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これがジオラマ!? 1/150スケール・渋谷スクランブル交差点の凄み

集英社オンライン / 2022年6月15日 12時1分

小さなボードの上に広がる情景模型・ジオラマの世界。鉄道模型やジオラマは、子どもから大人まで根強い人気を誇っている。中でも若手ジオラマ作家・MAJIRI氏が制作した、渋谷スクランブル交差点のジオラマは「驚くほどリアル!」とSNSでも話題になり、YouTubeの再生回数は200万回を突破した。今回はMAJIRI氏の作品を、鉄道取材のかたわら自身も鉄道模型に親しみ、小さなジオラマを作ったこともあるフリーライター・若林健矢が取材した。

東京・巣鴨にあるジオラマ素材の専門店「さかつうギャラリー」では、6月4から19日までの期間「オンリーレッド×モーリン 新時代の模景展」が開催され、自動車模型を展開するONLY REDと、ジオラマ素材を取り扱うモーリンによるジオラマ作品の展示が行われている。そのスペシャルゲストとして、両メーカーの製品を活用し、リアルな都市風景を再現しているCityscape Studio/都市モデラー・MAJIRI氏が招かれた。



今回スポットを当てるのは、その圧倒的な密度の濃さとリアルな情景が話題を呼んだ、渋谷スクランブル交差点のジオラマ。MAJIRI氏が1年かけて見事完成させた渋谷の象徴的風景を楽しみながら、作品にまつわるエピソードを聞いた。

精緻に作り込まれた「渋谷の名所」がずらり

渋谷スクランブル交差点ジオラマは、幅740mm×奥行き530mm×高さ450mmの寸法で作られたNスケール(150分の1スケール)の作品。山手線外回り電車の高架下から大成堂書店(作中では「大教堂書店」)付近までの範囲に、スクランブル交差点の雑踏と周辺の街並みを再現している。

主役となるスクランブル交差点はもちろん、SHIBUYA 109(作中では「XENON」)やQ Front(作中では「O Front」)など、交差点周辺のビルもリアルに再現。道玄坂方面と神宮通り北側の写真を背景にすることで、まるでジオラマの外にも情景が続いているかのような広がりを感じさせる。

ジオラマの全景。実物を見ると想像以上に小さく、驚きを隠せなくなる。

渋谷スクランブル交差点付近にある、あの書店も見事に再現

ビルの中にあるカフェもしっかり作り込まれている。

ジオラマボードに表現された交差点の喧騒は、まさに現実の渋谷の風景がそのまま落とし込まれたかのようだ。その上で、横断歩道前の喫煙所や、渋谷センター街入り口付近、山手線のホームと線路周りなど、あまり目立たない部分も丁寧に作り込まれている。隅々まで観察したくなる部分がたくさん見つかり、長時間見てしまう作品だ。

センター街の喧騒が伝わってくるようだ

徹底的に渋谷の風景を再現した作品だが、そもそもMAJIRI氏はなぜこの作品を作ったのだろうか?

「日本の代表するスポットです。それを一回は再現してみたいという思いがありました」

幼少期からジオラマが大好きで、当時からジオラマを作ったり、他の制作者のブログを読んだりしていたMAJIRI氏。大学生の時、友人から「渋谷のジオラマを作ってほしい」という声があったという。そこに前々から抱いていた気持ちも重なり、制作を開始した。

制作者のMAJIRI氏

「日本の都市風景ってすごく魅力的で。昭和の時代から、高速道路ができてオリンピックがあって…と、どんどん発展してきました。都市高速が走っていたり鉄道が通ったり、それらが入り乱れてごちゃごちゃした街並みになりましたが、そこに魅力を感じます。

特に渋谷は、再開発を行っていてずっと工事しているような変化の激しい街です。広告なども多種多様で、時代が進むごとに移り変わります。そういう絶えず変化している街なので、その瞬間を、特に僕が一番よく知っている平成の時代を、形に残してみたいなという思いもありました」

令和の現代、新型コロナウイルス感染症が拡大し、外出する人は減ってしまった。また、そのために当時在学中だったMAJIRI氏も大学になかなか行けなくなった。家でできることは何か考え、大好きなジオラマ制作に立ち返ったという。そして、「それが仕事になれば」との思いも芽生えた。

「渋谷のスクランブル交差点もコロナ禍で人の往来が減ってしまいました、だからこそ、平成のごちゃごちゃした渋谷を再現したいなと思いながら、約1000体のフィギュアを1ヶ月ほどかけて色付け・配置を行いました」

1日30体を目標に筆による色付けと配置を行なったという

作品にかけたこだわりは、たとえばQ Frontを模した「O Front」を見るとよくわかる。ビル内の柱や階段、店内でくつろぐ人々や、内側から貼られた文字など、これでもかというほどの作り込みをガラス越しに見ることができる。内部から外観まで全て自作で、映像が映るスクリーンも、中にi Phoneを置けば再現できるという。

1階のカウンターや階段しっかり再現されている

それ以外の建物も全て自作で作られており、レーザーカッターで正確に切り出した紙素材を組み合わせている。一方で、建物に添える室外機や、センター街入り口の柱などの小物は、3Dプリンターを利用しているという。

自作のパーツには色がないので、色も塗らなければいけない。一般的に模型の塗装は、筆塗り、またはスプレーかエアブラシで塗料を吹き付けるが、MAJIRI氏は、基本的にはエアブラシを使用。エアブラシでは難しい細部や構造物の経年を表現するための塗装(ウェザリング)は筆塗りで行う。ビルの屋上や線路の側壁を見てみると、下部の画像のとおりちょうど良い具合に汚れが。多彩な工法を駆使し、細部まで全て自作、そこにMAJIRI氏のこだわりが表れている。

屋上の再現にも徹底的にこだわる(編集部撮影)

しかし、それだけ長時間かけて作品を作っていたため、モチベーションの維持に苦労したという。加えて、制作開始当初は和歌山に住んでいたため、渋谷を現地取材することもできず、友人に屋内・屋外の両方で写真を撮ってもらったり、Google Mapを徹底的に参照するなど、資料集めにも難儀した。

渋谷だけでなく「箱崎ジャンクション」も再現した理由

「ジオラマを作るのは大好きですけど、あれだけのことをやろうと思うと時間がかかるので、モチベーションを保ち続けるのが一番難しいところでした。1年間ずっと作っていたわけではなく、途中に箱崎ジャンクションを作っていた時期もありました」

箱崎ジャンクションのジオラマ。とてもモチベーション維持のために制作したとは思えない

一つの作品へのモチベーション維持の難しさを、別のジオラマを作ることで乗り切ったが、当初は渋谷スクランブル交差点付近の全てのビルに電飾を施し、光を灯すことで夜景の再現も考えていたという。それには途方もない時間がかかるため断念したが、その夢は未だ潰えていないようだ。

「今後、もう一回渋谷を作りたいなと思っていまして。その時には全てのビルなどに電飾を仕込んで、さらに109(SHIBUYA 109)のほうまで含めて、より広域を再現した作品をリメイクしたいなと思っています」

「Cityscape Studio」Youtubeチャンネルの動画を見ると、手のひらに載せたジオラマのビルを青空の下で写したり、地下道入口の屋根に1円玉を置くなど、情景模型の中に実物が映っているカットが出てくる。スクランブル交差点の動画では、情景の中に指を伸ばしているサムネイルが印象的だ。

「比較対象があると、反響もより大きくなります。手かコインか、比較対象(サイズ感が誰にでもわかるようなもの)を必ず置くようにしています」

これらの撮影方法は、国内外の有名なモデラーの方法を参考にしている。情景にコインや指を置くと、サイズ感をより知ってもらいやすくなり、実際にYouTubeのサムネイルにサイズの比較対象を置くか置かないかで、動画の再生数にも大きな差があるという。また、これまではiPhoneのみで撮影してきたが、最近はデジタル一眼レフカメラも導入し、撮影技術の向上にも余念がない。

筆者は大学時代に渋谷に通っていて、当時スクランブル交差点を何度も歩いたので、ジオラマ上の人々の姿に懐かしさがこみ上げてきた。確かに、時代とともに変化する街並みの在りし日の一場面が、ジオラマの中に見事に再現されていた。

最後にMAJIRI氏は「どの作品も下から見上げるような視点で見ていただきたいなと。下から見上げると『おぉ!』ってなるようにリアルに作り込んでいますので、下からの視点で楽しんでいただければモデラー冥利に尽きます!」とコメントした。

東京・巣鴨「さかつうギャラリー」の「オンリーレッド×モーリン 新時代の模景展」は6月19日までの開催。MAJIRI氏が制作した、渋谷スクランブル交差点を含むジオラマ作品が3点展示されている。驚くほど小さいながら、圧倒的なリアリティを持った情景を、ぜひ実物で体感してほしい。


撮影:是枝 右恭

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