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〈漂流ギャル・奇跡の生還劇〉「何度も諦めようと思った」石垣島で離岸流に巻き込まれた4人のギャルが16時間の漂流中、命をつなぐためにやっていたこと

集英社オンライン / 2024年4月21日 11時0分

2011年9月22日午後4時ごろ、リゾートバイトで石垣島に滞在中の串貴代加さん(くし・きよか、当時21歳)らギャル4人組がビーチでシュノーケリング中に漂流。そのまま日没を迎えるも、なんと16時間後の翌午前8時20分に4人全員が奇跡の生還を遂げ、当時大きなニュースとなった。あれから13年、現在34歳になった串さんに当時を振り返ってもらった。

離岸流であっという間に200メートル沖に流され

美容系の専門学校を卒業後、エステサロンで働いていた串さん。しかし、想像以上の激務で「辞めて好きなことをしたい」と考えるようになっていた。そして思い立って退職し、訪れたのが南国の石垣島だった。

この地で専門学校時代の同級生2人とラウンジ嬢としてリゾートバイトを始めると、間もなくして、同じお店で働く30歳の同僚の案内で、石垣島の海へと繰り出した。しかし、シュノーケリングを始めた彼女たちは離岸流に巻き込まれ、あっという間に200メートル沖合まで流されてしまった。


 

――当時の新聞によると、その日は台風一過で波浪注意報が発表されていたそうですね。

串貴代加さん(以下、同) 天気予報を見てなくて、全然知らなかったんです。しかも、泳いでいた場所は遊泳注意場所という看板が立っていたみたいですが、石垣島に来たばかりで土地勘もなく、そこがどういう場所なのかもまったくわかってませんでした。今考えれば、軽率な行動だったなと反省しています。

――見るからに波は高かったんですか?

沖では白波が立っていたようですが、そのビーチは遠浅だったので知らずに海に入ってしまい、気づいたら4人とも波も風も強い沖に流されていたという状況でした。

流された時点で「どうしよう、どうしよう……」とパニックでした。離れ離れにならないように4人で腕を組んで、そこからずっと泳いでは離岸流に戻されてを繰り返してました。

――周囲の人に助けを求めなかった?

夕方の4時ごろにはマリンジェットとかアクティビティの人たちもみんな引き上げていて、海には私たちしかいなくなってたんです。4人で声を合わせて何度も『せーのっ!助けて!』と叫んでも、波と風が強くて誰にも気づいてもらえませんでした。
 

――日没前から16時間の漂流。よく無事に生還できましたね。

台風直後のせいか、目の前に大量のゴミが流れてきていて、そのうちの発泡スチロールをそれぞれ抱えて浮く負担を減らしました。でも、ずっと抱えてると発泡スチロールが擦れて超痛いし、隣の子が薄い発泡スチロールを3、4枚重ねてロープで縛って持っていたんですけど、そのロープで私の腕の皮がずる剥けになって……。それが一番辛かったです。それで険悪なムードになったりして……。

ギャルならではの発想で16時間乗り越えた

――諦めそうになった時間帯は?

何度もありましたよ。私はもともと冷え性なので9月の石垣島とはいえ海に入った時点でもう寒くて。夜になってみんなは「怖い」って言ってたけど、私は寒くてそれどころじゃなくて震えてました。

4人のうちの30歳の女性が責任を感じて、『もう、私だけ流される』って言ったから『こんな目の前で人を見殺しにできない』って、その人を真ん中にして腕を組むフォーメーションに変えたりして。

――想像を絶しますね……。

とにかくもう辛すぎました。夜は真っ暗で見えるのは海岸にある3つの明かりだけ。それを目印に方角を確認して、明かりが小さくなったら流されてるってことだから、がんばって泳いで近づいて……。

ずっと全身痛いし、寒いし、眠いし、海水で口の中がしょっぱくて、尿は出るのに水分補給ができないっていう状況で、死にかけて走馬灯も見ました。2度と味わいたくない地獄の時間でした。

――そんな4人の心を支えたものは?

友達が「絶対助かろう」ってずっと励ましてくれましたし、16時間めっちゃ会話しました。夢を語り合ったり、恋バナしたり……歌も歌いました。特に「助かったら何したい?」という話はけっこうしました。友達は「とりあえずビール飲みたい!」と言ってて、私は海の中でずっと立ち泳ぎしているのがめちゃくちゃしんどかったので、「とりあえず陸に立ちたい」って言ってました。

――そして、翌朝、海岸を歩いていた人が沖で漂流する4人を発見。午前8時20分ごろに全員無事救助されました。

それまでにも何度か浜に人がいるのが見えたんですけど、200メートルくらい沖合いにいたので波の音で声がかき消されて、その時間まで誰にも気づいてもらえなかったんです。流されてきた蛍光灯を振って『助けて!』って叫んだら、やっと浜にいた人に気づいてもらえました。
 

――発泡スチロールといい、キレイな海に浮くゴミに助けられたんですね。

そうですね。助かるとわかってみんなで号泣しました。新聞には「怪我はなく」と書かれてましたが、みんな傷だらけでしたよ。ひとりはウミヘビとかくらげに刺されて、顔と喉の境目がわからなくなるくらいパンパンに腫れていたし、私も全身傷だらけで歩けない状態だったので、1週間ほど入院して車いす生活でした。

――後遺症は残らず?

漂流で膝が壊れて曲がらなくなり、階段の上り下りがキツくなりました。今でも寒くなったら膝が動かないです。それと、もともと泳ぎには自信がありましたが、それ以来、波の揺れがトラウマになって、今でも泳げません。同級生の2人はその後にスキューバのライセンスとか取ったみたいですけどね……(苦笑)。

 救助後、世間から叩かれることも

――救助後の周囲の反応は?

寮に帰ってこない私たちをお店の人がめっちゃ探してくれたみたいで、あとでめっちゃ怒られました。

あと漂流した2日前に台風の影響で地元の方が亡くなってたので、「それなのに、内地の人たちが流されるとかナメてる!」とか、救助費用を私たちが負担したわけじゃないから「税金の無駄遣いだ!」って感じの厳しい声もありました。
ある週刊誌には「漂流前の4人に話しかけたら、めっちゃギャルの女が思いっきり睨んできた」なんてことも書かれました。そもそも私たち、声なんてかけられてないのに。それでも当時は今ほどSNS社会じゃなかったからマシなほうだと思いますけど。
 

――とはいえ、串さんは他の3人とは異なり、16時間漂流して、奇跡的に生還したギャルとして『激レアさんを連れてきた。』や『痛快!明石家電視台』など、これまで数多くのテレビ番組に出演していますよね。

私は周りに何を言われても全然気にしないタイプですから。大好きな(明石家)さんまさんや千鳥さん、オードリーさんと共演できて、本当に生きててよかったです(笑)!

世間から叩かれる一方で、退院後、噂を聞きつけた島の人に「あなたたち、海にマブヤー(沖縄の方言で魂)を落としてきているから占い師さんに見てもらいなさい」なんて不思議な提案をされることも。

「うさん臭い人たちじゃなくて、本当に心配して言ってくれたみたいです」(串さん)

ギャル4人は再び漂流したビーチに行って、占い師にマブヤーを体に戻してもらったそうだ。

その効果なのかどうかはわからないが、串さんは半年後に地元に戻り、自身のエステ店を開業。現在は実業家として奮闘し、7月には結婚も控えている。残りの3人も海外や石垣島へ移住するなどそれぞれの人生を歩んでいるという。いずれも漂流中に「生き残ったら叶えたい夢」として、語り合っていたことなんだとか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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