東大生の親の半数は世帯年収950万円以上、4割は首都圏出身…生まれた場所でこんなに違う教育サービス格差の実態
集英社オンライン / 2024年4月10日 8時0分
〈「1380万円あったら東大合格ガチャが1回まわせる?」東大生100人のデータからわかった、子どもの才能に関係なく東大合格させる「重課金ルート」〉から続く
現役東大生ライターが、東大生100人へ独自アンケートを行い、「子供の教育にどれくらいのお金を使えば、東大に合格できるのか?」を考えた書籍『東大合格はいくらで買えるか?』より東大生の親の世帯年収、誕生月、出身地について一部抜粋・再構成し、東大生の親の世帯年収、出身地域を明らかにする。
東大生の親の学歴と世帯年収は?
まず私たちは、東大生100人を対象として、世帯年収を尋ねました。結果は次の通りです(n=100)。
200万~400万:3%
400万~600万:11%
600万~800万:17%
800万~1000万:16%
1000万~1500万:28%
1500万~2000万:5%
2000万~3000万:6%
3000万~4000万:1%
4000万~5000万:2%
5000万~6000万:2%
1億~:1%
わからない:8%
200万円から400万円が3%ほど。東京大学の実施している2021年度の学生生活実態調査からみると、世帯年収450万未満の家庭が10.8%存在するようなので、今回の調査ではかなり少なめに出ているようですが、どちらにせよ東京大学の全体の中でマイノリティなのは否めません。
問題は、世帯年収が全国平均値の545.7万円を上回る、600万~800万より上の回答者の割合でしょう。92人中の78人なので、回答者のうち84%が世帯年収の全国平均を上回る家庭出身者であることがわかります。世帯年収1000万以上の家庭に絞っても、92人中45人なので、およそ48%の方が全国世帯年収平均の約2倍以上の家庭出身であることがわかります。
なお、2021年度に実施された東京大学の学生生活実態調査(n=1510)では、次のような年収分布になっています。
450万円未満 10.8%
450万円以上750万円未満 11.2%
750万円以上950万円未満 13.2%
950万円以上1050万円未満 10.2%
1050万円以上1250万円未満 12.1%
1250万円以上 18.6%
わからない 24.0%
この数値と我々の実施した年収分布では異なる部分も多いですが、「わからない」と回答した24%の人を除いたうち、世帯年収950万円以上の家庭の割合に絞れば53%となり、我々のとったデータの48%とある程度近似します。
少なくとも世帯年収1000万円以上の家庭出身者の割合については、我々のアンケートはサンプル数こそ少ないものの、信頼が置けると考えていいでしょう。
また、今回のアンケートでは東大生の親の学歴も調査してあります。一般的には中卒より高卒が、それよりも大卒の年収が高くなる傾向にありますが、今回とったデータでも、おおよそ同じような分布が見られました。
特に父親が4年制の大学を出た家庭の世帯年収の平均は高い傾向にあり、父親の学歴が世帯年収に、ひいては子どもの学歴に影響している可能性も否めません。なぜならば、世帯年収が高ければ高いほどに、世帯の可処分所得の総額は増えるため。当然、教育投資にかけられる金額も大きくなるからです。
ここまでの話から、必然的に「親がたくさんお金を稼いでいるから、教育にお金をつぎ込めるので、結果的に成績が上がっている」シナリオが出てきます。しかし、これは本当なのでしょうか。ここまでの話はすべて推論にすぎず、「お金持ちが教育に大量の投資をしている」保証はありません。東大に合格する子どもたちは、自らの努力によって、もしくは自らの才能で合格していることもあり得ます。
本アンケートでは、ここを確かめるために、小学校、中学校、高校でどれだけのお金を教育投資として費やしたか伺っています。ここからは、東大生が大学入学までにどれだけの教育投資をかけられてきたのかを考えていきます。
東大生の誕生月は?
まず、誕生月を調べてみました。これは、前提として早生まれが不利になる傾向にあると考えたためです。一般に、4月生まれから3月生まれまでの人が同じ学年になりますが、4月生まれの人と3月生まれの人では、およそまるまる1年の差ができることになります。
発達初期段階での1年間の遅れは、大きなものです。同じ小学校3年生だとしても、小学校3年生の中で一番成長が早い人と、限りなく小学2年生に近い人とでは、勝負になりません。
これは運動能力だけではなく、勉強にも及びます。この発達の差は、成長していくにつれて徐々になくなっていきますが、発達初期段階でついた差から「自分は勉強ができないのだ」と思い込んでしまう可能性があります。
極端な話、本当ならば東京大学に行けるポテンシャルがありながらも、「勉強が苦手」と思い込んだまま一生を終えてもおかしくありません。そのため、私たちの立てた仮説は、「東京大学出身者には3月生まれが少ないのではないか」です。逆に4月~6月生まれが多いと予想していました。
結果から言うと、少なくとも今回のアンケートにおいては、まったくそのような傾向は現れませんでした。4月生まれから3月生まれまで、およそ均等に7%~10%程度ずつ分布しており、ここに有意な差は見られませんでした。そのため、東京大学に行くのに、生まれ月はそこまで関係ない可能性があります。
東大生の出身地域は?
出身地域は、首都圏が多い傾向にあります。今回とったアンケートでは、東京出身者が100人中の27人、神奈川出身者が13人。合計して40人が関東近郊の首都圏出身者になっています。大阪出身者や京都出身者は少なく、なぜか次点で多いのは宮城県出身者(7%)でした。これ以下の細々した数値にはあまり意味がないかもしれませんが、無作為に抽出した東大生たちの出身地域を調べると、4割が東京や神奈川など首都圏近郊地域であることは見逃せません。
一般的に、東京や神奈川など、首都圏地域に生まれた方が受験は有利になります。なぜならば、それだけ優れた塾や予備校など教育サービスにアクセスしやすいためです。例えば、大手予備校グループである駿台予備校に着目してみると、東京と大阪にはそれぞれ7校の校舎があることがわかります。一方で、関東・東海・関西以外の地域にはほとんど校舎がありません。札幌、仙台、広島、福岡にそれぞれ1校ずつあるだけです。
私は、以前より地方から東京大学に合格した学生にインタビューして、その困難性を世間へ伝える記事を作っています。ある時、香川県から東京大学に合格した学生に話を聞く機会がありました。彼の言葉でひとつ、印象に残っていることがあります。それは、「予備校の授業を受けるために香川から大阪まで行った」でした。
私は東京の出身です。東京には様々な予備校があり、新宿、池袋あたりに出れば、誰でも手厚い教育サービスを受けることができます。その際の交通費も、東京近郊に住んでいればせいぜい片道300円~400円程度もあれば足ります。私にとって、教育サービスは、「いつもすぐそこにあるもの」でした。
一方で、香川県に住む彼にとって、教育サービスは「すぐそこにあるもの」ではありません。大手予備校である駿台の校舎は四国になく、河合塾もマナビスという衛星予備校が県内に1つあるのみ。たまの休みに特別講義を受けたいなら、高額な交通費と、時には宿泊費を出して、大阪など都会へ行くしかありません。彼にとって、教育サービスにアクセスすることは、大変困難を伴うものでした。
また、沖縄から合格した別の学生に話を聞いたこともありました。彼は、塾なしで東大に合格した傑物です。しかし、その本当の理由は、「塾に通いたかったけれども、近くにまともな塾がないから」でした。
塾に通いたいと望んでも、近くにまともな塾がないパターンもあります。四国ならともかく、沖縄から本州へ渡ってくるのは並大抵の覚悟ではいけません。地方から東京大学に合格する学生の少なさは、教育投資に対する意識の低さもあるかもしれませんが、どこかに投資したくとも投資先が存在しないことも原因でしょう。
図/書籍『東大合格はいくらで買えるか?』より
写真/shutterstock
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