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「世界のムラカミ」さんら、各界の賢人たちはSNSの悩みに何と答えてきたのか?

集英社オンライン / 2022年6月15日 15時1分

SNSでの幸せアピール、自慢合戦に辟易とした経験は誰でも持つもの。しかもそんな自分に自己嫌悪する。私たちを振り回すこのやっかいなツールと、どう付き合えばいいのか。今回も大量の人生相談本をめくりつつ、同じ悩みに対する多彩な回答をご紹介していく。

世界のムラカミが22歳大学生の小さな悩みに答える

もはや日々の生活に欠かせない存在となったSNS。しかし、便利さのいっぽうで「元カレ(元カノ)のSNSをのぞいてしまう」「SNSでの幸せアピールにイラつく」など、今日もさまざまな自己嫌悪を大量に生み出しています。その凶暴な一面に苦しめられないためには、何をどう気をつければいいのか。賢人たちから解決策を授かりましょう。



トップバッターは、もはや国民的というより、世界的な作家である村上春樹さん。その大作家が22歳の男子大学生からのケナゲでかわいい相談に答えます。相談者は、自分の彼女の元カレをSNSで見つけて、デートに行ったときの写真などを見てしまうとか。やっかみや嫉妬が巻き起こり、見てしまう自分を「どうにもコントロールができません」と訴えます。村上さんは、訓練すれば見ないでいられるようになると言いつつ、その方法を授けます。

〈どのように訓練すればいいのか? 彼女のことだけを考えるといいと思います。彼女について、君が自分の手で第一次情報をせっせと集め、それを積み上げていくんです。それは君だけの持っている彼女についての情報だし、たぶん他の誰も知らない情報です。そういう情報って素晴らしいと思いませんか? そういうのに比べたら、SNSの情報なんてちゃちなものです。〉
※初出:期間限定質問・相談サイト「村上さんのところ」(2015年1月15日~5月13日)。引用:村上春樹著『村上さんのところ』(新潮社、2015年刊)

村上さんは、自分についての意見や情報が載っているサイトなどは、「見るといやな気持ちになることが多いから」まず見ないとか。「知らないでいる方がいいことが世の中にはたくさんあります」とも。SNSにある情報のほとんどは、「知らないでいる方がいいこと」かもしれません。自分しか知らない「彼女の第一次情報」を集めることに熱中し始めたら、SNSで元カレの情報を探る意欲はしぼんでいくでしょう。

自制心をきかせるなんて無理

次も、恋愛がらみの振り回され案件。ラジオパーソナリティ・コラムニストのジェーン・スーさんのラジオ番組に寄せられたのは、「元彼のTwitterやFacebookを見るのがやめられません」という女性からの相談です。「こんな自分が嫌で、いいかげんもうやめたいです」とも。TBSアナウンサーの江藤愛さんを聞き手に、スーさんが身もふたもなく答えます。

〈ここで自制心をきかせて、見ないようにするなんてことは、残念ながら、無理だと思います。やめられる可能性がひとつあるとしたら、自分が新しい恋を始めて、そっちに夢中になる。そんなことになったって、ちょっと余裕ができたら、見ちゃうし。うまくいってても、「あっちはどうかなー」って見ちゃうし。(中略)これはもう本当に、時代とザッカーバーグを恨む。それで自分を責めない。これでいかがでしょうか〉
※初出:TBSラジオ「ジェーン・スー相談は踊る」(2014年4月~2016年4月)。引用:ジェーン・スー著『ジェーン・スー 相談は踊る』(ポプラ文庫、2017年刊)

「見ないようにするのは無理」という前提に立つと、自己嫌悪は薄れそうです。自分の弱さというか、人間の弱さを受け入れることで、ふくらんでいく罪悪感や被害妄想に押しつぶされる困った事態を防げるかも。スーさんは「SNSと恋愛は、ホント相性が悪い」と力を込めて言います。恋愛がらみでSNSがプラスに働くケースもゼロではなさそうですが、きっと今日もあちこちで、はるかに多くのマイナスな作用を及ぼしていることでしょう。

むしろ「勝ったような気持ち」で「いいね」を押すべし

トリは、漫画家でコラムニストのカレー沢薫さん。「SNSでの幸せアピールに辟易している私はどうしたらいいでしょうか?」という20代後半の女性からの相談です。SNSで結婚や出産の話題を見るたびに「なんとか流れに乗らねばと焦って」しまうとか。カレー沢さんは、SNSは「敵将の首置き場」だと言います。置いた人間にとっては手柄や幸福でも、関係ない人間が「グ、グロい…」と感じるのは当然だとも。さらに、こう続けます。

〈よってまず、「友達の幸福を妬むなんて自分はなんて小さい人間なのか」などと思うのはやめましょう。むしろ、生首を見て平然としている方がサイコパスっぽくて怖いです。(中略)それにSNSで幸せアピールしている人間も、実は内心不安で、自らの選択が正しかったと信じたいがために、SNSに載せて「いいね」という後押しを求めているとも言えます。ここは一つ、まだ「悩みの種」を持っていない身軽な者として、相手を崖から突き落とすつもりで「いいね」を押してあげる余裕を持っても良いのではないでしょうか。〉
初出:WEBマガジン「キノノキ」に連載されたコラム「カレー沢薫のワクワクお悩み相談室」(2018年2月~2019年9月)。引用:カレー沢薫著『カレー沢薫のワクワク人生相談』(太田出版、2021年刊)

幸せアピールに対して「いいね」を押すことは、けっして負けを認める行為ではありません。カレー沢さんの言うように、崖から突き落とすつもりで押せば、むしろ勝ったような気持ちを感じることができるでしょう。それでいて押してもらった側は「ああ、祝福された」と感じるので、いわばウイン-ウインです。どっちも気のせいですが、SNSなんて「気のせい」の塊ですから、そこは深く考える必要はありません。

「SNSを上手に使う」「SNSと適度な距離を取る」というのは、言うは易し行うは難しです。見果てぬ夢を追うと、できない自分をさらに責めることになるでしょう。SNSは、元カレ元カノの情報や他人の幸せアピールといった、見なくていいものを見せてくれるだけでなく、自分の弱さや醜さを見せつけてくれるツールでもあります。せっせと使っている私たちは、自分を痛めつけるマゾヒスティックな刺激に溺れているのかもしれません。

(イラスト、マンガ/ザビエル山田)

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