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「泡沫候補だとは思っていない」水道橋博士、参院選出馬宣言の激情

集英社オンライン / 2022年6月18日 8時1分

7月の参院選にれいわ新選組から立候補する、お笑いコンビ「浅草キッド」の水道橋博士。「反維新」を掲げて出馬するに至った経緯を激白したインタビュー前編に続き、後編ではれいわ新選組を選んだ理由や、師匠・ビートたけしとのやりとり、さらには当選後のビジョンまでを明らかにする。

「選挙に出るなら、れいわ一択だった」

――かつて私は、雑誌上で博士を「ルポライター芸人」と書きましたが、現在の博士の日本の政治やメディアの状況を見ての義憤が、一朝一夕のものでないことは十分、理解しています。その意味では出馬は必然だったとも思いますが、れいわ新選組であった理由は何でしょうか。

単純にれいわ新選組が掲げている政策が僕の持論にマッチするからです。特に消費税廃止などの経済政策や、憲法改正反対などですね。



――出るなら、れいわ一択でしたか。

一択でしたね。れいわから出るのって正直、有利ではないと思いますよ。まわりの候補の方の顔ぶれを見ても、自民党や維新で出たほうがいいんじゃないかと思えるキャリアの方もいっぱいいます。

でも、れいわのそういう部分にも僕は共鳴していて。NGO「e-みらい構想」代表の長谷川羽衣子さんは、グリーン・ニューディールの日本版をやりたいとおっしゃっていますが、そういう政治的な運動への賛意もあります。

――選挙戦にのぞむにあたっての戦略的なビジョンは。

僕は今、泡沫候補ではないという自覚はあります。開票して「何百票でした」と言われるような人ではないと、自分では思っていて。

ただ、大きなビジョンで言うと、れいわは代表の山本太郎だって今のところ当選できるかわからないですし、党として比例代表で1枠は特定枠を作るので、得票総数次第では2人目も取れないかもしれない。

それでも、自分がれいわ新選組の票の積み重ねに役立てるのなら、(名簿の順位は)3番手であっても別に構わないです。例えば元参議院議員の大島九州男さんや長谷川羽衣子さんが2番手で上がれるんだったら、それでいいと思ってます。

――出馬にあたって、ご家族とはどんなお話を。

妻からは「とにかく子どもの教育費だけは残してください」と言われました。そこは家を売るので、「それでまとまったお金は入るよね」という確認はしました。

娘からは「私は公の仕事に就きたいという希望があるから、パパがもし先にそっちへ行って後ろ指を指されるようなことをしたら、私には迷惑だから」と言われたので、「絶対にそれはしないと誓える」と話しました。

国会も、政治も、自身も、すべてを可視化する

――師匠のたけしさんからは何と言われましたか。

直接、お会いするのは二年半ぶりくらいだったので「おお、どうした」と。「師匠がもし出馬をやめろと言うならやめます」と言ったら「いや、それはいいよ。お前の好きにやれ。その代わり、マスコミが来るからよ、応援、あるいはお前に対するコメントは一切やらないから」という感じで、師匠からはOKをいただきました。

――当初、博士は「出馬は2万パーセントない」と言ってましたよね。

あれはギャグです。以前に誰かが言ってましたよね。

――博士といえば、日頃からあらゆることを日記に記録していることも知られていますが、今回の博士の戦いを記録する人はいるのですか。

『東京自転車節』というドキュメントを撮った青柳拓監督が僕を追っています。青柳監督は28歳なんですけど、今回、撮るにあたって「制作費は一切要らない。全部、自前でやるから、その代わり編集権をください」って。

どうしてクラウドファンディングで資金を集めないのかって聞いたら、「支援者たちの意見を聞いて制作することになるのは嫌なんです」と。僕はそれを聞いてすごくいいなって思って、撮影をOKしました。今は政治もメディアもみんなお金で狂っているんです。そこを徹底的に可視化していかないといけない。

――そこはもちろん、ご自身も含めて。

当然ですよね。僕はこれまでも起きてから寝るまでをすべて日記に書いて、自分の行動を可視化させてきました。さらに今後は青柳監督のカメラで僕の24時間を可視化する。会いに来た人の写真を全部撮る。ちなみに僕は政治家の誰とも、れいわの人とも一回も飲んだことがないですし、とにかくすべてをオープンにやっていきます。

裁判費用もそうです。ちょっと前に戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんと作家の竹田恒泰さんの裁判がありましたよね。あれも典型的なスラップ訴訟で、山崎さんは1年以上にわたって時間やお金を浪費させられたんですが、思想家の内田樹先生が寄付を集めて、最終的に山崎さんが勝ちました。

その時に集めた寄付金がまだ900万円くらい残っているとかで、内田先生が今回、僕に寄付を申し出てくださったんです。もし裁判で使わせていただくとしたら、そういうお金もすべてガラス張りでやっていきますし、スラップ訴訟被害者の会というのを作って、そこへ寄付をするということも考えています。

裁判を可視化する。国会を可視化する。政治を可視化する。とにかくすべてを可視化させていきたい。議員になったら国政調査権で色々と調べられますよね。それにも期待してください。


――博士はこれまでも芸人をやりながら調査報道を続けてきたわけですから、政治家は案外、天職なのでは。

僕はもともと博打も女遊びもしない。本だけ読めりゃいい人間なので、公の仕事を真面目にやる自信はありますよ。

政策づくりは“あるあるネタ”なんです

――スラップ訴訟の他に取り組んでみたい政策はありますか。

僕が考えている解決方法のほうが、より人を喜ばせるし、笑顔にできるというようなものは、いくらでもあります。特に沖縄なんて政策の縮図です。

政策づくりって新ネタづくりと似たところがあって、僕にはまったく苦にならないんです。例えば、世論が51対49になるような難しい課題に対して「こうすべきじゃないですか」と言った時に、国民に「あぁ、これは私の問題なんだ」と認識してもらうのは、言ってみたら“あるあるネタ”なんです。

「防衛費の5兆円増は問題だ!」と言われてもよくわからないけど、「このお金をうまく使えば大学院まで無償化できますよ。あなたたちはそんなチャンスを逃しますか」と言われたらどうですか。これはあなたたちの問題ですよ、ということじゃないですか。

そういうことを働きかけて、講演し、地方を歩き、若者と議論するというのは、これまでやってきた芸人の仕事と、本質的にそう変わらないと思ってます。

――そこで国民の共感を得るというのは、舞台でお客にウケることと似ていると。

そうですね。ちなみに、れいわの人はしゃべりがみんなうまいから「やっぱりそうか、話芸なんだ」と思って聞いています。「そうか、このリズム、このテンポなんだ」という。舞台袖ぐらい勉強になる演芸の場はないですからね。

――それにしても、れいわの弁士というのはそれぞれ言葉が立ってますよね。

はい。ただ、東京にいる維新の若手の人たちもなかなかうまいですよ。それだけに松井市長の演説の下手さというのは際立っていますね。よくぞ、こんなカリスマ性のない人が代表をやっているものだなと。

――れいわでいえば、くし渕万里、大石あきこ両議員のコンビ芸というか、フリップを使った演説は面白いですね。

面白いし、かわいいですよ。あの衣装が一緒な感じとか、いいですよね。この前、大石さんが衆議院予算委員会で岸田総理に対して「財務省の犬だ」と言ってくれたんですけど、僕は「いえ、違いますよ、犬は僕たちですよ」と言ったんです。

――「犬は僕たちれいわのメンバーです」という返しですね。

「国民の犬が僕たちです」と。それで次の日は、「犬というのは言いすぎました。批判を浴びました。忠犬の誤りです。正しい忠犬でありたいです。逆に政権に対して僕は番犬でありたいです。そういう意味での犬でした」と。全部アドリブですけど、これは芸人の時からやっている仕事ですからね。

――芸人のスキルを国会に転用できるのではないかと。

毀誉褒貶ありますが、ゼレンスキー大統領も出てきましたし、今後「芸人は完璧に政治家に向いている」ということが世界中で認識されていくように思うんです。もし僕が政治家として成功したら、日本でも続く人が絶対に出てくると思う。

身近な人の悩みや世の中における格差、不公平に対する抗議って、芸人が毎日やっていることですからね。僕は今回、覚悟を決めてルビコン川を渡ったんですが、そこで見えた風景は意外なものでした。「なんだ、今までとまったく変わってないじゃないか」って。


前編はこちら

取材・構成/木村元彦 撮影/苅部太郎

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