「ストレングスファインダー®」をご存じだろうか。その名前を耳にしたことはあるものの、実際に受けたことがある人は多くないかもしれない。
今回は、キャリアカウンセリングサービス「ミートキャリア」のキャリアサポーターであり、「米国ギャラップ社認定ストレングスコーチ」として、企業向けにストレングスファインダー研修も行う、高嶋阿由里さんに話を聞いた。
話題の才能診断ツール「ストレングスファインダー®」って本当に役に立つの?
集英社オンライン / 2022年6月24日 9時1分
自分の強みを最大限活かして働きたい——そんな人にぜひ活用してほしいのが「ストレングスファインダー®」だ。本記事では、ストレングスファインダー®の診断方法やキャリア形成に向けた活用方法を紹介する。
ストレングスファインダー®は「才能診断」ツール
「ストレングスファインダー®とは、アメリカのギャラップ社が開発したオンライン上の『才能診断』ツールです。
『才能』について、ギャラップ社では『無意識に繰り返し現れる思考・感情・行動のパターン』と定義しています。ストレングスファインダー®で177の問いに答えていくことで、意図せずに使われている思考・感情・行動のパターンを重み付けし、34の資質として才能を順位付けします。
才能は『強みの源泉』のようなもの。才能にフォーカスしていくことで、仕事のパフォーマンスが上がったり目標達成や成功に導いてくれたりします」(高嶋さん。以下略)
上位5資質だけなら、書籍に付属するアクセスコードから診断可能
また高嶋さんは、ストレングスファインダー®は「適職診断」ではない、とも指摘する。
「他の診断ツールのように、この資質・才能ならこの職業、とわかりやすく判定してくれるような『適職診断』とは少し違っていて。一番もったいないのは、資質だけを見て『この職業が向いているだろう』と決めつけることです。
ストレングスファインダー®は、自分なりの成果を出すための『勝ちパターン』を教えてくれるツール、だと思ってもらえたらいいかもしれません。『勝ちパターン』がわかれば、転職や異動などで環境が変わったとしても、無理なく自然に成果を生み出せるんです」
現在、研修講師として働きながら「認定ストレングスコーチ」としても活動する高嶋さん。そもそも、高嶋さんがストレングスファインダー®の資格を取得したきっかけは何なのだろうか。
「私自身がストレングスファインダー®を通して大きな変化を実感したのが大きいですね。
大学卒業後、20代のうちに思ったようにキャリア形成ができず、周りと比較しては自分に自信が持てずにいました。自分の良い面を認めてあげられなかったんです。そんなときに、ストレングスファインダー®に出会って。
診断を受け、より深く学んでいくうち、『自分らしさ』とは何か、また他者との違いについてもきちんと理解できるようになりました。それまで他人と比べてばかりでしたが、『私はこのままでいいんだ』と自己受容ができるようになったんです。
それからは仕事での人間関係も楽になり、自分らしい『勝ちパターン』を使って無理なくパフォーマンスを発揮できるようになっていきました。仕事でもプライベートでも大きな変化を実感したことがきっかけで、コーチの資格をとるに至りました」
ストレングスファインダー®は、こう読み、こう活かす
ここからは、実際にストレングスファインダー®を受け、活用する方法を紹介しよう。
まず、ストレングスファインダー®の受け方は大きく以下の2つである。
1. 書籍を購入し、付属しているアクセスコードを使用する
2. 米国ギャラップ社の公式サイトから直接アクセスコードを購入する
オンライン上で177の質問に答えたあと、診断結果を入手できる。
上位5資質だけを診断することもできるが、高嶋さんは「できれば34資質すべて診断するのをオススメします」と語る。
「34の資質が複雑に組み合わさることによって、他の人にはない『自分らしさ』が生まれるからです」と高嶋さん。
自分の資質がわかったところで、この診断結果をどのように活用すればいいのだろうか。筆者の結果を例に挙げて、活用方法を解説していただいた。
<筆者の上位5資質>
1. コミュニケーション
2. 共感性
3. 戦略性
4. 規律性
5. 活発性
「ストレングスファインダー®で出た34の資質は、『実行力』『影響力』『人間関係構築力』『戦略的思考力』の4つに分類できます。
例えば『共感性』などの『人間関係構築力』が多く入っている場合、人に関わることが好き、という方が多い。また『戦略性』は『戦略的思考力』の一つで、落としどころを決めて目的に向かうための最短ルートを見定め、不可能を可能にする資質ですね。
『コミュニケーション』『活発性』は人に影響を与えながら裁量を持って仕事を進めたいという『影響力』の資質。『規律性』は『実行力』に分類される資質で、思考をシンプルにして最も効率が良い状態を好みます。仕組化・ルーティン化をして最後までやり気って成果を出していくタイプと言えます」
高嶋さんが認定ストレングスコーチとして面談する際は、この上位5資質について、面談者との会話の中で網羅的な解説も行っている。
「安心院さんのTop5の資質から、ダイナミクスの観点でお伝えすると、『不可能を可能にする方』です。この中でも『戦略性』がポイントになってくるでしょう。ゴールに向かうためのさまざまな選択肢や方法を思いつく、カーナビのような資質ですね。
最短でゴールを達成するために、『共感性』で相手の気持ちを尊重して寄り添いながら、『コミュニケーション』や『活発性』を使って周囲を巻き込み、気持ちよく人々を動かしていきます。
『活発性』で行動を起こし、チャンスは逃さず不可能を可能に。そして『実行力』で思考をシンプルにし、最も効率が良い状態を仕組み化しながら、最短ルートでゴールにたどり着き、成果を出していくタイプと言えます」
上位5資質を連携させて考えると、ここまでの読み解きができるようだ。奥が深すぎる……!
「最初に『適職診断ではない』とお話ししましたが、モチベーションの源泉がわかることで職種や仕事内容の方向性は見えてきます。例えば『人間関係構築力』が上位資質に入っているのなら、一人でもくもくと作業する仕事は苦痛になってしまうはず。
このように、ストレングスファインダー®でわかった資質をもとに、自分が呼吸するように自然にできてしまう得意分野は何か、反対に何が苦手なのかも知ることができるんです」
こちらは編集者Kの診断結果。34資質は、その人にもっとも強く表れる才能を並び替えたもの
高嶋さんはストレングスファインダー®の活用にあたり大切なこととして、「自分の才能を理解し、上位資質をうまく使うこと」だと話す。
「4つの分類がバランス良く上位に入っている人もいれば、どれかに偏っている人もいる。どの資質が入っているから良い、悪いという話ではありません。だから、自分が持っていない資質を身につけようとすると苦しくなってしまうんです。
そもそも、下位資質は決して『弱み』というわけではなくて。上位資質が“利き手”だとすると、下位資質は“利き手の反対の手”を使うイメージです。頑張ればなんとかできるけど、自分らしさを表していないんですね。
例えば安心院さんの上位資質の『共感性』は、うまく使えば相手の感情や立場に寄り添うことができる。一方で、気を遣いすぎてしまったり、ネガティブな人の感情に共感して疲れてしまったり……使う場面や相手、環境によっては『弱み』ともなり得る。資質には二面性があるんです。
だからこそ、自分の資質をきちんと理解し、“アクセル”と“ブレーキ”のようにうまく使いこなせるよう意識していくことが大切です」
さらに高嶋さんは、才能を知るだけではなく、そこに「投資」と「開発」をする必要があるとも述べる。
「先ほどもお話ししたように、ストレングスファインダー®は『強みの源泉』です。ただ受けて終わりにするのではなく、才能に投資や開発をしてこそ本当の強みになります。
資質を活かし、自分だけでなく他者にも貢献できるようになれば、才能が開発されている状態と言えるでしょう」
ストレングスファインダー®を活かして、自分の「勝ちパターン」を知る
ストレングスファインダー®で出た資質や才能は、どのようにキャリア形成に活かせばいいのだろうか。
「必ずしも全員が転職をすれば良いというわけではない」と高嶋さん。
「現職でパフォーマンスを発揮しきれていない方もいます。そういう方がネガティブな気持ちのまま転職に踏み切るのはもったいない。
ストレングスファインダー®の読み込みができるコーチやキャリアカウンセラーは、その方の診断結果を見ながら、どのように『勝ちパターン』を活かして職場で成果を出せばよいのかを一緒に考えています」
最後に、ストレングスファインダー®を活用し、キャリアの迷いや悩みを解消できた事例を聞いた。
「コンサルティング企業に勤める30代の女性から、『問題解決力がなくて悩んでいる。周りの同僚は頭が切れる人ばかりで羨ましい』というご相談を受けました。
その方のストレングスファインダー®の結果をみてみると、『共感性』や『コミュニケーション』など『人間関係構築力』の資質が多かったんです。
つまり、人に影響を与えたり、自分で何かを成し遂げたりするより、周りの人と協力して仕事を進めることに強みがあった。話を聞いてみると、実際に『人間関係構築力』を活かしてプロジェクトなどで成果を挙げていたとわかりました。
彼女は周りと比べて下位資質に目が向いてしまっていたのですが、自分らしい『勝ちパターン』を理解したことで、自分らしくこのままやればいいんだと自信を持てたという方もいます」
「どんな仕事でも『自分らしさ』を発揮できれば大丈夫、と伝えたい」と高嶋さん。ストレングスファインダー®を受けたあとの活用方法がわからなければ、キャリアカウンセリングを受けてプロの力を借りるのも良いだろう。
自分にとっての「当たり前」は他の人にとっての「当たり前」ではないはずだ。ないものを嘆くのではなく、今ある資質を最大限に活かすことこそが「キャリア迷子」脱出の近道なのだろう。自分らしく輝けるキャリアを見つけられるよう、ストレングスファインダー®を活用してみてはどうだろうか。
取材・文/安心院 彩
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