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高卒5年目の村上宗隆と清宮幸太郎はなぜ、こんなに差がついたのか?

集英社オンライン / 2022年6月11日 16時1分

ともに左打ちのスラッガーで、高卒5年目のドラフト1位。村上宗隆(ヤクルト)と清宮幸太郎(北海道日本ハム)には共通点が多い。だが、昨季ホームラン39本でタイトルを獲得した村上に対して、清宮はいまだプロ通算28本。なぜ、こんなにも差がついてしまったのか? 近鉄、ヤクルトなどでコーチを務めた野球評論家の伊勢孝夫氏が解説する。

今の清宮はホームラン打者ではない

率直に言って今の清宮は、ホームラン打者ではないと感じる。高校時代はそうだったかもしれないが、少なくとも現状、プロにおいてはホームラン打者ではない。

確かにパワーは健在だ。5月28日、巨人戦でも2打席連続で飛距離十分のホームランも打った。だが私はそれを承知の上で、今の清宮にはホームランの量産は無理だと見ている。かりに1年間フル出場できたとしても15本打てるだろうか。20本、30本は厳しい。



その点、村上は順調すぎるくらいの成長だ。今の状態なら去年同様、あるいはそれ以上の本数を残すだろう。ではなぜこんなに差がついたのか。

ポイントは3つある。
まずはインパクトの瞬間の違いだ。本来、ホームラン打者はボールを捉えた瞬間、とくに低めのボールはバットで「拾う」ような感覚で打つ。「乗せて運ぶ」といった表現をすることもあるが、いずれにせよそうしたスイングだと打球は伸び、角度がついて上がる。

村上はたとえフォームが崩されてもしっかり拾える技術がともなっていて、それは豪快、かつ綺麗な放物線が証明している。

だが、清宮はこの「拾う」感覚がなく「叩く」感じだけなのだ。パワーはあるから真芯に当たれば飛んでいく。しかし、多くの打球はヒットになってもスタンドインするのに必要な角度がない。

早実から入団した年、私は春季キャンプで清宮の特打を見る機会があった。時間にして十数分だろうか。それでも彼は17本、スタンドインさせていた。見事にボールを拾うように捉えていた。そのスイングが今はない。

プロの投手のスピードに対応するため、飛ばすことより当たることを優先させてきたからか。この4年間で毎年のようにフォームが変わっていることも考えあわせると、悩んだ末にミート中心のスイングになったのではないか。

甘い球を「一発で仕留める技術」の差

ふたつめは、打席での投手に対する際の意識だ。例えばスタンス。村上を見ていると、対右投手相手ならややクローズドタンス、左投手ならややオープンスタンスと、相手投手の左右によってわずかだがスタンスを変えている。

これなら外角に投じてくるストライクも、しっかり腰を入れてセンターからレフト方向に弾き返せるし、内角球も差し込まれることなく引っ張れる。いわば工夫だ。

その点、清宮にはそうした工夫が見られない。右投手でも左投手でも、同じように立っている。無論、それが悪いわけではないが、パワーに頼るだけのスイングだから、ホームランが出る確率もぐんと下がってしまうのだ。

また、清宮はミスショットも目につく。これが3つ目のポイントでコンタクトの精度、いわゆる「一発で仕留める技術」の違いだ。

例えば甘いボールが来た時、村上は待っていたかのように素早い身体の回転で叩くが、これができるのは、それだけバットコントロールに秀でているということ。対照的に清宮は「貰った!」とスイングし、打ち損じてファールになり首をひねる、といったシーンをよく見る。

この違いが顕著に表れるのが、試合前のトスバッティングだ。コーチなどがボールをトスして打者がネットに打つ練習をご覧になったことがあるだろうか。軽くコツン、コツンと打っているだけに見えるが、本来、苦手なコース、高さを矯正するのに役立つ練習なのだ。

あれは93年。私がヤクルトにいた際、西武との日本シリーズで、清原和博が丁寧なトスバッティングをしていたのを見たことがあった。高め、低め、外角、内角と、実に丁寧に打ち分けていた。横で一緒に見ていた野村克哉監督が

「日本シリーズのような特別な試合前でも、清原クラスは日々やる地味な練習をしっかりやっているんだな」

と感心していたのが印象的だった。それ以降、ヤクルトでもトスバッティングをただの準備運動ではなく、練習として徹底的にやらせるようにしたのだが、昨今は準備運動程度のつもりでやっている選手がなんと多いことか。

新庄監督は清宮をどう育てるつもりなのか?

ただ、清宮にも同情する余地はある。日本ハムは新庄監督の考えから、3球目までのストライクは必ず振りに行け、というような指示が浸透している。積極性は良いが、私はタイプによりけりだと思う。

清宮のようなじっくり構えるタイプなら、むしろ配球を読ませて勝負すべきではないか。今の清宮は相手投手とではなく、自軍のベンチを意識して打席に入っているように見えることもある。

また、監督の命令でオフに減量したとか。確かに腰のキレはスムーズになったかもしれないが、ホームラン打者としてのどっしり感はなくなり、怖さが減った。新庄監督は清宮をどう育てようと思っているのか。ミート主体でホームランはヒットの延長、といったイメージなのだとしたら、私は逆のように思う。

経験上、高卒でプロ入りした野手の場合、伸びるのは4年目くらいまでだ。その後は、どうしても伸びしろは減ってしまう。村上は理想的に、期待通り育った。ジャパンの4番候補には、あれこれ口を出す必要もないだろう。だが清宮は心配だ。大きなお世話でなければいいのだが……。

構成/木村公一 写真/小池義弘

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