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「純血種の猫も捨てられている」飼育放棄の背景にあるコロナ、高齢化社会、カワイイ文化

集英社オンライン / 2022年6月15日 11時1分

東京・神田神保町にオープンした保護猫カフェ「ちよだニャンとなるcafé」。長年“飼い主のいない猫”の問題に取り組んできた運営団体によれば、近年では猫の殺処分件数は減少しているものの、コロナ禍や人間社会の高齢化によって保護猫・飼い猫に関する新たな問題が顕在化してきているという。運営スタッフに話を聞いた。

現在8匹の保護猫が過ごす「ちよだニャンとなるcafé 神田神保町」

「終のすみか」も兼ねた保護猫カフェ

東京・神田神保町の専大通り沿いに建つ、1階に喫茶店が入るビルの4階。白を貴重にした室内には、客がくつろげるソファやカウンター席のほかに、キャットタワーやキャットウォークが設置されている。猫たちは、スタッフとねこじゃらしのおもちゃで遊んだり横になったりと、思い思いの時間を過ごしている。



2022年2月22日の「猫の日」にオープンした「ちよだニャンとなるcafé 神田神保町」は、猫とふれあいながら飲食ができる一般的な猫カフェとは異なり、老猫ホームとホスピス機能を併設した譲渡型の保護猫カフェだ。家族になってくれる人との出会いを待ちながら、高齢の猫が余生を穏やかに過ごすための居場所ともなっている。

運営する一般財団法人「ちよだニャンとなる会」は、2001年の発足以降、千代田区と連携しながら街で生活する猫の去勢・不妊手術や保護・譲渡活動などを行ってきた。保護猫カフェの開設は、秋葉原店に次いで2店目。いずれも、クラウンドファンディングなどで資金を募った。

同会副代表・事務局長の古川尚美さんは「活動初期は、猫に去勢・不妊手術をして元の場所に戻し、地域猫として見守っていく活動をしていました。近年では、都市部の再開発によってすみかを奪われた猫や、交通事故に遭ってケガをしたり高齢で病気になってしまった猫を保護することも増えました。私たちの保護猫カフェは、そういった譲渡が難しい猫たちの終のすみかとして、幸せに旅立てるようにケアをしていく場所でもあります」と語る。

猫におやつをあげる古川尚美さん

譲渡が進まない背景に日本の「カワイイ文化」

同会では、毎年100匹以上の猫を保護。譲渡会では、子猫から里親が決まっていくため、成猫はなかなか決まりにくい。「カフェへの来店をきっかけに、猫と関係性を深めて『この子だったらうちの子になってもいいな』と譲渡が進められる場になれば」と古川さんは語る。カフェのオープン後、約4カ月で8歳と2歳の猫の譲渡が決まった。現在、カフェで暮らしている猫は8匹。そのうち、ステラ(雌、15歳)は、神田エリアで地域猫として15年暮らしていたが、高齢のため保護された猫だ。

成猫の里親が決まりにくい理由のひとつに、古川さんは「日本人に根づいている『カワイイ文化』が背景にあるのでは」と指摘する。「日本人は、小さくて可愛らしいものが好きですよね。だからこそ、猫も子猫が大人気で一番にもらわれていく。一方で欧米諸国では、『大人はキャラクターが立っているから』と、成猫も子猫も同じくらい可愛いと思われているので人気に差はないのです。日本は、時間をかけてでも文化レベルの底上げをして成熟していかない限り、成猫の譲渡は進まないでしょうし、根本的な解決にはつながらないと思います」

また、白黒猫で顔の斑が左右対称できれいに分かれているハチワレのほうが譲渡は進みやすく、個性的な柄の猫はもらい手が見つかりにくかった。しかし、あることがきっかけでさまざまな白黒猫の譲渡が進むようになったという。それは、Suicaのペンギンや千葉県のチーバくんのキャラクターデザインを生み出し、『ちよだニャンとなるcafé』のロゴも手掛けているイラストレーター・絵本作家のさかざきちはるさんの影響だ。古川さんが説明する。

「さかざきさんは、白黒猫の魅力を楽しめるウェブサイト『白黒さんいらっしゃい』で、いろいろな柄の猫のイラストを描かれています。左右対称ではない変わった柄でも個性的で可愛いという風潮ができたからこそ、今では、そのような白黒猫からもらわれていくようになりました。さかざきさんご本人は無意識だったと思いますが、結果的にたくさんの白黒猫が救われました」

高齢化社会、コロナ禍で街に増える元飼い猫

環境省の統計によると、同会が発足した2001年度の猫の殺処分数は、全国で約27万匹だった。その後、ボランティアによる保護猫活動や、地域猫の不妊去勢手術が広がり、2020年度には2万匹以下にまで減少。千代田区では、「ちよだニャンとなる会」の活動などにより、2011年以降猫の殺処分ゼロを継続している。

しかし、新たな課題もある。古川さんは「殺処分となるのはこれまでは街中で繁殖した子猫が多かったのが、近年では元飼い猫が増えています。これは、人間の社会問題、特に高齢化と深くひもづいています」と指摘する。

ペットフードの高品質化や獣医療の進化もあり、20歳まで生きる猫も珍しくない。そのため、一人暮らしの高齢者が猫を残したまま亡くなってしまい、遺族が飼えずに保健所に持ち込んだり外に放してしまったりするケースは特に増えている。また、捨て猫を拾ってきて自宅で飼い始めるも交配で猫が増えてしまい、飼い主が入院したり亡くなったりしてしまって「多頭飼育崩壊」に陥るケースもある。同会が保護したケースでは、多数の猫を抱えたまま飼育崩壊を起こし、死んだ猫が冷蔵庫に入れられていたなど目を覆いたくなるひどい状態もあった。

また、コロナ禍で在宅時間が増え「生活の癒やしに」とペットを買う人も増えたが、面倒を見切れずに飼育放棄となってしまう課題も顕在化しつつある。

「他の地域では、純血種が捨てられているという話を耳にしています。保護猫の譲渡の際には、普段の生活などを伺った上で譲渡しますが、ペットショップは何の審査もありません。コロナが収束した後に、さらに飼育放棄される猫たちが増えないことを願うばかりです」

ちよだニャンとなるcafé 神田神保町
住所:東京都千代田区神田神保町2-38-10多幸ビル4階
電話:070-8957-5840
営業日時、料金など詳細はこちら>>

取材・文/堤 美佳子
撮影/岡庭璃子

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