新聞やテレビ、ネットのニュースを見ていると、「内閣支持率がはじめて40%を切った!」といった報道がよく流れます。日本の政治のことはちゃんと知っておきましょうね。
さて、この報道、はたして「情報を正確に伝えている」といえるでしょうか?
いま、「内閣を支持しますか、支持しませんか」という調査をしたとき、「支持する」と答えた人が39.5%と、40%を下回ったとします。
「内閣支持率がはじめて40%を切った」は正しい報道なのか?
集英社オンライン / 2022年6月20日 16時1分
「データを制する者は時代を制する」ー今後、ますます注目されることが予想される統計学。ガチの初心者でも楽しく読める統計学の入門書『グラフとクイズで見えなかった世界が見えてくる すごい統計学』(飛鳥新社)から#1に続き「内閣支持率」の章を一部抜粋・再構成してお届けする。
テレビも政治もやっぱり
コレ、どう考え、どう表現するのが適切といえるでしょうか?
もし有権者全員を対象に調査し、全数の回答を得た結果(つまり、全数調査)が39.5%だったなら、「40%を切った」と断言してよいでしょう。けれども、新聞社やテレビ局の調査は通常、RDD法(Random digit dialing)と呼ばれる調査方法が使われ、2000人くらいの回答のことが多いのです。
RDD法とは、電話番号をコンピュータでアトランダム(無作為)に抽出し、その番号に通話して、対象者の意思を聞き出す方法のことで、全数調査ではなく、もちろん、サンプル調査です。
サンプル調査ということは、そこで得た数字(たとえば39.5%)は、有権者全員の数値とはいえません。誤差があるはずです。それなのに、「内閣支持率が40%を切りました」と発表するのは、ちょっと乱暴ですね。
「支持率」はけっこうあやしい……?
ここで、前項の数式が使えます。パソコンのエクセルなどを使って入力すると、あとはちゃちゃっと計算してくれます。新聞の調査では回答数が2000件ほどなので、その結果を39.5%として計算してみると、誤差はプラス・マイナスの2.2%。よって、
37.3〜41.7%
のなかに真の支持率はありそうだ、と推測します(区間推定といいます)。
このケースでは最大で42%近くの支持率がありますので、「40%を割りました」とは断定できませんね。
下の2つのグラフは、ある国の大統領の就任以来1年間の支持率の変化を見たものです。
支持率が大きく下落していますが、いま知りたいのは別のことです。上が一般的な表示方法、下が誤差も含めたグラフです。上のグラフはそれぞれの時点での支持率・不支持率をピンポイントで描いていますが、下のグラフはもっと「幅」をもたせています。すると、支持率・不支持率で逆転しているかどうかは怪しく、見る側も、誤差を意識しながら見て、考えることになります(米国のある報道機関が下のようなグラフを使っているのを見たことがあります)。
真実はわかりませんが、少なくとも「誤差」の存在を常に意識する姿勢は必要でしょう。
最後にひとつクイズです。
全国調査で必要な調査数は……
あなたは、お客様アンケートをとることになりました。上司からは「しっかりと顧客のニーズがわかる数を集めて」といわれています。さて、どのくらいの回答数が得られれば十分といえるでしょうか?
#1とこの記事の2つの項目を読んだあなたには、楽勝かもしれません。「テレビ視聴率」でも紹介した視聴率の公式にその答えがあります(数式の意味は理解しないでOKです!)。数式を見ると、「サンプル数」とありますよね。
これって、「これで誤差が出るけれど、その誤差をどこまで許容できるか」ということ。複数回答でもない限り、1つの設問で50%を占有する項目はほとんどありませんから、300~800の回答があれば、傾向としては十分に表せるかな、と思います。ただ、1500くらいの回答数になれば、大きく外すことはなそうです。
そういえば、ギャラップ社が1936年のアメリカ大統領選で集めた調査数は3000人でした。その結果は、「ルーズベルトへの投票5%」でしたから、いちばん低くても52.2%ということになり、やはり「ルーズベルト当確」といってよかったのでしょう。
『グラフとクイズで見えなかった世界が見えてくる すごい統計学』(飛鳥新社)
本丸諒
2022年4月26日
1650円(税込)
単行本(ソフトカバー) 256ページ
978-4-86410-883-6
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