「本離れ」「雑誌離れ」とは言われるものの、スマートフォンやPCの普及により、いまほど、人々が日常的に文字を読んでいる時代はない。
我々がなにかを読み書きするとき、必ずお世話になるのが「フォント」だ。表現の面でも見やすさの面でも重要な存在でいろいろな種類がある一方、身近すぎて、あまり意識していない人も多い。
そんなフォントだが、実は意外なほどの努力のもとに作られているのだ。
集英社オンライン / 2022年6月20日 13時1分
現代は人類史上、もっとも文字を読む時代だと言われている。活字はもちろん、Webやメールなど、文字を読まない日はない。そこで重要になってくるのが「フォント(書体のセット)」だ。見やすさ・読みやすさだけでなく、クリエイティブな作品世界の構築にもひと役買っている。だが意識して使用している人はさほど多くはないだろう。最近動きが激しい「フォント」業界について解説する。
「本離れ」「雑誌離れ」とは言われるものの、スマートフォンやPCの普及により、いまほど、人々が日常的に文字を読んでいる時代はない。
我々がなにかを読み書きするとき、必ずお世話になるのが「フォント」だ。表現の面でも見やすさの面でも重要な存在でいろいろな種類がある一方、身近すぎて、あまり意識していない人も多い。
フォントをみると特定の作品や監督を思い出す、という話がある。
その種のフォントとして有名なのは、庵野秀明監督が『エヴァンゲリオン』シリーズなどで使っている「マティスEB」シリーズだろうか。太めの明朝体で、どっしりとしたデザインが特徴的だ。
テレビアニメ版が作られていた当時(1995年)、アニメで使われる文字はほとんどが「手書き」だったそうだ。しかし、庵野監督は省力化とデザイン統一を目的として、当時ようやく広がり始めていたPCによる印刷物作成作業である「DTP」で使われているフォントの中から、1994年にリリースされたばかりであった「マティス」を選択し、今に至る。この辺りのストーリーは、「マティスEB」発売元であり、日本語フォント制作大手の「フォントワークス」が、自社ウェブサイト内で詳しく説明している。
そして、その源流にあったのは、岡本喜八監督や市川崑監督作品でテロップなどに使われていた、太めの明朝体によるテロップ表現だったとされている。
このように、フォントがストーリーなどの作品が持つ世界観と紐付き、ファンに愛される例は多く、ヒット作が生まれるたびに、どんどん増えている。
なお『エヴァンゲリオン』シリーズの場合、作品によって使っているフォントの種類が微妙に違うため、個人向けに「mojimo-EVA(もじも エヴァ)」として、セット販売されるまでに至っている。
ではそんなフォントはどうやって作られているのか? 実は「一つ一つ手書き」だ。
日本語のフォントを作るのは大変だ。日本語フォントは、使われることの多い漢字・かなを単純に網羅していくと6000字を超える。記号や特殊文字などをカバーすると7000字近くになる。これでも、人名などでごく稀に使われるような文字は含んでいない。「日本で一般的に使われる文字」を広くカバーした状態に過ぎない。
手書きというと毛筆書体などを思い浮かべるが、他のフォントについても、その多くは1文字ずつ作られている。中にはデジタル化以前の書体に着想を得て作られたものもあるし、ディスプレイ上での見栄えを考えて作られたものもある。同じデザインのフォントでも、太さによって作り分けている場合も多いため、「フォントをデザインする」というのは、ある意味で一大事業なのである。
そんな事情もあって、省力化を図る場合も多い。すべてのフォントでアルファベット・漢字・かなを作るのは大変であるため、例えば「かな」だけをオリジナルで作り、漢字については他のフォントと組み合わせているものもある。
どちらにしろ、フォントのデザインと製作はとても手間とコストのかかるものだ。当然ながら、フォント自体が著作権で守られる対象となっている。
PCやスマホには、個人利用に関する権利処理が終わったフォントが最初から複数入っているので、日常的な利用ではあまり気にすることはない。だが、独自にフォントを追加するときは、購入などの権利処理が行われているものか、もしくは利用制限のない「フリーフォント」であることを確認しておいた方がいいだろう。
特にビジネス上、一般公開する文書を作るときに使うフォントは、「一般公開するものに使う権利があること」が必須となる。OSなどに組み込まれたフォントやフリーフォントは権利上問題なく、「商用利用可能」として売られているものも、問題はない。
どのフォントを使うかで、サイトの雰囲気も違ったイメージになる
フリーフォントといえば、先日大きな話題となったものがある。今年3月、フォント大手のモリサワが開発した「BIZ UDゴシック」「BIZ UD明朝」が、フリーフォントとして公開されたのだ。
この2つのフォントは「UDフォント」と呼ばれる種類に属するもの。UDとは「ユニバーサルデザイン」の略。厳密な定義があるわけではないが、多くの人にとって読みやすくなることを目的に、数字や濁音・半濁音の判別や、字形に配慮したフォントのことを指す。テレビのテロップや教育向けなどで広く使われはじめている。具体的に他のフォントとどう違うのか、モリサワのHPを見てほしい。
「BIZ UDゴシック」「BIZ UD明朝」は、そんなUDフォントの中でも、一般的なビジネス文書での利用を想定したもので、使いやすいことで定評がある。筆者も毎日使っているフォントだ。
幅広く使えて見やすさを重視して作られたのが「BIZ UDフォント」シリーズだ。モリサワの公式ページより
今回は無料で使えるようにしただけでなく、2つのフォントを使った「派生フォント」を独自に作り、フリーフォントとして配布することも可能なライセンスになっている。そのため、「BIZ UDゴシック」の数字・アルファベットだけを入れ替え、プログラマーにとって使いやすいものへと改変した「UDEV Gothic」なども登場し、利用が広がっている。
実は「BIZ UDゴシック」「BIZ UD明朝」は、Windows 10以降をOSとして使っているPCには、すでに標準で組み込まれている。2018年10月のアップデートで、OSにこれらのフォントが追加されたためだ。またそれ以前より、モリサワは同社にユーザー登録した利用者向けに、「BIZ UDゴシック」「BIZ UD明朝」を無料で利用可能にしていた。
モリサワはフォント最大手の一角であり、UDフォントも複数開発している。ここまで来たら広く利用してもらおう……ということで、単に無料でフォントを提供するのではなく、もっと幅広い形で使えるものとして公開したのだろう。
Windows 10や11以外のOSを利用している人、スマホなどで使いたい人は「Google Fonts」からダウンロードし、使うのがいいだろう。
Googleが運営するフリーフォントのサイト「Google Fonts」には多数のフリーフォントがあり、そこに「BIZ UDゴシック」「BIZ UD明朝」も加わった。
フォントは美観や読みやすさに直結するので、それだけ差別化要因になる。映画やアニメ、コミックなどが作品中で使うフォントにこだわるのもそのためだ。
家電メーカーのバルミューダは、同社が販売中のスマホ「BALMUDA Phone」のシステムソフトウエアを、5月19日にアップデートした。カメラ画質やタッチ操作の改善など、多数の要素が含まれるが、中でも最も大きな改善点が「システムフォントの変更」だ。BALMUDA Phoneでは、多くのAndroidスマホで使われている「Noto Sans」が使われていたが、今回から、同社が独自に用意した「AXIS Balmuda」が標準フォントになる。「AXIS Balmuda」の「AXIS」とは、デザイン雑誌の『AXIS』のこと。『AXIS』に協力を依頼し、彼らが誌面で使っているフォントをベースに、スマホの画面に合わせて作られたものを採用している。
なぜフォントを変えたのか? BALMUDA Phoneの開発を担当する、バルミューダ株式会社・ITプロダクツ本部の一之瀬春人本部長は、
「スマートフォンでは文字を読む時間が長い。ならば、我々が『より読みやすい』と考えるフォントを搭載すべきだ」
と理由を説明する。「AXIS Balmuda」は細身で字形がゆったりとしており、特に長文を読んだときや、小さい文字を表示した時の読みやすさが優れている、と同社は主張する。
BALMUDA Phoneは昨年11月、同社として初めて取り組んだスマホ。発売開始時の価格が高かった(10万4800円)こと、その割に組み込まれているパーツの性能が低かったことなどから批判された。同社としてはその批判を受け止めた上で、積極的にソフトウエアの刷新などを行い、「バルミューダとしての価値はどこか」を示そうとしている。同じような試みはフィーチャーフォン(ガラケー)の時代にはあったが、スマホになってからはあまり各社が目を向けていない。そこで「フォント」にこだわるのは、確かに面白い着眼点だ。
BALMUDA Phoneは5月19日にアップデートし、標準フォントを、読みやすさ重視で独自設計した「AXIS Balmuda」に変えた(撮影/西田宗千佳)
製品に対する印象はデザインで変わる。フォントももちろんデザインの一部であり、商品を代表する「顔」として、毎日対面する部分になる。アップルをはじめ、そうしたところに気を使っている企業は意外と多く、バルミューダのスマホも、そこで1つテコ入れをした、ということなのだ。
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