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「集英社ゲームズ」がタイトルづくりで最も大事にしているものとは?

集英社オンライン / 2022年6月25日 12時1分

2022年2月に設立された「集英社ゲームズ」執行役員へのインタビュー後編。集英社ゲームズ立ち上げまでの経緯や、ロゴデザインに込められたゲームづくりへの想いを聞いた。 (トップ画像 ©SHUEISHA GAMES All Right Reserved.)

2022年2月、集英社の関連会社「集英社ゲームズ」が設立された。集英社ゲームズが何をしている会社なのかを語ってもらった前編に続き、後編は集英社ゲームズの成り立ちや、同社が運営をサポートする「集英社ゲームクリエイターズCAMP」などについて聞いていく。話をしていただくのは前編に引き続き、集英社ゲームズで執行役員を務める森通治(みちはる)さん・山本正美さん。

聞き手=藤縄優佑/撮影=和田篤志


集英社ゲームズのキーパーソンは「小島さん」?

――集英社ゲームズが生まれた経緯を教えてください。

集英社ゲームズは、集英社の新規事業開発部から生まれました。新規事業開発部は名前の通り新規事業を手がける部署で、3年くらい前からゲーム事業立ち上げの準備をしてきました。

――なぜゲームに着目したのでしょうか。

僕自身がゲーム好きなのもありますが、純粋にゲーム市場が大きいこと、そしてエンタメとしての総合力、インタラクティブ性が高いことが魅力的だと思っており、集英社としてこのノウハウは積極的に得ていくべきだと思っていました。とくに近年のゲームはさまざまな領域で体験としての価値が高まっていて、そういった領域にチャレンジするのはエンタメ総合会社になっていくためにも正しい姿勢だろうとも思っています。

――ゲーム市場といっても、いろいろな切り口があります。

企画検討時は海外のイベントにも積極的に足を運びながら、ゲーム事業の方向性を2年ほど探り続けました。今の方向に固まったきっかけは、Googleさんが主催するインディーゲームコンテスト「Google Play Indie Games Festival」です。初回開催時から集英社が協賛し、「少年ジャンプ+賞」などを設けていて、当時から僕も手伝っていました。

同イベントで何人ものゲームクリエイターさんと会っているうちに、ゲームクリエイターさんを発掘することと漫画家さんを発掘することは、根が似ているように感じまして。イベントに一緒に来ていた「少年ジャンプ+」の細野編集長から「俺も同じこと思ってたんだよ!」と盛り上がってから「ゲームクリエイターを発掘する」という想いが頭の中に残り続け、今の事業へとつながった背景もあります。本当に何がきっかけになるかわからないですよね。

2019年に「集英社少年ジャンプ+賞」を受賞した『ペルセポネ』の制作チーム「Momo-Pi Game Studio」は、受賞特典として『Captain Velvet Meteor: The Jump+ Dimensions』の企画・制作をジャンプ+編集部と共同で開始し、集英社ゲームズのタイトルとして発売される

――それから集英社ゲームズが設立されたのでしょうか。

いえ、いきなり会社を作ったわけではなく、その前の準備段階で山本さんに合流していただいて、「集英社ゲームクリエイターズCAMP」というゲームクリエイター支援サービスを立ち上げました。

――山本さんを誘った理由は?

「Google Play Indie Games Festival」の取り組みの課題感をずっと持っていました。どんな取り組みであればゲームクリエイターさんの助けになれるのか、どういった形であれば集英社のゲーム事業につながるのかを「集英社DeNA プロジェクツ」(集英社とDeNAの合弁会社)との定例会で同社の小島さんという方と相談していて、「ゲームクリエイターズCAMP」の企画の前身のアイデアが生まれました。その企画をブラッシュアップしていく過程で小島さんから山本さんをご紹介いただきました。

山本さんは過去にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)社でゲームクリエイターさんを発掘し、一緒にゲームを制作する「ゲームやろうぜ!2006」と「PlayStation C.A.M.P!」のリーダーを務めていました。本プログラムから生まれたゲームは何本も高い評価受けていて、私も当時ファンの作品もあって。まさに僕たちがやろうとしている事業と同じような取り組みで、小島さんの推薦ということもあってお会いしました。

山本 僕と小島くんはSCE時代は同僚で、SIEになってからは上司と部下の関係として、「PlayStation C.A.M.P!」で一緒に働いていました。小島くんからは「キャンプ」の名のついた同じようなサービスを立ち上げたいので、許諾の意味も込めて一度会ってほしいと言われました。

「PlayStation C.A.M.P!」はだいぶ前に終了しているし、僕が許諾できる立場でもないんだけど……。律儀な人だな、と思いながら当時渋谷でお酒を飲んでお話ししました(笑)。

「CEDEC2021」では小島さんの熱意の高さが伝わるプレゼンが披露された(動画の47分3秒ごろ~)

――その話をされた当時、山本さんはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)に勤めていましたか?

山本 はい。ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)も含めると四半世紀もソニーグループでゲームを作ってきて、もうそろそろ卒業しようと考えていたころでした。そこにちょうど「集英社ゲームクリエイターズCAMP」の話がやってきて、アドバイザリーの立場でお引き受けし、1年後に集英社ゲームズが立ち上がるとなった際に、参画依頼をされた形です。

――小島さんがつないだ縁もあり、集英社ゲームズとしてスタートを切りやすい状況が整ったのですね。

はい、山本さんほどのプロの方々が集英社の新規事業にコミットしてくれるのであれば、本当にこの事業の成功の可能性が出てきたぞと。集英社は漫画家さんの才能に投資する会社であり、ゲーム事業でもゲームクリエイターさんの才能に投資するビジネスモデルにするのは事業モデルとしての筋が通っています。そのため、経営陣にも理解されやすかったです。

山本さんや小島さんなど良いプロデューサー人材に恵まれたうえに、集英社ゲームクリエイターズCAMPの業界からの大きな反響が味方してくれました。集英社は幸いにもここしばらく業績が良く、新しい事業に投資できる余力もあります。ゲームは作るだけで1、2年はかかりますし、才能を発掘するプロセスまで含めると最低でも4、5年かかる覚悟が必要でした。ただ、「才能に投資をする価値」はもはや出版社の経営層に説明が不要であるくらいの共通認識でしたし、新規事業でゲーム事業で中長期にわたる投資を行いたいという理解もしてもらえ、投資対象としていただけました。そうして承認も下り、集英社ゲームズが誕生しました。

――ゲーム事業を集英社の一部門とせず、法人化したのはなぜですか。

シンプルにいうと機動力です。加えて、ゲーム事業のブランディングの一環としてお考えいただければわかりやすいと思います。弊社が出版社だとお付き合いしづらいけどゲーム会社だったらOKといったことも実際は多くあり、法人化したゲーム会社だからこそ、機動力を持って動きやすくなることもあります。

法人化は人材採用の面も大きなメリットです。集英社ゲームズという形で法人化することでゲーム業界の他の企業さんと同じくプロフェッショナル人材を積極的に採用できるようになりました。

集英社ゲームズと「集英社ゲームクリエイターズCAMP」の関係

――集英社ゲームズは「集英社ゲームクリエイターズCAMP」のサポートに入り、サービス本体は集英社に残っています。

集英社はクリエイターを応援する組織であること、集英社ゲームズはゲームパブリッシャーであることを考えると、集英社に残しておくのが妥当だと判断しました。ゲームクリエイターズCAMPは今はゲームクリエイターに特化した支援サービスを提供していますが、将来的にはイラストレーターなどに対象を広げる可能性もありますしね。

また、「集英社ゲームクリエイターズCAMP」は集英社ゲームズも含め、どのゲームメーカーにもポジションを取らないフラットな立場を維持していくべきだとも考えています。ただし、まったく関与しないわけではなく、これまで僕たちが培ってきた運営のノウハウがあるので集英社ゲームズが運営の立場でお手伝いをしている、という状況です。

――集英社DeNA プロジェクツは「集英社ゲームクリエイターズCAMP」のなかでどういった立ち位置なのでしょう。

集英社が母体として運営し、集英社DeNAプロジェクツはDeNAさんのノウハウをお借りして、サービスの機能開発・改善やコミュニティ運営などを担っていただいています。

――「集英社ゲームクリエイターズCAMP」を1年運営した成果はいかがでしょう。

まず、登録者数は4000人を超えました。ユーザーさんがゲーム作りに必要な人を募る「募集」機能も使われるようになってきており、新しいゲーム作りのチームがいくつも作られています。

「集英社ゲームクリエイターズCAMP」の職別登録者 ©SHUEISHA GAMES All Right Reserved.

たまたまではありますが、講談社さんでも同じようなタイミングで似た企画がスタートしたこともあり、出版社が個人や少人数のゲームクリエイターを応援する流れが生まれました。その副次的効果なのかもしれませんが、会社を辞めて独立してゲームを作るようになった人がここ1・2年で増えてきたようにも感じます。本気でゲームを作りたい方々の後押しができているのでは、と思いはじめてきました。

山本 個人や少人数でゲームクリエイターとして活動している方は日本に1万5000人ほどいると言われています。「集英社ゲームクリエイターズCAMP」にはそのカテゴリーに属さない方もいるとはいえ、4000人以上が登録していただいていると考えると、日本のゲームクリエイターさんの集まるポータルサイトの規模としては日本一ではないでしょうか。

この大きなコミュニティから、新しいチームや作品が次々と生まれるサイクルがうまく回ってくれたらと期待しています。

――コンテストも何度か開催していますね。

2021年には『ONE PIECE』のカジュアルゲームコンテスト『連載1000話連動企画ONE PIECE GAME賞』、オリジナルゲームコンテスト『GAME BBQ』を開催しました。『GAME BBQ』で大賞を取った方々と企画しているゲーム『シュレディンガーズ・コール』は近いうちに制作に入る予定です。入選作品についてもゲーム化の確約をする賞ではなかったのですが、プロデューサーが数か月ほど相談相手になっているうちに企画が磨かれたものもあり、いくつかは支援プロジェクトとしてゲーム制作に入る可能性も出てきています。

KONAMIさんの過去のゲーム作品を使った『KONAMIアクション&シューティングゲームコンテスト』は現在審査中で、とても良い感じの企画が集まっていると聞いています。こちらも個人的にはとても楽しみです。

「集英社ゲームクリエイターズCAMP」の利用頻度を高めたい

――「集英社ゲームクリエイターズCAMP」の課題はありますか?

山本 いやぁ~、結構ありますね(苦笑)。1年でここまでやっとこられたという思いはありますが、常により良いものをお届けしなければと感じています。

大きなところとして、機能改修・向上への取り組みはしておきたいです。とくに法務的な知識と、国内外に向けた宣伝を体系的にサポートできたら、小規模なチームの福音になりそうだと考えています。なかなか難しいチャレンジではあるのですが。

今はゲームクリエイターズCAMP自体が投資フェーズなので赤字が出るのは覚悟の上なのですが、サービスの年間維持費くらいは生み出さないと継続が厳しくなってしまう点は課題だと考えています。クリエイターさんたちからお金をいただくのではなくスポンサーさんを見つけたり、ちょっとした依頼サービスを提供したりと、違うジャンルで成功しているビジネスモデルはいろいろと道はあると思うので、皆さんが納得できる形で継続性がある仕組みをつくりたいです。

その前に、今のサービスをもっとちゃんとユーザーの皆さんに使われるようなものに改修するのが先ではあるのですが。

――「集英社ゲームクリエイターズCAMP」はあまり使われていないのでしょうか。

ムーブメントを起こせたとは思いますし登録者数も多いです。毎日アクセスしてもらえるといった使用頻度では課題があると感じます。

山本 今時のゲームクリエイターさんは進捗内容にハッシュタグを添えてツイートするなどして、Twitterをうまく作品のプロモーションに活用している方が多いですね。Twitterは多くの人の目に留まりやすいツールなのですが、どんなクリエイティビティを持った方なのかを調べるためにツイートをたどるといったことをやろうとすると一苦労になります。

その対策として、Twitterのプロフィールや固定ツイートに「集英社ゲームクリエイターズCAMP」のポートフォリオURLを載せるといった使い方をしていただけるような仕組みができるといいなと思っています。

その他、手軽に仕事を受発注できるシステムを構築できたらよく訪れてもらえそうですが、サービスが負う責任の範囲が大きくなりますし、コミュニティに属する楽しさを損なうことにもつながる懸念があります。軸足をどこに置くか、いつどうやってスライドさせるのかは慎重に決めたいです。

実はアナログゲームも作ってます

――記事のテーマからはズレますが、気になったことをいくつか伺いたいです。『BLEACH』を題材にしたかるた『BLEACH 巻頭歌骨牌』が集英社ゲームズのWebサイトに載っていますね。

はい、『BLEACH 巻頭歌骨牌』は弊社のチームがファンクラブ運営チームと共同で作りました。

『BLEACH 巻頭歌骨牌』 © 久保帯人/集英社

――久保帯人先生の公式ファンクラブサイト『Klub Outside』で限定販売し、すぐに売り切れたのを覚えています。

反響が想像以上でして、1000セットを3回にわたって販売したのですが、3回目でも発売後1時間ももたずに売り切れてしまいました。もう重版が間に合わない!という状況でした。そうした人気を鑑み、BLEACHファンのみなさまの熱い声を受けて、今度はファンクラブ会員向けだけではなく一般販売するべく動いております。続報はもう少しお待ちください。

――『BLEACH 巻頭歌骨牌』だけ特別に集英社ゲームズで作ったのですか。

いえ。実は集英社ゲームズは、デジタルゲームだけでなくアナログゲームの企画・制作も事業として取り組んでいます。こちらはデジタルゲームと違って、集英社の作品を題材にしているものがメインで、ファングッズとしてもゲームとしても仕上がりに妥協することなく作っています。ボードゲームを担当してもらっているプロデューサーはものすごくセンスも良いので、色々な作品で積極的に仕掛けていきたいと思っています。

山本 集英社作品を使ったデジタルゲームはクオリティ高くおまかせできる会社さんが多い一方、アナログゲームはTCGなどを除けばあまり展開されていなかったと思います。そこを事業にするのは良い作戦だと思っています。

企画はすべてチェックしていて、どれもひいき目なしで面白いです。2022年に新作のアナログゲームを二つ発売できる予定です。

――その発売予定のゲームの話を伺いたいです。

残念ながら、どの作品をベースにしているといった話はまだ公開できません。話せることは、作品内に登場する重要な設定を上手く活用した、クイズ要素を備えたカードゲームを発売することくらいです。知識豊富なファンだけでなくその作品のファンじゃない方も一緒にプレイして、楽しめる内容になっています。

山本 作品そのものを知ってもらったり、キャラクターの知識を得る良いツールにもなりそうですね。

ポイントは、ボードゲームクリエイターさんと共同で作っていることです。今回のゲームはその方のボードゲームが下地になっており、お互いのアイデアを合体して制作しています。ゲームクリエイターと尖った作品を生み出したい集英社ゲームズだからこそできる取り組みだと思っています。

集英社ゲームズのロゴは「角」と「炎」をイメージ

――森さんは集英社ゲームズのロゴについてツイートしていました。デザインの由来を聞かせてください。

山本 集英社ゲームズのロゴは、ユニコーンの角からイメージされています。ユニコーンは、オリジナルゲームコンテスト『GAME BBQ』を開催するときに「ユニコーンバリュー」という審査基準を先に登場した小島くんが発案し、その基準が僕らの指標になったことに起因しています。

僕らが求めるゲームは、ユニコーンみたいなものでありたいと考えています。まずは、ユニコーンの角のように尖ったアイデアが必須で、ゲームを作っていくうちにその角が小さくなってしまうことはあるとしても、鋭さは絶対に維持しなければいけません。また、ユニコーンのボディが貧弱なのものは、馬としての存在感がなくなってしまう。角のインパクトが目立つだけで、ゲームとして完成度が低い、つまらないものになります。

角が尖っていてボディが鍛えられた、バランスの取れたユニコーンがカッコいい、オリジナリティの高い面白いゲームだと僕らは考えています。

会社を立ち上げてロゴを作る際、僕らが一番大事にしていきたい事はなんだろうと真剣に話し合い、ゲームクリエイターの尖った才能であると結論づけました。尖った才能=角を社員全員が常に意識して、高い志を持ち続ける会社であろうという意図も込めて、角を意匠に取り込んでいます。

また、炎にも見えるようにデザインしてもらっています。これは、「集英社ゲームクリエイターズCAMP」がビジョンとして「火花を花火に」を掲げていたことに由来します。熱意を表す火花を僕らで盛り上げることで大きな炎に育てたいと思い、その意匠を込めたデザインにしています。

実はロゴデザインの話はどこにも話したことがないので、このインタビューが初めてですね。

細部を見ると社名にも小さな角がついている ©SHUEISHA GAMES All Right Reserved.

――最後に、なにか告知があればお願いします。

6月26日にコナミデジタルエンタテインメントさんが主催するインディーゲーム展示会「Indie Games Connect 2022」が開かれ、『Captain Velvet Meteor: The Jump+ Dimensions』も展示されます。ご興味があればぜひ足をお運びください。

また、8月のBitSummitや9月の東京ゲームショウなどのゲームイベントにも積極的に参加していく予定です。そこでは新作や新しい取り組みをどんどん発表していくので期待してください!とくに東京ゲームショウのほうはニュースバリューのある、大きな発表になると思いますので、お楽しみに!

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