参院選が近づき、コロナ禍を名目に、現金のバラマキが当たり前のように主張されている。みなさんは、これらの政策を正当化するときに、ある歴史上のできごとがしばしば成功事例として援用されていることをご存じだろうか。
それは「高橋財政」だ。
高橋財政とは、1931(昭和6)年12月から1936(昭和11)年2月に実施された高橋是清蔵相による独創的な財政政策をさす。
高橋財政が本格的に始まった1932年度の当初予算は、前年度の約15億円から一気に約20億円へと急増し、思い切った公共事業予算が計上された。国債への依存も急速に強まり、その国債は、日本銀行の引き受け、つまり同行からの借金でまかなわれた。
これにより、恐慌に苦しんでいた日本経済は見事に立ち直った。それだけじゃない。景気回復を見てとるや、高橋は1936年度予算で、税収増に相当する額の国債削減を実現した。あざやかな政策転換だった。