仕事増、会社はブラック企業に? 知られざる「週休3日制」の落とし穴

集英社オンライン / 2022年6月12日 11時1分

大手企業から中小企業まで、週休3日制を導入する動きが加速している。はたして「4日働いて3日休む」という新たな働き方は社員を幸せにするのだろうか? すでに週休3日を実現している企業の社員に話を聞くと、決してそうとはいえない現実が見えてきた。

5年間で導入企業が4倍に

NEC、日立製作所、パナソニックホールディングスなど、昨年から週休3日制の導入を打ち出す企業が増えている。さらに近年は、地方の中小企業でも週休3日制にシフトする動きが加速しているという。

週休3日に特化した求人ポータルサイト『週休3日.com』を運営する採用・人事コンサルティング会社・株式会社週休3日の永井宏明社長がこう話す。

「全国のハローワークで扱われている週休3日制の正社員の求人情報を見ると、5年前にはわずか500件足らずだったのが、現在では2000件超に。全体の数からみればまだまだ少ないものの、約4倍と右肩上がりで増えています」



週休3日制は、大手では日本マイクロソフト、佐川急便、電通など一部の企業ですでに採用されているが、中小企業では、「医療・介護業界や運送業界を中心に、特に人手不足が顕著になっている事業者が導入するケースが目立つ」(永井氏)という。

「本来、週休3日制は自社のビジネスの付加価値を高めるために、いかに社員一人ひとりの労働生産性を高める仕組みを構築していくか、という経営戦略と直結したものでなければうまくいきません。

しかし最近は、人手不足の企業が『週休3日で求人を出せば、応募者が増えるんですよね』などと安易な考えで導入するケースも少なくない。これでは、表向きは週3日休みだけど、その内実は休みづらかったり、休むと上司や同僚に嫌味を言われるような、名ばかりの週休3日制となる恐れがあります」

週休3日制導入も「希望者ゼロ」の理由

では、すでに週休3日制を実現している企業の実例を見ていこう。

東海地方で十数軒の薬局を展開するA社では、5年前に週休3日制を導入。特徴的なのは選択制であることで、社員が従来のまま週休2日で働くか、週休3日にシフトするかを選べる形にした。その結果、何が起こったか? 同社の人事担当者がこう話す。

「求人を出すと、それまではほとんど見受けられなかった県外からの応募者が増えたほか、大都市圏から移住して入社した人も数名います。やはり週休3日制は子育て中の人や、余暇を充実させたいという人には根強いニーズがあると感じました」

だが、このA社では約30名の正社員のなかで、週休3日で働く人はわずか5名にとどまったという。しかも、その5名は週休3日制導入後に入社した人ばかりで、導入前から勤務していた社員は誰ひとり、週休3日の働き方を選択しなかったのだ。一体、なぜ?

「当社の週休3日制は『給与削減型』なんです。つまり、週の休みが2日から3日に増えたことで月の労働時間が2割程度減る分、基本給も2割下がります。このご時世、給与を下げてまで休みを増やそうと考える社員は誰もいなかったんです」

日立製作所やパナソニックも選択型の週休3日制を導入する方針を示しているが、選択制にすると、社内に週休2日の社員と週休3日の社員が混在する形になる。そのときに起こりうる問題について、都内の人事コンサルティング会社の社長がこう語る。

「週休3日の社員が平日に休むと職場の業務に穴が空き、週休2日の社員がフォローするケースが出てきます。これが重なると『なんで俺が週休3日の社員の面倒を見なきゃいけないんだ!』と不満が募り、社内で分断が生まれることに。特に『週休3日はズルい』という日本的な企業風土がいまだに残るような会社だと、なかなかうまくいかないでしょう」

優秀な社員しか「週休3日」に対応できない

一方、選択制ではなく、全社員を対象に週休3日制を導入したあるIT企業ではこんな問題が起きていた。同社の社員がこう打ち明ける。

「ウチの会社は週休3日制導入後も給与は以前と変わりません。しかも1日の労働時間も週休2日の時と同じだから、最初は『なんていい会社なんだ!』と思いました。でも、今は週休2日の方が良かったと思っています。それは働く時間が減っても、仕事の量やノルマは変わらないから。

より少ない時間で従来と同じタスクをこなさなきゃいけないということは、自分の仕事のパフォーマンスを上げるしかない。優秀な社員はこれについていけますが、要領が悪い社員は休憩を削り、昼休みも働き、それでも間に合わなければ家に持ち帰って仕事をせざるを得ないんです。

でも、職場の上司は『仕事を家に持ち帰っては週休3日制の意味がない。もっと集中力を上げろ、仕事を効率的にやれ!』とプレッシャーを掛けてくるので、徐々に心の余裕がなくなっていって……。

結局、週休3日で成果を出せる社員は給与が上がり、成果を出せない社員は給与が下がる。はっきりいって週休2日制のときのほうが平和だったし、幸せでしたね」

残業減らしを目的に導入する企業も

さらに、週休3日制にはこんな負の側面もあると、前出の人事コンサルティング会社の社長がこう話す。

「経営者の狙いとして、残業代を減らすために週休3日を導入するケースがあります。これは、休みを週2日から週3日に増やす代わりに、1日の所定労働時間を8時間から10時間に増やす〝圧縮労働型〟の週休3日制を導入する企業にありがち。

この場合、例えば繁忙期に1日12時間働く日があったとして、以前の1日8時間勤務ならば4時間分の残業代が付いていましたが、週休3日導入後は2時間分しかつきません。それもあってか週休3日制の導入と同時に副業を解禁する企業も多いのですが、これで年収が上がったという人はほとんどいないでしょう」

一般的には「休みが増えて家族と触れ合える時間が増えた」「スキルアップのための勉強の時間を確保できるようになった」など、プラスの側面が語られることの多い週休3日制。今後、ますます導入する企業は増えそうだが、プラス面だけでなく、こうしたマイナス面も知っておくべきだろう。


写真/shutterstock

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