率直に言って今の清宮は、ホームラン打者ではないと感じる。高校時代はそうだったかもしれないが、少なくとも現状、プロにおいてはホームラン打者ではない。
確かにパワーは健在だ。5月28日、巨人戦でも2打席連続で飛距離十分のホームランも打った。だが私はそれを承知の上で、今の清宮にはホームランの量産は無理だと見ている。かりに1年間フル出場できたとしても15本打てるだろうか。20本、30本は厳しい。
その点、村上は順調すぎるくらいの成長だ。今の状態なら去年同様、あるいはそれ以上の本数を残すだろう。ではなぜこんなに差がついたのか。
ポイントは3つある。
まずはインパクトの瞬間の違いだ。本来、ホームラン打者はボールを捉えた瞬間、とくに低めのボールはバットで「拾う」ような感覚で打つ。「乗せて運ぶ」といった表現をすることもあるが、いずれにせよそうしたスイングだと打球は伸び、角度がついて上がる。
村上はたとえフォームが崩されてもしっかり拾える技術がともなっていて、それは豪快、かつ綺麗な放物線が証明している。
だが、清宮はこの「拾う」感覚がなく「叩く」感じだけなのだ。パワーはあるから真芯に当たれば飛んでいく。しかし、多くの打球はヒットになってもスタンドインするのに必要な角度がない。
早実から入団した年、私は春季キャンプで清宮の特打を見る機会があった。時間にして十数分だろうか。それでも彼は17本、スタンドインさせていた。見事にボールを拾うように捉えていた。そのスイングが今はない。
プロの投手のスピードに対応するため、飛ばすことより当たることを優先させてきたからか。この4年間で毎年のようにフォームが変わっていることも考えあわせると、悩んだ末にミート中心のスイングになったのではないか。